12.森の奥
誤字指摘お願いします。
「流石にやりすぎだ、シーア」
なんでこう面倒くさい事態に巻き込まれるんだろう?
森で10個ほど魔物の群れを潰し、満足して休憩場所に戻るとこれである。勇者が間に合うのならそれでよかったのだが、間に合わなさそうだったのでシーアと《戦士》の間に入りシーアの短剣を掴んだ。多分今までで一番の速度を出したと思う。
「・・・あっ!申し訳ありません。やりすぎました」
「い、いや。俺が君の実力を見誤っていただけだから」
突然のことによるショックから先に立ち直ったのはシーア。それに対し《戦士》も慌てて応じる。
今日は終わりにしたほうがよさそうだな。
「勇者様、少しよろしいでしょうか?」
「ああ、わかった」
森のほうに呼び出し話をする。
「今日はこれで終わりにしたほうがいいと思うが?」
「そうだね。当事者だけじゃなく他の人も少し居心地が悪そうだ。そうしたほうがいいだろうね」
「そうか。俺たちは先に帰る。他の連中に伝えておいてくれ」
そういってシーアの元に戻り声をかけ、すぐに帰った。
その夜、俺は1人で森に来ていた。
時間をつぶすために森に入っていた時のことである。多数の精霊の気配を感じた。それも全てが中級精霊以上で、上位精霊と思しき気配もあった。下位精霊がこの数なら珍しいで済むのだが、全てが中級精霊以上となるとそうもいかない。
というわけで再びその場所に来ていた。昼間ほどは多くないがそれでも異常だ。流石に気配を消して行こう。
しばらく歩いた場所にあったのは洞窟。しかし結界が張ってあるようだ。
・・・アレを試してみるか。《結界》の検証をしている時、《結界》の重ね掛けをしようとした。するとなんの抵抗も無く打ち消しあった。今回試すのはそれだ。
入り口に張ってある《結界》と同じ形の、同じ魔力量の物を展開して、同じ場所に展開する。
きれいに消え失せた。魔力密度の関係なのか、元々ある技術なのかはわからないが俺も《結界》を使う時同じ手を使われないように気を付けないだな。
洞窟に入るとすぐにお出迎えが来た。グレートウルフだ。
「結界を破ったことは謝る。ただ、あれほど精霊が集まっていると確かめざるを得なかったんだ」
『・・・ついてこい』
入った理由を話すと念話のような感じで返事が返ってきた。グレートウルフが話しているわけではなく、グレートウルフを通して何者はが喋っているのだろう。
グレートウルフに着いて歩き数分。広い場所に出た。そこにいたのは・・・
『ようこそ、魔の王よ。歓迎しよう、我が住処へ』
1頭の狼――フェンリルだった。
フェンリル。生物の頂点とされるドラゴンに次ぐ力を持つとされる、魔物ではなく神獣。
そんなフェンリルが森の奥の洞窟にいた。
『精霊の集まり具合がわかるということは、感知ができるのか?』
「ああ、見えるわけじゃなくて階級がぼんやりとわかるだけだが」
気配には魔力が伴う。その魔力量を見て、下位、中位、上位の見分けを付けている。
話によると、フェンリルは本来モルテリアの守護神だった。しかし何年か前に「神獣を私欲のために使ってはならない」という掟が破られた。そのためモルテリアを離れ、この洞窟にいるそうだ。
『それにしても魔王とはいえ、階級までわかるのはおかしい。お前何なんだ?』
「・・・最初にあった威厳はどこいった?ただのおじさんみたいになってるぞ。」
『久しぶりの客だったからな。少し格好をつけてみた。』
客じゃなくて侵入者だと思うんだが。
とりあえず俺の種族のことを話し、いつも通りの反応を受けた。ただ、初めて得た情報もあった。
『王を2つ持って生まれて来た奴は初めて見た。』
「生まれてきたやつはってことは他にもいるのか?2つ持っているのが」
『ああ、知らなかったのか。他の種族の王を殺すことで、その種族の王を手に入れることができる。お前の場合は殺してもないのに、手に入ったんだろう?そういうやつは初めて見た」
そんなに初めて初めて言われても嬉しくない。まあ、俺が意味わからないのは今更だ。
気にしなくていいだろう。
「そろそろ夜も明けるし帰るよ。結界は張りなおして行く。多分また来る」
『そうか。本当に来てくれ。本当に暇だからな』
「はいはい、わかったよ」
最後までおじさんだったな。帰ろ。
翌朝、俺たちを含む助っ人は全員ギルドに呼び出されていた。
「集まってくれてありがとう。先ずは報告だね。今日で討伐隊は解散になる。思ったよりも早かったけど魔物の数は大分減ったからね。残ってもいいがギルドが特別措置をとることはない。そこは注意してくれ」
しばらくざわついた後、グループで話し合いを始めた。勇者たちも俺のところに来た。
「クロトさんとシーアさんはどうしますか?僕たち残るんですが、一緒にやりませんか?」
「いえ、私たちは帰ります。お誘いいただきありがとうございます」
男子が何か言いたそうだったが勇者が目線で黙らせた。・・・最初からそうしてくれれば良かったのに。
「わかりました。また機会があったら是非」
そういって去っていた。
「俺たちも帰るぞ」
「うん」
少し面倒くさいこともあったが、危険なことは起きなくて良かった。
今後もそうであることを祈る。




