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無宗教だと思います。


マタタビ3世を殴りまくった後、気絶した俺は2人からあの後のことを聞いた。

何でも、近衛兵の1人にチョコのところに属している人が紛れていたらしく、ことの経緯をしっかりと説明してくれて、マタタビ3世は牢獄行き、俺たちはマタタビ3世の悪事を暴いたことでお咎めどころか賞与されることになるそうで、また通達が来たら今度はキャルピスの国王の元へ行かなければならないそうであった。

国王とか、絶対面倒じゃん。あー、行きたくねー。

「別に賞与されることをしてないし、行かなくてもいいんじゃないか?」

「何を言っているのだ。国王様からの通達に背けば、それこそ全員反逆罪で牢獄に入れられることになるぞ?」

コーギーの言葉を聞き、俺は賞与を受けることを決めた。

だって、いい事したのに牢獄とか絶対嫌だし。

「まあまあ、貰えるものは貰っておいて損はないっスよ!」

何故か少し照れ臭そうにしているミケが俺に念押ししてくる。


俺は鈍感じゃない。かといって自意識過剰でもない。

そう、俺はミケを助けた。しかし、ミケが俺に惚れてるなんて考えられるほど俺は自分に自信があるわけじゃない。

ならば、だ。何も考えずに生活すれば良い。


こうして俺たちは前のような平凡な日々を送っていた。



ー1週間後ー


俺はコーギーと買い出しに来ていた。そして、久しぶりにジョージアの前を通りかかったので、デスクに挨拶でもしようと中に入った。


カランカラン


「お久しぶりでーす!」

俺が声高々に挨拶しながら中に入るとデスクが気前よく出迎えて…くれませんでした、はい。

中に入るとデスクと長い金髪を靡かせている少女が口論していた。


おっと、2度目は聞いてないぞ?これはコーギーのときの再来じゃないか?

いやいや、全力で回避したいんだけど、これ。


「おう、あんちゃん!良いところに来てくれた!」

俺がそんなことを考えているとデスクに声をかけられた。

全然良いところじゃないんですけど?

デスクの声につられ、口論していた女性がこちらを向いた。

うわー、すげー美人だな、この人。

金髪の長い髪、パッチリとした大きい目に赤い瞳、160cmくらいの身長で出るところは出て、しまるところはしまっている。俺が教員をしているときに何度かみたモデルをやっているような子にも負けないスタイルの良さだった。


金髪の女性はよく見ると神官服を身にまとっていた。無宗教で異世界の宗教に無知な俺でもそのくらいわかる服装だった。

「えーっと、はじめまして。俺はコーヘイ、魔法使い見習いをしてます。こっちはコーギー。よろしくお願いします。」

俺はとりあえず挨拶をした。どんな人でどんな悩みがあるかは知らないけど、礼儀として。

断じて美人だからではない。美人だからではない。

大切なことだから2回言う。


「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。(わたくし)の名前はトキと申します。職業は神官、回復系のスキルには自信があります。」


今度こそ、本当にまともな名前だ。

トキ、なんて普通の名前なんだ。

トキ…トキ…。鳥じゃねぇか。あー、もう!やっぱりか!犬、猫ときて鳥か!


「それで、どうして言い争っていたんですか?」

「実は(わたくし)の仕えていた教会が廃れ、潰れてしまいまして。今日泊まる場所もないんですよ。」


ふむ。家がない美少女の前に、自宅を持って部屋を持て余している人間がいる。


「トキさんは、今日もし泊まるところが見つかったとして、その後はどうするんですか?」


「それは神の思し召しに従うのみです。」


要するに行く宛てがないのね。

回復系が得意…てことは、俺がスキルを全開で放った後の痛みも治してくれるのかな?よし、ものは試しだ。

「トキさん、ちょっとお願いがあるんですけど、いいですか?」

「何でしょう?(わたくし)にできることならば何でも致しますが。」

「俺、スキルを放ったら猛烈な痛みに襲われるんですけど、どのくらい治せるのか見せてもらってもいいですか?お代は1エメマンでどうでしょう?」

「神官がそのようなことでお金をいただくとでも?」

おお、流石神に仕える身、しっかりしているなー。と俺は感心したのだが、、、

「コーヘイ、こいつ言葉と行動が一致していないぞ。」

「だな。俺もあの言葉を聞いたあと何故こんなにがっしりと握手しているのかわからないよ。」

トキは早くしようと言わんばかりに俺の手を握り、引っ張っていた。

「あんちゃんも隅に置けないねー。」

と、店を出る際デスクに言われたのがやたらと腹立たしかった。


ここで練習がてらスキルを放ってやろうか、この野郎。



場所を移した俺たちは、早速実験に取りかかった。

実験と言っても、俺がスキルを放ってトキがどのくらい治せるのかの実験だ。

コーギーも回復系のスキルは使えるし、何度も治してもらっているから、いざとなればコーギーに頼めばいい。

よし、やるぜ。

俺は空に向けて手を向け、思いっきりスキルを放った。


「ブリザード!!!」


誰も居ないとはいえ、万が一のことがある。だから、炎でも雷でも光でもなく1番何かあっても大丈夫そうな氷魔法を選んだ。


あー、めっちゃ痛い。慣れることのない痛みとともにスキルを放ち終えた俺はさっそくトキに癒してもらった。


「外傷はありませんが、本当に痛いのでしょうか。」

「はい、めっちゃ痛いんで早く癒してください。」

「わ、わかりました。ネオ・ヒール!!!」

トキは俺の右手に両手を翳しながら、中級魔法であろう回復系魔法を唱えた。

するとなんということでしょう。あんなに痛かった俺の右手がみるみると癒えていきます。

うん、これはまさに劇的ビフォー…おっと、これ以上は語るまい。


とにもかくにも、トキの回復系魔法は本物だ。元々戦闘型のコーギーやミケより遥かにすごい回復系魔法だ。

「おお!すごいですね!採用!」

「癒えたようで何よりで…へ?採用?なんのお話ですか?」

「はい!その回復魔法があれば俺がどれだけスキルを使ってもすぐ治してもらえるでしょうし、トキさんは家がないんでしょ?俺の家にちょうど空き部屋があるんですけど、掃除・洗濯当番と買い出し当番さえしてくれれば家賃無料、食費ゼロ、これで暮らせるんですけどどうします…」

