乾杯の唄だお!
楽屋出口での、いわゆる“出待ち”は禁止されているので、ハウスから少し離れた場所で一行は画咲を待っていた。待ち合わせのメッセージを打っておき、ひたすら、彼が出てくるのを待つ。
すると遠くから、見覚えのある見慣れない姿が手をふって近づいてきた。
「やあやあ諸君諸君! ヒーローの凱旋だお!」
「「「「………」」」」
「あのさ、かっちゃん…残りのAPなんだけど…」
「いやあ、さすがに新人戦とはいえ苦戦したである! しかーし、吾輩の力を以てして」
「ブタ……無理しないでいいでゲス…泣いていいんでゲスよ…」
「姫子さん……」
「どうしたんだお、皆。お通夜モードなり?」
「かっちゃん! 現実を見よう。誰も…APは入れなかった…」
「残りはなんとか、みんなで考えようでゲス…」
「え。え。またオイラの計算ちがいかお!?!?!?」
「げす?」
「だって、バックヤード探索で10万AP、バイトで15万AP、今日が7000APで、ぴったしのはず……ちゃんと手数料が引かれた後の7,000APだお?! この間みたいな計算違いはないお?」
「「「は?」」」
「ほれ」
画咲は腕のモモバンをいじると、画面上のAP残高には確かに25万7,000APと記載がある。
「ど、どういうことでゲス!?!」
「まさか。会場はあのとき誰も…」
「いやあ、なんか明細には『応援者1。7,000AP』ってあったお? おひねりAPは会場が3割持っていくらしくて正確には1万AP入ったらしいけど。そこから手数料を引いて7,000AP入ったお??」
「かっちゃん……」
「すごいでゲス……」
「姫子さん…」
「よくやったかもね」
「「「「「やったーーーー!!!」」」」」
それは往来が驚いて動きを止めるほどの大発声であった。
それぞれが、それぞれの手をとったり肩を寄せたり天井を仰いだり、深くため息を付いたりと、思い思いの嬉しさがこぼれだした。
「応援者がひとりいたってことなのかな!?」
「そ、そうかもしれませんね」
「見初められたなんてすごいでゲス!」
「育てがいがありそうだから、多めに入れた人が居たのかもね」
「見た目は悪くないんだ。誰もAPを入れない雰囲気に、俺は応援するぜ!って人が手を上げてくれたのかも知れないね!」
「しかもおひねりにしては、大金かもね! 良かったかもね!」
「ゲース! 今日は俺のおごりでゲス! コーラで乾杯でゲス!」
「なにをなにを~!? 僕だってコーラおごるぞ!」
「私だっておごりますよ!」
「超おごるかもね!」
「あはは! それじゃあみんな自腹と同じじゃん!」
皆で笑いながら屋台でコーラを買い、少しずつ出し合って画咲のコーラを買った。
「みんな……本当に……ありがとうございました!!」
「「「「「かんぱーーーーい!!」」」」」