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23.巨人と魔王

セラ視点

クロト曰く広域魔法をぶっ放すらしい。


「それで私はどうすればいいの?」

「えーと、俺が抱えて上から魔法を打つ。とりあえず説明は後でするから今は何も言わないでくれ」


クロトが周りから見えないように岩陰に隠れたのでついて行く。

突然ただでさえ多かったクロトの魔力が膨れ上がったと思ったら、クロトの背中から2対の翼が出てきた。


「え?なにこれ、え?」

「やっぱり翼を出すと魔力増えるな。まあ、説明は後。抱えるぞ」


クロトがそういうと1対の翼が私を抱え込んだ。なんか手触りがいい、スベスベ。


「おーいセラ、翼に触ってないで固有魔法使ってくれ」

「あ、ごめん」


しまった。つい夢中になってしまった。

《範囲隠蔽》。《自己隠蔽》の派生形だ。魔力を多めに使うが、自分の周りの人も隠蔽できるものだ。前にクロトができないかと聞いてきたので、やってみるとあっさりできた。

こういうクロトのセンスはすごいと思う。


「どうせなら見栄えよくしよう」

「え?」


こういうのはどうかと思うけど。

クロトが私を抱えたまま浮いて行く。


「そうだな・・・よし。《ウォーターボール》を極限まで冷やして氷にしてっと。オロチ、削れ」


まるで遊ぶように魔法を使っている。いや、ようにではなく遊んでいる。

《水魔法》は極限まで冷やしても冷水が限界のはずだったのだが、大きい氷の塊がいくつも浮いている。クロトが指示を出すと、どこからか赤い蛇のような生物が出てきてその鱗で氷を削り始めた。

