13.帰還後
本当になんなんだろう。モルテリアから帰ってきてすぐにこれだ。せめて2日位は待ってほしかった。
「それで?俺たちが単独で動くのはいいが、規模とかはどんな感じなんだ?」
「約600だそうだ。今まで襲われた中で一番多い。しかも魔族がいるかもしれないという一大事なんだが・・・お前たちはもう少し危機感を持て!シーア、優雅に紅茶なんて飲んでいる場合じゃないぞ!
クロトもなに寝てんだ」
「寝たいから?」「お茶をする時間だから?」
「2人して疑問形で言うな!」
そんなに怒らなくてもいいのに。聞けば砦ももうできてるというし、蝙蝠で見た感じ到着はまだだ。慌てる必要はない。ということで・・・
「来たら起こしてくれ」
「ギルドマスター、私もお願いします」
「・・・勝手にしてくれ」
お許しも出たということで、おやすみ!
レーガン視点
やばい、こいつらといると緊張感が薄れる。
「はあ・・・」
「レーガン、この2人は何者なんだ?意味がわからん」
彼女は《暗殺者》のレート。ルーナ王国で有名だった、いや今も伝説を残す《暗殺者》。そして面白いものを見せてやると言って、連れてきたサポート候補だ。
「見ての通り怠けたがりだよ」
はぐらかそうとしたら睨まれた。
「悪い悪い。これが面白いものだ」
「面白いで済むか!2人とも部屋に入った瞬間殺気を飛ばしてきたぞ?任務成功率10割だった私を瞬間的に察知してだ!」
「怒鳴るな。説明するから」
・・・
「なるほ・・・いやちょっと待て。王を2つ持っているからといってこの魔力量は異常だし、こっちはただのエルフなんだろう?なおさら意味がわからん」
「クロトに関しては何もわからん。シーアはクロトに訓練を付けてもらってからおかしくなった」
「・・・意味がわからないから、2人だけおかしいのがいるとだけ覚えておく」
「お褒めに預かり光栄だ。そろそろ来るぞ。」
「「ッ!」」
驚いて後ろを振り返るとクロトとシーアが身支度を整えていた。
「そういう会話は本人が起きていないところでするべきでは?ギルドマスター。それからそちらの方。先ほどは殺気を飛ばしてしまい申し訳ありません」
「い、いえそんな・・・」
「気にするな、気にしたら負けだ。それでクロト、来るっていうのは?」
「だから魔物がだよ。ていうかちゃんと察知して起こせよ」
魔物?報告は来ていないが・・・。とりあえずついていくかと部屋を出ると
「あっ、ギルドマスターちょうど良かった。魔物が近くまで来ました」
「・・・わかった。今行く」
気にするな、気にするんじゃあないぞ俺!
クロト視点
作戦の第一段階が開始した。先ず森から飛び出してくるのは、足の速いゴブリンやグレートウルフ。ゴブリンは大抵1発で倒せるが、冒険者だとグレートウルフは2,3発当たらないと倒せないため時間がかかる。時間が経つにつれ魔力切れが増えてきて、足元に潜り込まれる。
第二段階だ。前衛が魔物を押し返し上から後衛が魔法を打つ。
そろそろ行くか。こっちは問題なさそうだし。
「シーア行くぞ。それとあんたはどうするんだ?」
「・・・シーアさんの方について行かせてもらってもいいか?」
「ええ、いいですよ」
「そうか、また後でな」
「「わかった」」
レート視点
許可されるとは思わなかった。彼らの傍に潜んでいたつもりが、当たり前のように話しかけられた。それに動揺して咄嗟に出たのがさっきの同行だった。
ただ、同行できるのなら、シーアの実力を見て基準にしよう。
・・・そう思っていたのに。
「大丈夫ですか?」
「ゼエ・・ゼエ。だ、大丈夫だ。進もう」
ここまで一体何体の魔物を倒したのだろう。おそらく100匹は倒している。それなのにハイスピード且つ息切れもしていない。数が多いようであれば手助けしようと思っていたが、全て短剣か弓を使い一撃で倒している。
「どうやって索敵をしているんだ?少し見つけるのが早すぎると思うんだが」
「《風魔法》を使って周りの音を運んで、それらを判別する訓練をクロトにやってもらったんです。訓練内容は・・・聞かないでください」
あ、魔物が数匹爆散した。どんだけやばかったんだ・・・。
その時遠くで大きな火柱が上がった。
「敵の攻撃か!?あれだと数人死んだぞ」
「はあ、クロトですね。大方力加減を間違えたんでしょう」
「・・・あなたはクロト殿とどのくらい戦える?」
「クロトが終わらせようとしたら1秒位なんじゃないですか?弓ならまだしも、短剣はクロトに訓練してもらっているので無理とわかっています。それから魔法は見ての通りですね」
作戦も何もあったもんじゃない。1人で世界を滅ぼせるんじゃないのか?
クロト視点
やらかした。数が多くワラワラと向かってきてイラッとして、ついぶっ放してしまった。
まあ、大方片付いたからいいか。
・・・ん?なんか飛んでくる?《結界》張っとこ。
ゴンッ
あ、痛そう。
「えーと自分でやっておいてなんだが、大丈夫か?」
「敵に対して随分余裕ではないか。我の名はグロード、悪魔王ゾルゾ様の部下である!」
「・・・すまん、知らん」
「なんだと!?ゾルゾ様は強く、そして仲間に優しい素晴らしい方なのだ!さらに・・・」
なんか言ってるが無視でいいだろう。それにしても悪魔王ね。ちょうどいい。
グロードの目の前にダッシュで移動して、腕を切り落とす。
「他にもだな・・・は?」
「帰ってゾルゾとやらに伝えろ。お前が出て来いってな」
「ひぃ・・・」
殺気と同時にそういうと、グロードは悲鳴を上げて逃げて行った。
後は報告して終わりだな。釣れるのを待つとしよう




