後は任せようと思います。
1回本気で魔力全開のフレイムをうつだけで気が遠のきそうな痛みが走る。しかし、思っていたより攻撃が効いていたみたいで、悪魔は喚き散らしている。うん、うるさい。さっきまでの威厳や風格はどこへやら…。
「貴様、我を怒らせるとはいい度胸だ。」
「いや、そっちが勝手に避けなかっただけじゃん。」
おっと、そんなことを言っている場合じゃない。敵は明らかに格上だし、どうやっても勝てそうにない。
よし、ここは1つ穏便に…。
「喰らえ!ダークボール!!!」
いかないですよねー。
悪魔が放ったスキルは禍々しい黒い魔力を弾丸のように放つものであった。俺は涙目になりながら悪魔のスキルを間一髪よけた。俺が元いた場所は大きな穴が空いていた。うん、喰らったら死ぬね、これ。
「小癪な。ダークボール!!!」
あ、やばいこれ。くそー、使いたくないのにやるしかないじゃんかよー。
「ブリザード!!!!!」
俺はこれでもかと言うくらい魔力を込めて初期魔法を放った。
俺が放ったブリザードは悪魔が放ったスキルと俺の間に大きな氷の壁を作り出した。そして悪魔のスキルを防いだ。
「痛っだい!!!なにこれ、冷たいのに熱い!!!」
俺は右腕に凍傷を負ったような感覚であった。
やばいな、これ。こんなの続けてたら俺の体もたないよ。
ふと痛みが走る右腕に目をやると驚くことに外傷はなかった。そう言えばフレイムを初めて発動させたときも外傷はなかったような気がする。そこは丈夫な体なのかよっ!
いかんいかん、思わずつっこんでしまった。
痛み自体はあるが、この分だと外傷はあまり負わなさそうだ。ならば、だ。
俺は歯を食いしばる。やるぜ?1番怖いけど1番威力高そうなスキル、放っちゃうぜ?
「おい!クソ悪魔!これでも喰らっときやがれ!!!ボルトーー!!!!!」
スキルを放った瞬間、俺は焼き裂けるような痛みに見舞われた。やっばい、これもう立っていられないんじゃね?そう思ってしまうほど、強烈な痛みであった。それと同時に青白い光が悪魔めがけて飛んでいく。
悪魔は回避するべく横にスライドするように飛ぶ。
はい、残念でしたー。当たりませんでしたー。なーんて、言うと思ったかい?
俺は悪魔がスライドした方向にスキルを放つ。
「ボルトッッーー!!!!!」
もちろん、涙目になりながら。うん、こればっかりは仕方ない。逆に言うとよく気絶せず立っている方だ。
俺が決死の思いで放った一撃は悪魔の正面に飛び、そのまま直撃した。
悪魔は俺が思っていた以上にダメージを負っており、目に見えて怒り心頭であった。
あー、こわ。こんな怖いのと戦うやつの気が知れないよ、ほんとに。俺がまさに今当事者なんですけどね?
俺の攻撃を喰らった悪魔はそれはもうたいそうお怒りじゃった〜。
「貴様がしたことは、我にとって許容の範囲を越えた。生きて帰れると思うなよ?必ず殺してやる。」
そんな恐ろしい言葉を発しながら、悪魔は俺に向けてスキルを放ってきた。
「ダークボール!!!ダークボール!!!ダークロストー!!!!!」
先ほどと同じ、スキルとともに別のスキルも放ってきた。
黒い球体とともに、俺にめがけて一直線に黒い魔力が飛んでくる。言わばコーギーのエクスカリバーみたいなもんだ。
うん、超怖い。
俺は悪魔を見習って連続でスキルを発動してみた。
「フレイム!!!ボルトッッ!!!ブリザード!!!!!」
俺は連続でスキルを発動し、なんとか悪魔のスキルを相殺した。
…あっかーん。これはあかんやつや。
いや、関西弁になってるとかそんなのどうでもいいよ、これはダメだ。あー、なんかもう意識遠のいてきたわ。こりゃダメだわ。
人ってね、普通は火傷だけでも苦しいんだよ?それが、火傷におまけで凍傷と感電、こんなの普通耐えらんないよ?いや、俺が耐えてるって?丈夫な体のおかげですから!
スキルを相殺されたことで悪魔はもう怒りを抑えなくなった。
「おのれ…人間風情が調子に乗りおって。今すぐ灰にしてやろう。ダークブラスト!!!!!」
悪魔が放ったスキル、それはまるで黒い破壊光線という以外にないものであった。
俺は悪魔のスキルを避けようと飛び退いた。しかし、少し反応が遅れたのか俺の予想よりも範囲が広かったのか悪魔のスキルが俺の右足に直撃した。
「ぐぁぁああああ!!!!」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
足が痛すぎて感覚がない。見てみると外傷はそれほど大きくなかった。丈夫な体すげーな、おい。
いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
痛みで歩けるか定かじゃない。どうすんのよ、どうすんのよ、俺。続くっ…って、言いたかったんだけどなー。
あれ、これは古いって?知らんな。
いや、ふざけてる場合じゃないのよ、これが。
考えろ、1番俺が生き残れる方法を。
俺はふと悪魔の足元に目をやる。アレだ。アレしかない。
俺は考えをまとめると悪魔に向けてスキルを放った。
「フレイム!!!」
悪魔はそれをひょいと躱す。俺は悪魔がスキルを避けたことを確認すると背を向け走り出す。
「おらぁぁあああ!!!逃げてんじゃねーぞ!!!」
悪魔は俺の思惑通り、俺を追ってきてくれている。そうだ、もっと来い!
そして俺は集中する。針の穴を通すイメージ。
足の痛みと後ろからくる悪魔を気にしながら、何とか集中を保つ。そして、
「ブリザード!」
俺は制御された初期魔法を悪魔とは全然違う方向に放つ。
「フハハハハハ!魔力切れか?それに痛みに耐えられていないのか?どこを狙っているのかわからんな」
そして俺はもう1つ制御した初期魔法を放つ。
「ボルト!」
これもまた悪魔とは程遠い場所を通過した。
「どうやらここまでのようだな。よく頑張ったものだ。褒めてやろう。だが、終わりだ!」
俺は悪魔に目の前まで迫られていた。
あー、死んじゃうなー、これは。アイツが居なかったらの話だけどね?
「どこ見てるんだよ、悪魔さん。俺の仕事はここまでだ!後は自分でなんとかしやがれ!コーギー!!!」
悪魔の背後には目を覚ましたコーギーが剣を構えて立っていた。
「ああ、任せておけ!塵一つ残さない!!!」
いやー、頑張った。俺は本当に頑張ったよ。え?自画自賛しすぎだって?でも、俺魔法使い見習いだよ?莫大な魔力はあるけど、全開でいけば痛みが伴う。俺は一般人なんだ、痛いのは嫌いだし。
その俺がここまで頑張ったんだから、後は当人たちでやってください。
てことで、後は任せようと思います。