上手く行き過ぎだと思います。
遅くなりましたが、投稿します。
邪悪な魔力を全面に押し出した自己主張の強い悪魔。コーギーに取り憑いていた悪魔とは比べ物にならないくらいに強いであろうことがすぐにわかった。
「こ、こ、こ、こ、こ、コーヘイ?これは、一体どういうことなのですか?」
「俺だって聞きたいよ!こんなヤバそうなのは想像してなかったから、かなり焦ってるよ!」
「まさか…こんなやつが現れるなんて…。」
俺とトキが焦りを顕にしている一方で、メッツが何か知っていそうな口ぶりで呟いていた。
メッツが知っていそうってことは、絶対やばい。後は騎士団に任せて逃げ去りたい。
「騎士の誇りにかけ、眼前にいる悪魔を討て!やつは魔王軍幹部、マルファスである!洗脳を得意としている、心してかかれ!!!」
おいおい、魔王軍幹部ってマジか。そりゃあんなやばそうな魔力出すわ。
国王の家に忍び込んで宗教叩き壊して、何がしたいんだよ。
俺が呆気に取られている間に、騎士団対マルファスの戦闘が開始された。
陣形を崩すことなく、マルファスを取り囲みながら攻撃する。
しかし、マルファスの実力はかなりのもので、騎士団は次々に薙払われていた。
怖すぎたろ、あいつ。俺の魔力じゃ絶対傷一つつけられないだろ、これは。反則だろ!
「コーヘイ。あの悪魔が私逹の教会を壊した張本人なのですか?」
俺が頭の中で文句を言ってると、静かに、だが確実に怒りを顕にしているトキが質問してきた。
「だろうな。国王に取り憑いて思考でも操ったんじゃないか?」
「そうですか…。」
トキはそう呟くと、マルファスに問いかけた。
「マルファスと言いましたね。貴方はなぜ、三鳥教を憎み、潰そうとしたのですか?」
「なぜ、だと?ふはははは!そんなもの、人間同士の醜い争いが面白いからに決まっておろう。それに、三鳥教はお人好し集団だ。そんな奴らが侵略行為をすれば、他の宗教の連中が慌てふためき、三鳥教を潰す。実にいいシナリオだろ?」
なんてやつだ。ここまで典型的な悪人は初めでた。コーギーのときと言い、悪魔ってのはこんなやつばっかりなのか?
「そんな理由で、三鳥教を潰したのですか。私は強くありません。ですが、貴方だけは絶対に許しません。」
「強くないものがどうやって俺を倒すのだ?俺は魔王軍幹部、地獄の皇帝マルファス様だぞ!ふはははは!!!」
マルファスは高らかに宣言する。すごい自信だな、こいつ。悪魔じゃなくても友達にはなれなさそうなやつだわ。
俺は今すぐにでも逃げ出したい。しかし、だ。俺の家族、トキがすごいやる気を出しているからそうも言っていられない。
目の前では、騎士団がマルファスと戦いを繰り広げている。数では勝っているが、力の差が違う。やばいな、これは。
仕方ない。俺もそろそろ腹を括るか。て言っても、俺のスキルは通じるのか?チョートッキューを跡形もなく消し炭にしたときほどの威力が出ないんだぞ?ミノタウロスのときも全然効かなかったし。んー…。ん?待てよ?あの時は確かに、コーギーのインフェルノの後に撃ったよな?いやいや、まさかね?そんな都合のいいことが起こるはずないよね。
でも、1回くらいなら試しても良いかもしれない。
よし、やってみよう。俺は考えをまとめ、トキに協力してもらうことにした。
「トキ、お前火か氷か雷の中級以上の魔法は使えるか?」
「え?ええ、まあ火の中級魔法なら2つほど使えますが、あの敵にそんなの効くのでしょうか?」
「使えるなら、今すぐあいつに向かって撃ってくれ!やってみたいことがあるんだ!」
「わかりました!いきますよ?フレイムボール!!!」
トキは俺の指示に従い、中級魔法のフレイムボールを撃ってくれた。
フレイムボールは名の通り、炎の球を飛ばすスキルであり、マルファス目掛けて飛んでいく。
「この程度の魔法で俺を倒せるつもりか?笑せるなよ!」
確かに、中級魔法ではマルファスを倒すことはおろか、傷つけることすらできないだろう。
しかーし、俺の予想が正しければ、油断している今なら倒すとまではいかなくても、ダメージは与えられる。はず、たぶん!よっしゃ、いっちょ行くぜー?
