21.体育祭開始
体育祭前日の夜。学園長室でシーアが(俺は遠隔で聞いている)当日の打ち合わせをしていた。
「配置はこんなものじゃろう。何か意見は?」
「「「・・・」」」
「ではこれで終わりじゃ。明日は頑張ってくれ」
「「「はい」」」
初めのほうと違い、シーアの分担が多いことには誰も質問をしなかった。それが当たり前だという認識になっているようだ。
「シーア、国王と他国の王女。どっちを守りたい?」
「国王。楽だから」
「・・・。何故そんなサボり屋なんだ?」
「クロトがそれ言う?」
自覚しているだけに反論できない。
「わかった。俺が担当する。今度雑用押し付けるからな」
「はーい」
信用できない返事だな。
まあレーネと話すことがあるかもしれないからちょうどいいかもしれない。
「多分明日は早いだろうから、早く寝とけ」
「わかった。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
翌日。学園は大分騒がしかった。理由はわかるのだが、元の世界の体育祭は陰キャに厳しいのであまりいい思い出ではない。だから知り合いを応援はするものの、あまり共感できないのだ。
お、
「どうしたセラ?」
「・・・固有魔法使ってたはずなんだけど?」
「仕組みがわかればレジストできるぞ」
「・・・学園長の言ってたことがよくわかった」
「何がわかったのかは知らないけど、じいさんと話したんだな」
「うん。一昨日話してた。クロトのことを。内容は秘密」
秘密らしい。まあ損をするわけでもないしいいだろう。セラは確か・・・
「チーム戦と個人戦だったか?」
「うん。チーム戦のほうは優勝候補になってるみたい」
「じゃあ王女がいるのか。まあそれはいいとして、チーム戦は大丈夫かもしれないが個人戦で手を抜けるのか?」
「露骨にならないようにはしてる。実際気づいてるのはクロトと学園長位」
結構露骨だと思ったがそうでもないのか。
「それならいい。頑張れよ。一応応援しておく」
「一応はいらないと思うけど、ありがと」
来ないことはないとわかっていたが侵入者だ。
「じゃあ仕事行ってくる」
「ん。わかった。クロトも頑張れ」
「適度にやるよ」
返事をして侵入者のもとへ行く。人数が15人になってる。嬉しくない最高記録だ。向こうも少しは学んだようでこの15人ともう1組、同じ人数で来ていた。ただ、シーアがいるので失敗している。
1日目はこれだけなんじゃないかと思うので、セラのチーム戦でも見に行こう。
チーム戦はクラスではなく学年全体でメンバーをシャッフルし、5人のチームに分かれて総当たりする。
場所は訓練場だ。
セラのチームには王女がいて、優勝候補だ。ただ、固有魔法がなくてもセラのほうが強い気がする。
試合が始まると王女ともう1人が後衛、セラと他2人が前衛という形をとった。
「あいつ流石に手を抜きすぎじゃないか?」
相手の前衛と戦っていたセラがこっちに小さく手を振ってきた。驚いて、反射的に振り替えしてしまった。ばれないかとも思ったが、相手選手ですら気づいていなさそうだったので大丈夫だろう。
その後は前衛で抑え、後ろから魔法を打ちまくってセラのチームが勝った。確かに優勝候補だ。
・・・さて、試合も見終わったし見回りに行こう。




