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17.合宿

2日目

昨日は入学式だったため全体を監視していたが、俺たちの本来の監視対象は王女の周りだ。王女の教室はAなので(各学年A~Eまである)周りは俺が中をシーアが見張っている。俺は侵入者を、シーアは内部のスパイを警戒する。今のところ動きはない。まあ入学式で何もできずに捕まっているのだから慎重になるのも当然か。

ちなみに王女の名前はリリアナだ。正直敬う気もないが、それで不敬罪とか言われても困るので関わる気はない。


「・・・正解です、リリアナさん」

「流石ですね、王女殿下は」

「ええ、本当に」


蝙蝠がそんな会話を拾ってくる。王女はクラス内で人気のようだ。ただ、それだけじゃなく王女の優秀さを妬む者もいる。確かに誰がことを企ててもおかしくない。

結局その日はなにも起きなかったが、終わった後にじいさんに呼び出された。


「じいさん、何の用だ?」

「・・・急に入ってくるのは心臓に悪いし、儂をじいさん呼ばわりするのはお主くらいじゃぞ」

「癖は直せないし、呼び方なんてどうでもいいだろ。要件は?」

「はあ、レーガンの言いたいことがわかったわい・・・。明日から1週間、合宿をやることになっておってな。大勢護衛をつけるわけにもいかんから、お主たち2人に頼みたいんじゃ」

「合宿?入学してから3日でか?」


流石にクラスメイトとの交流を深めるとはいえ早すぎると思うのだ。やたらフレンドリーな異世界はこれが普通なのか?


「この学園はテストが早くあるんじゃが、そのために生徒の平均能力を調べなければならないんじゃ」

「なるほどな。じゃあテストは実践方式なのか?」

「そのとおりじゃ」


確かにそれなら納得だ。生徒の能力を測っておかないとテストが簡単すぎたり、難しすぎたりするのだろう。


「それで、俺たちは王女優先でいいのか?」

「できれば他の生徒も守ってほしいが基本はそれでいいじゃろう」

「わかった。話は終わりか?侵入者に対処しなきゃいけないんだが」

「終わりじゃが・・・索敵能力高すぎやせんか?どうやっとるんじゃ?」

「企業秘密だ」


そういって部屋を出る。さすがに蝙蝠と答えるわけにもいかないからな。

侵入者は厨房にいた。大方毒でも入れようとしていたんだろう。忍び寄ってすぐに気絶させる。


「じいさんのところ持って・・ん?なんだこれ」


持ち上げた反動で侵入者の懐から大きめのバッジが出てきた。そこに刻まれていたのは・・・


「うわぁ・・・絶対面倒くさいやつだ」


王家とも親しいとされる貴族のものだった。しかもその貴族の息子が学園に通っているはずだ。

俺は面倒くさいことが起こるのを確信しながらじいさんの元に向かった。


3日目、合宿


結局暗殺者を派遣した貴族に関しては保留という結論になった。ただ、姿を見せなければならない可能性が増えたのでシーアには教師陣に加わってもらうことにした。俺は教師陣にも知られていないので、隠れてついて行く。


「合宿はクラスで2班にわかれるみたいだよ?」

「王女のいる班に2人ともついて行く。他の班には蝙蝠を付けておく」

「他の生徒はできればでいいって言われてるからね」

「そろそろ戦える眷属作ったほうがいいな。こういう時面倒くさい」


ただ、何を眷属にするかが決まらない。できれば人型がいいのだが、そんな魔物はスケルトンやゾンビくらいしかいない。だからといって人間を噛むわけにもいかない。しばらくは保留だな。


「班が決まったな。行くぞ。俺は少し後ろからついていく」

「うん、わかった」


俺はシーアが教師陣の中に入るのを見届けて近くの木に登った。


シーア視点


生徒たちは大分好奇心旺盛だった。あまり外との関わりがなかったようで、冒険者だと言うと話を色々聞かれた。ただ、今クロトとやっている仕事は言えないので『暁』にいたころの話をした。前は『暁』の話をしているだけで気分が落ち込んでいたのだが、今はそれもない。こういう面でもクロトには感謝だ。

休憩時間になって私が離れると、クロトの蝙蝠が飛んできた。紙を咥えている。なにかあったのかな?


『そっちの王女は替え玉だ。本物はもう1班にいるから、俺はそっちに行く。その蝙蝠はポケットに突っ込んでおけ』


読み終わった後、つい王女のほうを2度見してしまった。変装が高度すぎる。

手紙には特に何かをしろというのはないから、好きにしていいのだろう。

まあ考えるのは面倒くさいから状況に応じてにしよう。

・・・宿泊地につくまでシーアにやることはなかった。索敵をしてもいいのだが、ハラルでレーガンに


「お前はクロトと一緒にいて戦闘力とかの基準がおかしいから、気をつけろ」


といわれていたので、一般常識を身に着けることにしたのだ。

見てて思うけど『暁』にいたころは普通だったんだなと、教師を見ながらそう思う。グレートウルフは2,3発の攻撃で倒し、索敵も長くて目視できるかできないかくらいの範囲だ。

今ではグレートウルフは必ず1発だし、索敵も教師の10倍位の範囲をできる。


「まあクロトみたいにならなければ大丈夫かな!・・・あ、偽王女が1人だ。よし」


ちょうど昼時で昼食の準備をしている偽王女を見つけたので話しかけに行く。


「リリアナさん、どんな感じですか?」

「あ、シーアさん。結構進んでますよ。他の皆さんが頑張ってくれているので助かっています」

「それはよかったです。ところで今日のリリアナさんは少し雰囲気が違いますね。合宿だからでしょうか?」

「え?は、はい。そうなんですよ。えーと、シーアさんは学園で何をされているんですか?」


あ、これは私がクロトに嘘をついてる時と同じ反応だ。これは確かにわかりやすい。

まあ、無駄に警戒されても困るからこの辺にしておこう。


「普段は警備です。教師が1人こられないということだったので私が代わりに入ったんですよ。これでも腕には自信があります。師匠がすごい人なので」

「多くいる警備の中から選ばれたんですか。それはすごいですね。その師匠にぜひあってみたいです」

「人前にいるのが苦手な方で、今は私にもどこにいるのかわかりません」


嘘は言ってない。クロトは面倒くさいと言って絶対会おうとしないだろうし。

クロトはミスしてないだろうけど、やりすぎてないかが心配だな。

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