鍋会議だお!!
「「「「「いただきまあああす」」」」」
カセットコンロの上で土鍋がぐつぐつと音を立てる。足元のヒーターを少しでも自分の方向に向けようと皆で喧嘩をしながら、部室で楽しく鍋を突く。
「火の使用許可、良く出たねー」
「どのレンタル用品店もIHが出払ってましたからね」
「一年生じゃ勝手が分からなくて不利でゲスねー。この時期はどこも鍋パーティするから早めにレンタル予約が必須って、覚えておかないとでゲス!」
「ですから、そこをなんとかって、クラブ局に言ったらオッケーでした」
「そんな簡単にオッケーは出ないでしょ? どうやったの?」
「フツーにお願いしただけですよー?」
リアムは女性の声で答えた。
「まさかリアム…」
「はい! メープルさんでお願いしに行きました☆」
「いい武器を持ってるでゲスねぇ」
「それは皆さんだって一緒ですよ? 人は誰しも…」
「はいはい、ブサイクポイントがあるんでゲスよね」
「クラフさん合格です☆」
「ブサイクポイントを潰して長所を出せば、人は誰でもカッコよく、可愛くも成れる…か」
「女性の声の出し方講座も…カルチャーショックだったかもね」
「リアムの女性化技術は本当、眼を見張るものがあるでゲス」
「姫子さんは優しい顔立ちですからお化粧しだい、クラフさんは痩せていると頬骨が張りやすいので少し太ってもらいました」
「文絵さんと文人さんはもともと中性的なお顔なのでこれもお化粧次第、あとは皆さん無駄毛の処理だけお忘れなく、ですね」
「それと…姫子さん…」
「もぐもぐもぐもぐ、なんだお!?」
「太っていた時代のご飯の食べ方が復活しているようです。よく噛んで色んな食べ物を少しづつ楽しむほうがお得ですよ?」
「だいじょうぶだお! あの、お菓子とかも控えてるし!」
「じゃあ棚の後ろに隠してあったこのホッピーターンとアウェイパイは今日のパーティー中に『皆で消化』しましょうねー」
「あばばばばばば!! 補給ポイント・シグマの物資がなぜそこに!!」
「誰が隠していたか一発で分かるラインナップでゲスな…」
「暗にいくつかの補給ポイントがあるも仄めかした、かもね」
「隠し場所は増えたから、これからも警戒しないとね」
あははははははははは!!
部室の間取りには変化があった。簡潔に言えばスタジオの様相を呈している。以前はただの集会所として簡素にイスとテーブルが置かれ、小さな棚にそれぞれの本や画材が並んでいた程度。お菓子など隠す場所はなかった。
しかし今では壁沿いに図書館の学習スペースのような机が3つならび、ロフトはクラフの専用スペースから仮眠スペース兼物置へ。従来のPCや、それぞれ私物のPCも置かれている。壁には予定表や工程表が貼られ、もちろんアニメやマンガのポスターをそのままに、秘密基地なスタジオとして生まれ変わっていた。
「うん。それにしてもいい部屋になったね」
「そしてだおー。記念すべきシュガー5(ファイブ)の忘年会とは感涙だお」
「まだ言ってるでゲス。シュガー5って」
「こういうときって、最初に出たあまり乗り気じゃない仮称がいつの間にか定着しちゃうから怖いんだよね」
「そろそろ決めるべきだお? 女性版のオイラたちは地獄A`s。では地獄A`sの作品委託先、オイラたちはなんと名のるのか?」
「“さとう” が五人だからってシュガー5はどうなのさー」
「うーむ、俺は正直、悪くないと思うでゲス!」
「おおクラフよ。わかる男になったであるなぁ!」
「印刷所への入稿も次の打ち合わせで責了になるから急がないとな……製作サークル名はシュガー5で打っとくか」
「実はもう打っといたおー!」
「勝手をするなでゲス!!」
「いろんな準備が段々と終わってきましたね。明日はいよいよ、衣装のお披露目です」
「そして練習開始でもあるかもね」
「クリスマスライブまでに間に合うのかおー?」
「たったの一曲です! ライブまで、まともに時間が取れても4日間ですが、間に合いますよ!」
「締めのラーメン入れておk? 略してシーメンだお」
「お二人の女性化も順調ですし、歌も上手いですからね」
「カラオケで当たり障りのない歌を歌える程度かもね」
「それでいいんですよ。あとは場数とハートです!」
「露出も増やしていかないといけないでゲスなぁ」
「脱ぐのかお?」
「違うでゲス! ホームページとか、SNSに普段から投稿するんでゲスよ!」
「そういえばだお。モモッターでの宣伝の調子はどうだお!?」
「グループのアカウントでライブ告知をしてありますが……クリスマスライブ明けには検索する人も増えるでしょうね」
「メンバー個人アカウントも作っておいたほうがいいでゲスな」
「さーて、締めのラーメンが煮えた頃だ、、、ああああ!! セカンドフミフミが全部取ってったおおお!!!」
「画咲を太らせないため、かもね」