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変なトコに入っちゃったお!

「ちょっと。入るなら早くしてくれよ」

 気づけば後ろに、バックヤードへ入ろうとする5・6人の生徒が詰まっていて先頭の生徒が画咲を促した。

「す、すまねぇお!」


 ふたりは鉄でできた階段を、眼下の喧騒に向かって降りてゆく。

 段々と光に包まれて、画咲とクラフは町に降り立った。

「レッツゴーでゲス~~」

 元気に手を上げたクラフにオドオドとついていく画咲。見るものすべてが同じ学園内とは思えない。地を這うパイプを縫って掘っ立て小屋のような建物群が続く。

「こ、こわいおおお」

「大丈夫でゲスよ。周りの顔をよく見るでゲス」

 画咲はすっかり町の空気に圧倒されていたが、そこを歩く生徒らをよく観察した。


 ここバックヤードはシェルター時代を経て学園創立の際、整備されなかった場所。つまり学校としては非公式な場所である。おのずと、そこにいるような生徒は不良である。そして非行に走る生徒というのは独特の空気をまとうものだ。自己主張として服装をユニークに着こなしていたり、髪型・髪色が奇抜であったりする。

そうした生徒たちには、呼び方があった。


「こいつらが…噂に聞くスクラム!!」

「いやいやいや、そこらを歩いているのはスクラムとは言えないでゲスよ」

「ふぁ? ちがうのけ」


 もちろん、浮ついた雰囲気をまとう者も見かけるが、おおかたは買い物をする普通の生徒たちであった。

「本当のスクラムはこんなもんじゃないでゲス!」

「はい、教えてスクラムのコーナーがやってまいりました」

「ほーんと。やれやれでゲスね!」

「何者だお、怪しい密入国者とか?」

「真のスクラムは、この町に魅入られて住み着くまでになった『元学園生徒』や『仮面高校生』のことなんでゲス」

「ふぇぇ!?」

「学校は卒業できなかったけど居心地がいい、または生徒に成りすまして学園都市で一攫千金!そういう連中のことでゲス!」


「ここ、ほ、本当に高校なのかお?!」

「言ってるデゲしょ。ここは“学校じゃない場所” って。ゲスゲスゲス」

「ひいい」

「俺たちが普段を過ごすのは通称:オモテ。ここはウラにある場所、だからバックヤードなんデゲス!」

「反社会的だお! 粛清!粛清!」

「ゲス? スクラムも居るでゲスがほんの一部、大体が一般性とでゲス。粛清したら学園が回らなくなるデゲスよ?」

「アブねぇもんとか、売ってるに決まってるお!」


「あーあー。オモテで手に入るのは生活に必要なお利口品ばかりでゲしょ? ちょっとした中古品や学園に入って来にくいジャンクなものを調達するとき、どうするでゲス? だから皆ここに、普通にくるわけでゲス」

「ううむ。そう言われれば……、なんかお祭りっぽく見えてきたお! いろんな看板があって楽しいお!」


『アイドル秘蔵写真館(身分証提示をお願いしています)』

『秘密厳守! 女生徒の制服お売りください』

『禁制マンガ図書館(閲覧は自己責任となります)』


「おいクラフやっぱここマズイんじゃねぇの」

「うお、急に真面目になるなでゲス!」


 五分も歩かないうちに、クラフがある店の前で止まった。

『アイドル変身の館 ~マダムよしえがお手伝い~』

「おいクラフやっぱここマズイんじゃねぇの」


 トタンの壁に走るサビの跡。店頭に下がる、ガラスの欠けたオイルランプ。

 全体的に立て付けの悪そうな、しかしこじんまりとした喫茶店を思わせる佇まい。

「高校なのにマダムてw マダムよしえのお手伝いてw 笑えるおw」

「こんにちはーデゲス~」

 クラフが洋風のドアを開けるとドアのベルが “チリンチリン”と鳴った。

「わお! 入るのかお!!」


 店内には所狭しと女性モノの衣装やウィッグが並んでいた。壁にかけられたランプが柔らかい光を放つので落ち着いた印象の店内だが、ファンタジー作品に出てくるような怪しい魔法薬品店にも見紛うかも知れない。


「喜ぶでゲスよブタ! ここでなら何でも揃いそうでゲス!」

「うん、うーん。そ、そうなりねぇ…」

「どうしたんでゲス?」

「いやあのさクラフ。レジにさ、ゴリラいない?」

「お前が鏡に写ってるんじゃないデゲすか?」

「オイラはあんなにゴリラーマンじゃないお!」


 クラフが店の奥に目をやると、レジに大きなシルエット。ランプの位置が悪く、正体はわからない。こちらの会話に気づいたように、ぬう~っと立ち上がった巨大な影が、ずしん、ずしん、とふたりに近づいてきた。

「あばばばばばばばば」

「デデデゲスゲスゲス」

 二人の近くにあるランプが光を届ける範囲まで、影はまっすぐと近づいてきた。そして巨大な影の正体が顕になる。

 それはスキンヘッドにひげを蓄えた、鋭い目の大男だった。


「えやあああああああああああああ!!!」

「ゲぇええええええええスうううう!!!」

 抱き合って泣き叫ぶ二人の前に、ゆっくりと顔を近づける大男。さらに顔が鮮明に見えると、男は、口紅、アイライン、チークをしつこいくらいに塗りたくったオカマであった。


「ちょっと。あなたたち。しずかにしてちょうだい」

「静かになりますお、ちょうど今心臓が止まったので」

「あこら先に死ぬなでゲス!! しっかりするでゲス!」

「先に死ぬなってどーゆーことよぉ! どっちも殺さないわよ!」

「いや今一名死亡したでゲス!!」

「やあね。冗談はそれくらいにして。あなたたち、変身しにきたんでしょう?」

「そ、そうでゲス、……あいや、俺は変身しないでゲス!」

「それじゃあ、こっちの()()()()()なぽっちゃりさんがアイドル志望かしら☆」

「生きろよ…ブタ…」

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