氷の小さい破片が散り始める。これは確かに・・・


「綺麗だね」

「だろ」


ちなみに巨人は今も転んだり起き上がったりをしている。


「でもどうやって倒す?破片じゃ威力が足りない」

「わかってる。だからこうする。《聖槍》」


小さい光の槍が大量に出現する。

《聖槍》は中級魔法だし聖職者でないと使えないはずなのだが、クロトは聖職者ではない。

私が考え事をしている間にも状況は変わっていく。《聖槍》は浄化効果を持つものの、その本質はただの光。光は散りばめられた氷の破片に反射する。

氷の破片がゆっくりと降下していき、巨人に重なった時

シュー

という音が経ち始めた。


「あの巨人、なんなの?浄化されてるみたいだけど」

「なにか禁呪でも使ったやつなんじゃないか。人間をより集めたものみたいだし」


クロトがとんでもないことを口にする。だが、禁呪というなら浄化されているのも納得できる。

巨人は飛び交う《聖槍》にだんだん溶かされていき、最後には跡形も無くなった。


「意外。クロトはもっと派手にやるかと思った」

「《火魔法》でもよかったんだが、残骸が残るといやだからな」

「それはまあ、わかる」


あれを見ていても嫌悪感しかでない。

なにはともあれ、巨人はクロトによって静かに、しかし衝撃的な方法で倒された。


クロト視点


「セラ。説明はもう少し先にする。少しやることができた」

「ん、わかった。ちゃんと説明はしてもらうよ?」


頷いてその場を離れる。

やり方が目立ちすぎだ。生まれたてばかりだろうか。


「供物獣が倒されました」

「なんだと?多くの傀儡を与えたはずだが、何故倒された?」

「それが・・・誰にもわかっていないのです」

「・・・」


近づいてみて確信した。こいつは魔王だ。俺以外の奴は初めて見た。

会話の内容的に操り人形にしていた人間を使って供物獣、つまり巨人を出したのだろう。


「まあいい。今回は引き上げ、次の計画に移るぞ」

「りょうか・・・」

「いや、移らないでくれ」

「・・・誰だ」

「魔王」


俺がそういうと少し考える素振りを見せる。

・・・素振りだけで魔法を打とうとしているが。


「お前が攻撃するなら俺もするぞ」

「ッ!?ハアアア!」


魔法と同時に斬りかかってくるが、ゾルゾより遅いし、魔法も人間より強いといったところだ。

今まで腕ばっかりだったから足にしよう。


「ガッ!?」

「さて、何か言いたいことは?」


両足を切って、動けなくしてからそう聞く。


「後悔するぞ!あの方たちが・・・」


失敗したというように口を閉じた。もう話さなそうなので首を撥ねておく。

・・・あの方たち、ね。


「また変なのに首突っ込んだな・・・」


とりあえずじいさん、セラ辺りに説明しないとな。

どうせなら纏めてするか。


「とりあえずじいさんのところに行くぞ」

「じいさん?あ、学園長。わかった」


蝙蝠にシーアをじいさんのいる簡易テントのような場所に連れてくるよう指示を出す。


「さらっとすごいことした。人前で使っていいの?」

「セラしかいないし隠す必要もないだろ。後でわかるし」


シーアも来たところで、先ず俺のことをじいさんとセラに話す。

・・・まあ、反応は薄かった。今回はやりすぎた感があったのでセラは確信しているだろうし、じいさんも予想してはいるだろうと思った。まあじいさんもほとんど確信だったそうだが。


「じゃあ俺のことは終わりとして、学園はどうなるんだ?校舎ぶっ壊れたけど」

「これから王城のほうに確かめに行くが、工事と警備の見直し期間中は休校じゃろうな。クロトの仕事に関しては、いったん無しじゃな。レーガン宛の手紙を書いておこう」

「わかった」


今回の首謀者の魔王の話はしないでおいた。あの方たちというのは、今のとこ他の魔王という線が強い。人間側を巻き込んで魔王は全員殺せとなってもめんどくさい。シーアには後で話すつもりだ。


「セラはどうするんだ?」

「クロトについて行きたい。仕事見てみたいし、短剣の訓練も続けたい」

「・・・まあ俺的にはどっちでもいいが、シーアは修行つけられそうか?」


訓練するのはシーアなので大丈夫か聞いておく。


「・・・セラには()()よね?」

()()()()()。人間いつ変わるかわからない」

「それもそうね。クロト、私は大丈夫」


ニコニコし合って仲いいな。修行中になにか心が通じることでもあったのだろうか。


「今更だけど、休校中に生徒は別の場所に行ってもいいのか?」

「大丈夫じゃよ」


じいさん機嫌いいな。何かいいものでも見たのか?


「じゃあ明日か明後日位に出発するか」

「ん」

「わかった」


まさか1年もせずに帰ることになるとは思わなかった。

あ、


「どうした?アベル」

「気配に気づくの早くない?まあいいや。レーネが心配してたからね。様子を見に来ただけだよ」

「ちょ、ちょっと待ってクロト。あの、あなたはもしかして・・・」

「うん、精霊王だよ。名前はアベル、よろしく」


アベルがそういうとじいさんとセラが頭を下げ、シーアは跪いた。

その行動に俺が首を傾げていると・・・


「クロト、これが普通の態度だからね。エルフは全員精霊王が信仰対象だし、人間も全員ではないけど結構いるよ」


・・・あ、そういえば精霊王に祈りを捧げてる人間を見た覚えがある。


「確かにいたな。思い出した」

「はあ。さて、僕がいても堅苦しくなるだけだからね。僕は戻るよ」

「わかった。後で会いに行くって言っておいてくれ」

「うん」


そういうとアベルは出て行った。と、同時に


「ちょっとクロト、なんで知り合いに精霊王様がいるのよ」

「流石に非常識」

「精霊王様にあんな態度をとって大丈夫なのかのう」


一気にそんなことを聞いてきた。


「まあ成り行きでとしか言えないけど・・・」

「「「納得できない(できん)」」」


適当に話をそらそう。


アベル視点

クロトがまた強くなっていた。首謀者が王の称号を持っていたのだろう。レーネの加護は増えていなかったから、今までの3種類の内どれかなのだろう。


「レーネ、戻ったよ」

「アベル君!クロトさんはどうだった?」

「何事もなかったかのように元気だったよ。クロトが後で会いに来るって言ってた」


そういうとレーネの顔がパッ、と輝く。


「恋する乙女は元気だね」

「こっ!?違うもん!」

「じゃあクロトが他の子に取られても大丈夫だね」

「・・・どういうこと?」


今日、クロトの傍にはエルフの子と多分学生の子がいた。どちらも大分可愛い子だった。

そう言うと・・・


「ねえアベル君、私がクロトさんについて行くにはどうすればいいかな?」


あ、やらかした。ごめんクロト。

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