26.オロチの解放
「へえ、そんなことになってたのか。手紙行き違いになったか?ていうか麻紀、麻衣いい加減離れろ。南もそんな引っ付くな」
「嫌っ!」
「嫌です!」
「これはしょうがない」
帰ってきて早々南、麻紀、麻衣がいた。俺が転移者ということを含めて話した後、レーガンからも経緯を聞いた。・・・のだが、麻紀と麻衣は抱き着いて離れないし南はやたら近く来て座るしシーアはなんか殴ってくる。セラもなんか睨んでる?今思ったがセラは顔に感情が出にくいな。
「手紙は学園長に送ってあるから事情を察して破棄してくれるだろう。俺としては転移者の件でもっと時間かかると思ってたんだが、一瞬で終わっちまった。帰ってきたばかりだし休んでいいぞ」
「じゃあ商会のほうに戻るよ」
「あ、待ってカイ君。私たちで家買っておいたんだよ」
「マジで?何人入れる」
「10人位は大丈夫だと思うよ」
行動が早い、流石だ。昔テレビを一緒に見ていた時の広告で新作のゲームが出たのだが、その次の日にはやろうと言って買ってきた。
「・・・クロトとかは知り合いだからまだしもシーアとセラは言うことないのか?」
「「まあ、クロトの知り合いだし?」」
「そ、そうか」
レーガンが何か言ってるが、まあ聞かなくても大丈夫だろう。
「じゃあシーアとセラもそっちでいいか?」
「いいよカイ君。2人共後でお話しようね」
「ん」
「わかったわ」
いや、会話だけでそんなに気合入れなくてもおおのに。
まいい今日は寝よう。王都にいる間にすぐに寝付けるようになったのだが、大分気持ちいい。基本的に疲労はないはずだが、気分的な問題だろうか。
翌朝。シーアたちは大分眠そうだったのだが、昨日に比べて仲良くなっていた。女子会でもして打ち解けたのだろうか。
「で、南たちはどうするんだ?」
「実は昨日の内に話し合って一緒に仕事をすることになったの。それでもいい?」
「そうなのか。俺はいいがゲル・・・」
「そういうと思って昨日の内に確認に行って、許可をもらったよ」
こっちでの付き合いが長いだけあってシーアはよくわかっている。ということは・・・
「実力のほうも見たのか?ほぼ独学だと聞いたけど」
「うん。勇者と聖女なだけあって結構強かったよ」
「そういえば麻紀と麻衣は勇者なのに嫌な感じしないな」
「当然!」
「麻紀と麻衣とクロ兄はつながっているので当たり前です!」
何か前の世界でもそういうこと言ってたな。俺にはよくわからんけど。
「わかった。仕事の説明を受けてるなら早速始めてもいいか?」
「いいよ」
「ん」
「「うん!」」
翌日。
仕事をしていたら権能が増えた。多分悪魔王の権能だと思うのだが、ちょっとよくわからない。《眷属強化》という名前なのだが、名前は単純で眷属を強化するものだと思う。ただ、俺の眷属である蝙蝠に使ってみたのだが効果が無かった。
というわけで・・・
「何も言うなよ」
『お、おう』
毎度おなじみフェンリルさんです。とりあえず事情を説明する。
『蝙蝠にできないのは吸血鬼王の能力で眷属にしたからだな。王の権能は互いに影響しないからな』
「ん?眷属化は吸血鬼じゃないのか?」
『普通の吸血鬼だと特殊能力が付かない』
え?じゃあ普通は1匹1匹捕まえなきゃいけないのか。
めんどくさいな。
『悪魔王の権能で強化できるのは《影》が《影の支配者》位だと思うぞ』
「どこにいるんだ?」
『基本的にどこにでも出現するが、名前のとおり影のあるところに多いようだな。後は魔力が食事だったと思うぞ』
範囲が広いな。これはもう見つけたらラッキーっていうところだな。少し周りに気を配ろう。
うーん、やることが無くなってしまった。ここで実験をしてから帰る予定だったんだが。
『そういえば聖獣の解放はしているか?』
「武器化じゃなくて解放?魔力を与えることならしてるけど」
『・・・ちょっと出してみろ。嫌な予感がする」
よくわからないがオロチに出てきてもらった。フェンリルは数秒オロチを見ると、溜息をついた。
『クロト、少し離れて解放を許可しろ。《解放》と念じるだけでいい』
「?」
よくわからないがとりあえず《解放》。
「え?」
『やっぱりか』
オロチが龍になった。しかも大分でかい。前の世界でいう東方の龍の姿だ。それにしてもまさか龍だったとは。ずっと蛇だと思っていた。今までも聖獣に蛇は合わないような気がしていたのだが龍なら納得だ。
「ていうかそもそも解放ってなんなんだ?」
『端的に言うと成長だな。まあお前の場合スピードが異常だな。本来は数十年かかるぞ。』
「へー。なんで気づいたんだ」
『聖獣に魔力を満タンまで食わせてると聞いてたからな。もしかしたらすでに成長しきってるんじゃないかと思ったんだ。多分これで普段の姿も変わったと思うぞ』
普段の姿っていうと・・・蛇じゃなくなるのか?戻れというとオロチが小さくなっていく。
小さくなった姿は解放後の姿をそのまま小さくした感じだった。
「ん?オロチ自身に魔力がある?」
『はい、主の魔力を多く取り込んだためだと思います』
「『・・・え?』」
オロチが蛇から喋る龍になった!
・・・なんでだよ。