「フレイム!!!」
俺の放ったフレイムはトキの放ったフレイムボールを飲み込み…飲み込み…なんか、とんでもない大きさになってしまった。
あと、相変わらず全力でやったので腕がめっちゃ痛い。
「おい、ちょっと待て!そんなスキル聞いたことないぞ!え、待って、ちょっと!!!」
マルファスは俺とトキの共同スキルによって黒焦げになった。
思ったより威力でたなー。おっと、そんな感想は後にしよう。
「おのれ…人間風情が俺にダメージを与えやがって…。許さぬぞ。」
マルファスはそう言うと俺たち目掛けて突っ込んでくる。
「やばいやばいやばい。ブリザード!!!」
俺は焦ってトキとの共同ではなく、1人で全力の初級魔法を放った。
俺のブリザードをマルファスは全力で回避する。
「初級魔法とて侮らんぞ。…しかし、お前、本当にそれは初級魔法なのか?」
まあ、マルファスがそういうのも無理はない。俺の初級魔法は中級魔法並の威力なのだから。
まあ、初級魔法しか使えないからそれ以上はないんだけどね?
でも困ったな。俺にはこれ以上がない。
俺がとても困っているとメッツの声が響き渡った。
「あの者達を全力で援護しろ!騎士団の誇りにかけて、あの者達を守ることに集中せよ!」
メッツさん、最初はコノヤローとか思ってすみませんでした。
でもどうする?さっきみたいな全体攻撃だと、また黒焦げになって終わる。
「トキ、フレイムボール以外の魔法って、どんなやつなんだ?」
「もう1つはブリザードアローと言って、氷の弓矢を放つものですよ。私にはそれしか使えないので。」
なるほどなるほど。氷の弓矢か。それなら確実に当てられればいけそうだ。
幸い、メッツを初めとした騎士団の人は俺たちを守ってくれる。
よし、こうなったら頼むしかない。
俺は意を決してメッツに協力を求めた。
「メッツさん、何かバカでかいスキルをマルファスに撃ってください!」
「俺に指示を出すか。面白い、やってやろう。今は貴様らの攻撃が肝だ。」
そう言うとメッツは魔力を剣に込め、マルファス目掛けて振り抜いた。
「我が雷の剣戟、受けてみよ!穿て。スパークル!!!」
振り抜かれた剣からは雷の斬撃が飛び出し、マルファス目掛けて一直線に突き進んだ。
「ぐわぁぁああ!おの…れ、人間がぁぁああ!」
「トキ!今だ!」
「ブリザードアロー!!!」
この好機を逃したら絶対勝てない。メッツが作ってくれたんだから、やるしかない。
「ブリザード!!!」
ああ、ちくしょう。腕が痛すぎるわ。
俺が痛みを堪えて放ったブリザードはトキが放った氷の矢を包み込み、巨大な大きな矢を作り出した。
え?ちょっとでかすぎない?これ、城も破壊しちゃうんじゃないか?ま、いっか。
そして俺とトキの共同技は勢いを増したまま、マルファスを貫き、そのまま城の一角を吹き飛ばした。
「おの…れ。貴様はやがて魔王様に撃ち滅ぼされるであろう。それ…まで…精々余生を楽しむがよ…い。」
最後に不気味な言葉を残したマルファスは跡形もなく、消え去った。
魔王軍幹部を2人も撃破してしまった俺は、ちょっとした不安残したのだが、事なきを得た。
でもなんと言うか、上手く行き過ぎだと思います。




