1000文字で大魔王を倒せるか検証してみた
オレは焦っていた。
かなり焦っていた。
「ちょっと飛ばし過ぎよ!」と苦言を呈するパーティの言葉に耳を傾けることなく、ひたすら玉座の間に向かって走っている。
目指すはヤツの首。
「大魔王、覚悟しろ!」
勢いよく放った扉の向こうに標的はいた。
大きな玉座にゆったりと腰をおろし、鋭い眼光でオレを見つめている。
「勇者よ、よくぞここまで来……」
「どおりゃああああ!」
「ちょ、タンマタンマ!」
オレの渾身の剣撃は、大魔王の爪で簡単に防がれてしまった。
「ちっ!」
すかさず二撃、三撃と攻撃する。
しかしオレの攻撃はことごとく防がれてしまう。
「タンマと言うておろう!」
逆に大魔王の手から巨大な炎が飛び出した。
オレは背後に大きく飛び、それを間一髪でかわす。
「ちょっと君、おかしくない!? 普通ここまで来たら何か会話ぐらいあるじゃん」
「聞く耳は持たん!」
「いや、持とうよ! せっかくここまで来たんだし!」
「チェストオオォォ!」
「チェストーじゃねえよ!」
また防がれた。
やはり強い。
そこらの魔物とはレベルが違う。
「ほら、もう肩で息してんじゃん」
「うるさい、しゃべるな」
「いや、しゃべらせてよ! 大魔王だよ? クライマックスシーンだよ? 一番の見どころじゃん!」
「それ以上しゃべるなー!」
懐に飛び込み、真横に剣を振るう。
たいていの相手はこれで上下真っ二つだ。
しかしこれまた簡単に防がれてしまった。
「くそうっ、見切られてるか」
やはり単独で来たのが間違いだったようだ。
ここはパーティの力が必要だ。
けれども、もう遅い。
最初から1000文字以内で倒すと決めていたのだ。
「ふふふ、さすがは勇者。殺すには惜しい男よ。どうだ? 余の配下にならぬか? 余の配下になったら……」
「ふんぬおおぉぉ!」
「人の話を聞け!」
いかん、黙ってると勝手に文字数を消費されてしまう。
一気に勝負をつけるしかない。
オレは距離をとり、最終奥義の構えを見せた。
旅の途中で体得した大技だ。
寿命が縮むから使いたくはなかったが、ヤツを倒すにはこれしかない。
「うぬ!?」
勝負に出たことに気付いたのか、大魔王も身構えた。
どうやら正面から受け止める気のようだ。
ふふん、甘いな。
この技は誰であろうと防ぐことはできない。
「行くぞ大魔王!」
「来るがよい、勇者よ」
聖なる光がオレを包み込む。
さすがの大魔王も少したじろいだ。
よしイケるぞ。
これなら。
「くらえ、我が最終奥義! 秘剣エコクリプス・ラトレ……(1000文字到達)
結論:ムリでした☆
最後までお付き合いありがとうございましたm(__)m