ちょっと複雑だお!
百徒神ネットで検索した、漫画サークルのイトウ。
人畜無害なポッチャリ汗かきマシンという印象からは、まるで別人の写真が浮かび上がった。
「…ん? ちょっと待つかもね……この記事……」
「なになに。学園内出版社の中でも審査が厳しいアスカゼウスのマンガ賞で、3年のイトウカズヤさんが最優秀賞……ふむふむ。これが?」
「そこじゃないかもね、これ……5年前の記事かもね」
「ええええ?!? 5年前に3年生って……本格的に別人じゃない?」
「うーん。イトウカズヤなんて、よく居そうな名前でゲスからねぇ」
「でもこの数年でイトウカズヤはこの人だけかもね。よくいそうな名前が、むしろこの人しか居ないかもね」
「申込用紙の記入見本によくある田中太郎さんにそうそうお目にかかれないのと一緒だお!」
「ネットに出てないだけで同じ名前がいる可能性はないでゲスか?」
「さすがにネットじゃ限界か……マンガサークルの情報を一手に持ってるとこないかな…」
「あれ? イトウが漫画賞とったの、アスカゼウスって言ったかお?」
「どしたの、かっちゃん」
「うーんとね、ピ・ポ・パッだお」
「おいパクるなデゲス!」
『ほいほーい。かっくんどしたー?』
「ああ、和幸、お願いがあるなりー」
『やだー』
「えいや、そこをなんとかw」
『ものによるなー。どうしたの?』
「和幸の出版社って、どこだっけ」
『アスカゼウスだよー?』
「「「「 !!! 」」」」
『発刊前のマンガ原稿みせてーとかだったら断るからね』
「そうじゃないんだお。もっと危ないこと!』
『余計イヤだよ! ………ちなみになに?』
「マンガサークル登録者のリストって、編集部は把握してるのかお?」
『うんまあ、マンガ家志望者の確保が仕事みたいな所あるしね。つっても俺アイドル記事の編集部だよ?』
「五年くらい前に賞をとった、イトウカズヤっていう生徒が今何してるか、なんとか調べてもらえないかお?」
「それくらいなら俺の編集部からでも検索できるけどー。ちょっとまってて。ピッポッパッ」
「流行ってるんですか? ピッポッパって」
「リアム氏よく聞くでゲス。今のは『ピッポッパッ』俺のは『ピ・ポ・パッ』」
『いたいたー』
「「「「「 !!!!! 」」」」」
『拠点を東京に移して……えーと。今もマンガ家やってるみたいだね』
「そ、その先生に、電話をしてもらうことって、できるかお?」
『うーーん。その後のご活躍をお聞かせください~みたいな電話なら不自然じゃないだろうけど……』
「学園を卒業したかどうかってところまで聞いてほしいなり! 和幸の取材テクで!! このとおり!」
『いや、この通りって、電話じゃ見えないけど。ご経歴の確認とかなんとか言えば聞き出せるかな』
「さっすが花形記者だお!」
『なんか巻き込もうとしてないだろうねー』
「和幸。」
『なに』
「ア・イ・シ・テ・ル」
『おえ。じゃあねぇー』 ピッ
「でかした、かっちゃん!」
「次は、リアムが遭遇したアキヤマ行ってみようか」
「アイ認の事務局にかけてみるのはどうでゲス」
「いいね」
「ピ・ポ・パッでゲス」
「アイ認ってちゃんと仕事してるのかお?」
「そりゃあ学園内のアイドル活動はアイ認の許可がないと出来ないんだから。アイドルコーディネーターを束ねてるのもアイ認だしね」
『はい、アイドル認定委員会21区事務局です』
「もしもしでゲス。コーディネーターサークルを探してるんでゲスが。取り次いでもらいたいんでゲス。はい、ええ、2年生のアキヤマ・シュウイチロウさんゲス! はーい、待ってるでゲスー」
「なんか、スパイ組織みたいになってきたな…」
「いいんだおいいんだお! みんなで何かをやってるこの感じ! たのしいお!」
「はい! そうでゲス。………ええ。はい。ええ。たしかにその名前のハズでゲスが…… ええ? 数年前から? どういうことでゲス??」
「嫌な予感がするな……」
「はい。はい…分かりましたでゲス…お世話になりましたでゲス」ピッ
(着信音)明日から 別の道を歩むんだね そっちは いきどまり だよ
「こっちの道は大丈夫~!!! ザマァア!! だお~~~!!!」
「はやく電話に出なよ…かっちゃん」
「和幸~、おいらだおー。 うむ。うむうむ。……うむ。………それは確かかお!?」
「またも雲行きがあやしいな…」
「……わかったお。本当にありがとうお。うん、この仕返しはいつか必ず」ピッ
「あ、恩返しか」