俺が全てを言い終える前に、トキはまた握手しながら、

「お願いします!」

と頭を下げながら言ってきた。


路頭に迷っていた元神官のトキが俺たちの家族になった瞬間である。


ちょろいな、元神官。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺たちは買い物をしっかりと済ませ、コーギーとトキと一緒に邸に帰った。


家に帰る途中、俺とコーギーは敬語を外すこと、それに名前をお互い呼び捨てにすることを話した。

まあ、これから一緒に暮らすんだし、変な気遣いは要らないだろう。


トキ自身の敬語は癖のようなものらしく、そこを否定するつもりもないので承諾した。

それもトキの個性だ、そこは尊重したい。


「ずいぶんと遅くなったな。今から料理を作るのは骨が折れる。」

「いやー、それに関しては本当に申し訳ない。」

「料理ですか?簡単なものなら(わたくし)もできますよ?」


おっと、これは良い情報を手に入れた。

トキは料理ができるのか。コーギーとどちらが美味いかわからないけど、助かるわー。


中に入るとミケが大きな声で出迎えてくれた。


「おかえりなさいっスー!えらく遅かったっスね、コーヘイ、コーギー!…と、誰っスか?」


ミケは俺たちと一緒にいたトキを見て、疑問符を浮かべていた。まあ、当然の反応だよな。

買い出しに行ったはずの俺たちが知らない人を連れてきたんだもん。俺だって驚くよ。


「はじめまして!この度この邸でお世話になることになりました、トキと申します。よろしくお願いします。」


トキの丁寧な挨拶にミケもしっかりと挨拶を返した。俺がトキを案内している間にコーギーがミケに説明してくれたのか、夜ご飯を食べるときにはすっかり打ち解けていた。


「いやー、最初は驚いたっスよ!まさか、新しい家族が増えるなんて思わなかったっスから!」

「本当に、コーヘイはそういうところがあるな。」

(わたくし)も最初言われたときは驚きましたよー!」


さっそくコーギーやミケと打ち解けたトキは笑顔で話していた。うん、美人が3人。素晴らしすぎるな、これは。


そう言えば、この世界にも神を信仰する宗教みたいなものがあるのを知ったが、どんなものがあるんだろうか。


「なあ、トキ。ここにはどんな宗教があるんだ?」


俺の問にトキはおろかコーギーやミケさえも驚愕の表情をしていた。

え?俺の住んでた世界じゃ無宗教は普通だったけど、この世界は違うのか?


「お金のこともだが、まさか宗派も知らないとは驚いたぞ。」

でしょうね、コーギーさん。顔に出てましたよ。

「私でも知ってるっスよ?本当に知らないとは…。」

ええ、知りませんとも。俺この世界出身じゃないものですから?

「コホン。ええっとですね、コーヘイ。この世界には4つの宗派があります。まず有名なのが光矢教と麒麟教、女神サイダーとレモンを祀っている宗派です。そして、そこに負けず劣らずなのが大束教、女神マッチを祀っています。」


三ツ矢サイダーにキリンレモン、おまけにマッチって…。国の名前がキャルピスだったり、通貨がワンダやエメマンだったり、宿屋や料理屋がボスやジョージアだったり、本当に盛りだくさんだな、この世界は。


「んで、トキが信仰していたのはどれなんだ?あと、もう1つ出てない宗派があるみたいだけど?」


(わたくし)が信仰していたのは、女神ダカラを信仰する、三鳥教です。」


うわ、懐かしいのきたな。サントリーのDAKARA、そう言えば日本で若い頃はよく飲んでたけど、だんだん見なくなったな。あー、あかん。これ、飲みたくなってくるやつですわ。


おっと、変な関西弁になってしまった。悪気はないんです、すんません。


「女神サイダーは激しい力の象徴とされていて、侵略の神とも呼ばれております。女神レモンは攻められれば交戦する、言わば反発の神と呼ばれており、女神マッチは耐久のする力の象徴とされていて、守護の神と呼ばれています。そして、女神ダカラは助けの象徴とされていて、癒しの神と呼ばれています。」


まあ、炭酸飲料が戦闘系の象徴で、スポーツドリンクが癒しって聞くと納得もできるっちゃできる。

あんまりしたくないけど。


「そうなのか。ちなみに、キャルピスは主にどれを信仰してるんだ?教会があるところを見ると三鳥教なのか?」


「はい!キャルピスは三鳥教をーー。」

「いいや、キャルピスは主に大束教を信仰している。元騎士団の私が言うのだ、間違いない。」


トキの話を遮り、コーギーが真実を教えてくれた。俺はコーギーの言葉を聞いた後、無言でトキを見たが、フイっとそっぽを向いていた。


自分が信仰している宗派にあわよくば入ってもらおうとしやがったな、こいつ。


一通りの話を聞いたが俺はやっぱり、無宗教が1番だと思います。


どんなものかも詳しくわからない以上、仕方ないよね、これは。


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