24.話し合い
3人の追求から逃れた後、俺はレーネのもとへ向かっていた。
「レーネ、いるか?」
「クロトさん!」
護衛の騎士が驚いて剣を抜こうとしたが、レーネに部屋(簡易テントもどき)を追い出されていた。
「いいのか?護衛を追い出したりして」
「クロトさんは大丈夫だろうし、いたところで役にたたなさそう。・・・まあ、襲ってくれてもいいんだけど」
「なんだって?」
「な、なんでもない」
最後の方が聞き取りずらかったのでアベルのほうを見ると・・・
「気にしないであげて。これはレーネ史上最も酷い黒歴史になるかもだから」
「アベル君!黙ってて。クロトさん、あの巨人はどうなったの?周りに人がたくさんいたのに、気付いたら消えてたって言うんだけど」
セラの固有魔法はちゃんと作用したようだ。後で礼を言っておこう。
「俺は他の魔物の相手で精一杯だったからわからん」
「・・・じゃあそういうことにしておく」
流石に何もしなかったでは通らないようだ。まあ今回は納得してもらったとしよう。
「あ、そうだ。俺たちは明後日にハラルに帰るよ」
「・・・そこに私がついていったらダメ?」
なんかとんでもないことを言い出した。アベルに助けを求めようと視線を送ったがそらされた。
「えーと、俺はどっちでもいいんだが王女だから色々まずいんじゃないか?」
「クロトさんは私がいっても迷惑しない?」
「ま、まあ俺的にはどっちでもいいからな」
「ホント!?」
そういうとレーネは勢いよく部屋から出て行った。何かやらかしただろうかと、アベルを見ると、またそらされた。
よし
「何かあったらアベルのせいな」
「えっ!?なんでそうなるの」
「助けを求めたのに目をそらしたんなら、何かやらかした後なんだろ?レーネはやたらいきおいづいていたしな」
「・・・その勘の良さは何かの権能?」
そんなわけ無いこと位わかっているだろ、と睨むと逃げ出しそうだったので《結界》を張っておく。なんか出力が上がった。魔王を倒してからか?あ、魔王といえば・・・
「アベル、今回の首謀者関係で話しておきたいことがあるんだが」
「・・・首謀者が君が持ってる王の3種類の内どれかということ位は予想できたけど」
流石だな。話が早い。
首謀者が新米の魔王だったことや、最後に口走ったあの方たちについて話しておく。
「なるほど。確かにそれは他の魔王の確率が高いだろうね」
「そうだよな・・・。でだ。これに関してはレーネも含めて人類側には話さないでほしい」
「そうだね。確かに両陣営に言えることだけど、刺激しないほうがいい。でも対応はどうするの?放置するわけにはいかないでしょ」
「ああ。これに関しては俺も無関係ではないからな。できるだけ動こうと思ってる」
「積極的にじゃないのがクロトらしいね。まあ、頼むよ」
よし、これでいいだろう。後の問題は・・・
「とりあえずレーネだな」
「う・・・。不安しかない」
「だな」
ホント、どうすればいいんだろう。
・・・ハラルに帰る当日。レーネには昨日の時点で別れを済ませておいた。態度的にはついてくるのを諦めていたが、顔が全く諦めてなかった。アベル曰く、しばらくは何もしないだろうということなのでひとまず安心だ。
「レーガンへの手紙はこれじゃ。休校期間が終わったらまた頼むかのしれん」
「わかった。暇じゃなければ行くよ」
「休校期間が終わった瞬間から何故か忙しくなるんじゃろ?」
よくわかってらっしゃる。
その後少し話してからじいさんとは別れる。俺はこちらでの人間関係がほとんど無かったが、シーアはあったので挨拶を受けている途中だ。
「さて、移動方法はどうしよう」
「ん?馬車じゃないの?」
「いや、走ってきた。馬車で蛇行して来るよりも、直線上を走ったほうが速かったからな」
「・・・そう。飛んでいくのはダメなの?巨人倒した時みたいに」
それだと目立つと言いかけて、思い出した。固有魔法を使ってもらった状態で飛べばよかったんだ。ちょうど翼も3対あるし。
「盲点だった。それで行こう」
「ん、わかった」
ちょうどシーアが戻ってきた。
「シーア、ハラルには飛んで戻るぞ」
「?わかった」
シーアは少し疑問に感じたようだが、こちらに任せることにしたらしい。
ふとセラのほうを見ると驚いた表情をしていた。
「どうした?セラ」
「すごくあっさり受け入れたから、驚いた」
「・・・改めてクロトに毒されているって感じた」
「私もいずれこうなるのかな?」
少し釈然としない思いを抱きつつ、出発することにした。
2対の翼でシーアとセラを抱えて飛ぶ。頑張れば4人までは行けそうだ。
「飛ぶってこんな感じなんだね」
「前回は状況が状況だったから楽しめなかったけど、気持ちいい」
翼の間から顔を覗かせた2人が感想を言う。俺も最初に飛んだ時は感動した。
道中(空中?)は特に何もなく進んだ。ハラルが見えてきたところで、シーアが・・・
「今思ったけどクロトが《転移》すればよかったんじゃない?」
「・・・あ」
「《転移》?」
知らないセラのためにとりあえず説明する。
「・・・実在したんだ。伝説上の話かと思ってた」
「よく使ってるから実感わかないけど、本当にそういう扱いなんだな」
「よく使ってるくせに忘れてたんだ」
「・・・飛行が楽しめたのでよしとしよう!」
自分で言っていて虚しくなってきた。
気を取り直して門前に並ぶ。俺とシーアはともかく、セラは初めてなので流石に通ろうと思ったのだ。中に入ったらまず、レーガンの元へ向かう。
ギルドに入りレーガンの部屋に入ると、振り返ったレーガンの顔が驚きに染まる。
「クロトとシーアがドアから入っただと!?」
そこかよ。
「流石に初対面の奴を窓から入れるわけにはいかないだろ」
「普段は窓から入ってるの?」
そう言いながらセラが入ってくる。それを見てレーガンは
「また女か。あの嬢ちゃんが怒りそうだな」
「?」
「いや、なんでもない。とりあえず、ようこそとお帰りだ」




