EX.勇者③
誤字指摘お願いします。
僕たちはモルテリア共和国に来ていた。来た当初は頑張ろうと張り切っていたのだが・・・
「おーい、向こうの洋服屋行こうよ!」
「私はあの小物屋行く!」
今はこんな感じだ。ギルドマスターのキールさんに話を聞いたのだが、他の助っ人の合流がまだなので観光していていいと言われた。言われた瞬間に女子たちは買い物に行くと外に飛び出し、男子は冒険に行くと言い外に飛び出していった。
結局3日後に全員宿に集合という連絡をして、好きにさせることにした。その間僕は、護衛をしてくれるモルテリア共和国の隠密部隊『鴉』(世界最高といわれる隠密部隊)との打ち合わせ。モルテリア共和国代表との話し合いなど色々なことをしていた。
そして2日後の夜、『鴉』の人達と話しをしていると突然強い嫌悪感と危機感が襲ってきた。城の禁書子にある勇者にしか読めない本に、この反応は魔王だと書いてあった。行くしかない。幸い『鴉』の人はこの世界の機密事項も知っている。行くしかない。
「恐らくですが、近くに魔王がいます。ついてきてもらっていいですか?」
「!・・了解しました」
流石プロ。すぐに対応してくれた。
魔王は路地裏にいた。ただ、何もせずに佇んでいるだけで手の出しようがない。
夜になった。そろそろ動くかと思ったその時・・・
「さてと、話があるなら早くしてくれよ、勇者様方?」
なっ!ばれている!?まだ気配が上手く消せない僕だけでなく、『鴉』の人のことばれているようだ。
仕方ない。
「その言い方はなんで自分が囲まれているのかもわかってるよね?」
「当然。それとお前らに対して警戒する必要が無かったことにもな」
意味がわからない。僕も大分強くなっているのは確かだし、今は『鴉』の人もいる。なんでそんな自信が持てるんだ?
『鴉』の隊長もそう思ったようで、姿を現す。
「魔王、貴様は自分のおかれた状況を理解しているのか?勇者様に加えて『鴉』が総勢50人だぞ?」
「ちゃんと理解しているさ。それと1つ訂正しておく。実質1対2だ」
「なにをいっ・・・!」
なにを言っていると言いたかったんだろう。しかし、途中で喋れなくなってしまった。
僕も隊長も動く動くことすらできなかった。
なにも、不思議な力を使われたわけでもない。
単純。そう単純だ。
気づいたら魔王が目の前にいた。
気付いたら僕と隊長の喉元に短剣が突きつけられていた。
ことは単純だ。だが・・・
なぜ人類最高峰の勇者に、世界一の隠密部隊の隊長に動きが見えない?
僕がそんな思考に陥っていると、魔王は突然短剣をを引いた。
「別にそちらが攻撃しないなら、こちらもしない。今のは軽い警告だ。その意味はわかるな?」
「・・・つまり、こちらは信じざるをえないというわけか」
確かにその通りだ。戦ったら絶対に負ける。それなら手を出さないのが正解だろう。
「それに俺はギルドの要請で来ただけだからな」
「・・・それは討伐隊に加わるということか?」
「ああ。俺は自由行動を許されているがな。心配ならキールに聞くといい」
ここでギルドマスターの名前が出るということは、本当なのだろう。
・・・選択肢は1つか。
「ここは引きましょう」
「・・・承知。力及ばず申し訳ありません」
「いや、相手が悪いよ。・・・1つ聞きたい。魔王は皆お前みたいな感じなのか?」
「他の魔王にあったことがないから確かなことはわからないが、多分俺よりも弱いだろうな」
魔王はそういうと消えた。本当にどうなっているのだろうか。
まあ魔王が全員あんなのじゃないとわかっただけいいだろう。
・・・明日は頑張らなければ。
翌日。
助っ人が全員揃ったとのことでギルドに呼び出された。作戦会議をするそうだ。
ギルドに着くとその一角に多くの人が集まっていた。するとクラスメイトの1人が小さく声をあげた。
「女性のエルフ初めてみた。すげぇ可愛い・・・」
「「「「・・・ゴクッ」」」」
その生徒に釣られて皆がそちらを見て、多くの者が息をのんだ。だが、僕は違うことに気をとられていた。
昨日の仮面を着けた魔王がそのエルフと一緒にいたからだ。
するとそれを見た男子の1人が・・・
「なんであんな可愛い子が仮面を着けた怪しい奴と一緒なんだ?脅されているんじゃないだろうな・・・。ちょっと俺、声かけてくる」
そう言った男子に何人かが一緒に行こうとした。
皆は魔王だとは知らないから、何か言い訳して喧嘩を売らせないようにしないと。そう思った時・・・
ドテッ、バタバタッ
先頭の1人が倒れ、後続もそれに躓いて転んだ。気のせいかもしれないが、一瞬蔦が見えた気がする。
魔王がやったのか?そんなことを考えていると・・・
「集まってくれてありがとう。人によっては初めましてだね。僕はギルドマスターのキールだ。とまあ自己紹介はこの辺にして、今日中に作戦を始めたいから会議をはじめるね」
作戦はこんな感じだ。
・ギルド側で決めたグループに別れる。
・グループごとに森に散開する。
・危険になった場合はギルドが配布する魔道具を使い、助けを求める。
他の地域から呼び寄せているのだ安全第一のようだ。
グループ分けの紙が配られる。僕たちは人数が多いから他のパーティーがいないのはわかるが・・・
「おい、この2人しかいないグループは何なんだ?」
他の冒険者がギルドマスターに当然の疑問を発する。
「ああ、それは本人たちの希望でそうしてだけだ。実力も確認できたからね」
実力があるということはこのクロトというのが魔王なんだろう。じゃあシーアというのがあのエルフか。
「シーアって確か・・・おーい、このクロトさんのパーティーはどこにいる?」
突然クラスメイトの1人が声をあげた。一体何をやっているんだ?
「はい、私たちですが?」
「ああ。1つ提案なんだが、俺たちとパーティーを組まないか?」
相談もなしに何をやっているんだ。
・・・まあ断られるだろうから止めなくてもいいか。
「いえ、先ほどギルドマスターも言っていた通りこちらが希望したことですし、実力もあるほうなので」
「い、いやでも2人でしかも片方女の子っていうのは危ないでしょ?」
「性別は関係ないと思いますが」
確かにその通りだ。だがその男子はあきらめずに、魔王に話しかけた。
「お、お前。女の子に守られてて恥ずかしくないのか!それと本当に実力はあるのか!?」
「はあ・・・さっきシーアが性別は関係ないと言ったばかりだろうが。実力に関しては俺じゃなくてキールに聞け。そもそもなんでお前らと組まなきゃならないんだ?」
「・・・じゃあはっきり言おう!お前その子を脅して一緒にいさせてるんだろう?そんな怪しい仮面を着けた奴なんて俺は信じないぞ!」
「話が飛躍しすぎだ。それに仮面に関しては製作者に言ってくれ。それに、俺以外にもこの仮面を着けている奴はいる。そいつらも信じないのか?」
男子は何も言えなくなってしまった。まあ今回は魔王の言い分が正しい。そろそろ止めるか?と、その時突然ギルドマスターが口元を動かし始めた。《風魔法》で声を届けているのか?《風魔法》はエルフ特有の魔法と聞いたことがある。
すると・・・
「その2倍だ。いいな?キール」
「ええ、それでいいですよ」
「はあ、しょうがないからついて行ってやる」
ギルドマスターは一体なにを言ったのだろうか。
・・・まあグループは決まったからいいのかな。
揉めないといいな。




