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風変わりで悪かったお!


『ここは百徒神!! 自己実現の園!』

 パーティグッズのような大きな蝶ネクタイをしているMCが壇上に現れて掛け声を発すると会場が歓声に包まれる。


『オモテの()()()に疲れた皆。残念なお知らせだ………ここも似たシステムを採用している!!』

 笑いに包まれる会場。


「「「「「「「ふざけんなー!! いいぞいいぞー!!」」」」」」」


 どうやら今のがこのハウスでの返しの挨拶らしく、数人の客が口を揃えてコールした。

『オモテはさあ、そりゃあ可愛い子もいっぱいいるし、ああ売れるだけあるなって子もいるけど、なにか操作されてる。見ていて疲れるだろ??』

『一部の太客が上位のアイドルを操作する……優遇される。本当に推したいアイドルは陽の目をみない! ()()()()()()には皆疲れてるだろ?!』

「やっぱりそういう感じなんですね? オモテって」

「久しくそうかもね。アイドル性というより資金集めに成功しないと上に行けないかもね…」

「よくは思わないけど、しかたないんだろうなぁ…」


『もっともっとアイドルを身近に感じたいだろ?! オモテの格差は広がる一方だ!!』


「「「「「「「上位渋滞! クソくらえ!!」」」」」」


『でもさ、うちはさ、優遇格差を最小限にしてるワケ!』


「「「「「「「「ふざけんなー!! いいぞいいぞー!!」」」」」」


『頑張ってるアイドルにはご褒美が入る。でもオモテみたいに他のアイドルが住みづらくなるまでのことはしない! だからさ、本当にいいなって思った子にドンドン入れちゃえば君等もアイドルもハッピーハッピーなわけ!! ウチも儲かるしさ!!』


 またも笑いに包まれる会場。出演者の腕が良くても観客のエンジンが掛かっていなければならない。このハウスのMCは腕がいいらしく、この日はすでにライブ特有の一体感が生まれつつあった。


『オッケー! 今日の客いいわぁ! つかみバッチシだもんね! いいなって思う子が居たらおひねりAP入れてやってよね! そこかしこにある端末にモモバンくっつけて送金送金! なにせウチも儲かるからさ!』


「「「「「「「「「ふざけんなー!! いいぞいいぞー!!」」」」」」」」


『おっしゃ! それじゃあさっそく、一人目から行っちゃうよ~!!』


 会場が暗転。歌声とともに暗くなったステージへ一気にスポットライトが降り注ぎ、二人組のアイドルが出てきた。ふりつけ、歌も悪くない。

「この子たち! いいでゲス!!」

「ひゃっほー!! 最高!!」

「いいですね、動きにキレがあって!」

「かもねーーーー!!!」


 ~~~~(♪)

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! 

 パチパチパチパチ!!

 ヒュー!!  ヒューーーーー!!!


『いやあ、一発目に盛り上げてくれちゃって、これあと20組続くんだよ? 後が疲れちゃうね! じゃあ自己紹介して自己紹介!』

「はあい! みなさーん! ありがとうございました!! パレッツエッジの!」

「イスカです!」「クロエです!」

「よ「よろしねおがいます」す!」

『あいさつそろってないじゃーん!! やりなおし~!』

あはははははははははははははははは!!


 一組が終わるごとに、部屋のそこかしこにある端末にモモバンをくっつけておひねりを入れる観衆。

 デビューライブにせよアイドルとしてまだまだな者もいるが、ここにきている観客はむしろ、育てたいアイドルを探しに来ている。

 それでもやっと二・三人がAPを入れたかというアイドルもいて、新人アイドルに優しい場所でも厳しい現実があった。

 その後、10組ほど歌ったかというところで……。


 (♪)~~~~

「ココ!!! 画咲でゲス!!」

「きたきたきたああ!!」

「お願い、頑張って姫子さん!」

「かもねーーーー!!」


『夕闇に 伸びた影 だれー! このくらい背が高いといいね びよーん』

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 ~~~~(♪)

 パチパチパチパチパチ!!


『え。選曲すごくない? なにいまの!?』

『はじめまして! ココだお!』

 ヒュー! ヒュイイ!!


『聞いて聞いて~?! 何今の選曲って言ったのー!』

 あはははははははははははははははは!!

『ああ、アレはアイドルの水琴氏がインディーズ時代に歌っていた曲だお!』

『選曲もさることながら何か醸し出される不思議ちゃんの香り!!』

『オッケー! ちょっと風変わりなココちゃんでした! AP入れろよな野郎ども!』

 会場も歓声で“彼女”を見送ったが何か今までと違う反応であった。


 一行が見てみると、おひねりAPを入れに端末に向かう人も居ないように見える。


「つらい現実だね……」

「でも頑張ったでゲス」

「私が……至らなかったんです」

「リアムはあそこまで仕上げた。それはすごいことかもね」

「私……どんな顔で姫子さんに会えばいいんでしょう……」


「大丈夫だよリアム。残りのAPも、なんとかできるさ…」


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