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許せないと思います。


事情を説明するために、俺たちは再びチョコの家へと来ていた。

「というわけなんですよ。難しいかもしれませんが、もし万が一のことがあったら、その時はお願いしたいと思いまして。」

「なるほどなるほど。本来ならば、協力することはできないと突っぱねていたけれど、お売りした邸を確認しなかったのは我々のミスだからね。うん、公には協力できないけれど、万が一のことがあったら任せてもらっていいよ。」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

これは心強い。目には目を、貴族には貴族をだ。


これで一通りの準備は整った。

「よし、それじゃコーギー。準備もできたしマタタビ3世のところに乗り込むか!」

「ああ!やってやろう!」


今に見とけよ?マタタビなんてふざけた名前しやがって。貴族がなんだってんだ。この世界の常識なんて俺には関係ない。

ぶっ潰してやる!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺たちはマタタビ3世の邸まで到着した。デカい。流石貴族の家だ。チョコの家は少し控えめだったが、貴族だしこんなもんだろう。

俺は感想も程々にし、呼び鈴を鳴らした。

「すみませーん。ちょっといいですかー?」

俺の声に仰々しい近衛兵たちが門の中から現れた。

おっと、これはこれは、完全に敵対心むき出しですわ。

普通に俺一人でミケのことがなかったら、これはチビっちゃうレベルだな、うん。

でも、今はミケのことがある。それにコーギーもいる。

「貴様ら何の用だ?平民風情が誰の断りを得てここに来ている?」

明らかな上から目線の近衛兵。モンスターペアレントみたいだな、こいつら。

「あのー、ここに連行されたミケさんを引取りに来ましたー。」

俺はなんの悪びれもせず目的をきちんと教えてあげた。

「愚民が!この場で打ち首にしてやる!」

俺の言葉に怒りを顕にした近衛兵が問答無用で剣を抜き、俺たちに斬りかかってきた。

いーやー。怖すぎるー。なーんてね。

「はぁ。コーギーさん、やっちゃってください。」

「任せろ。すぐに通れるようにしてやろう。」

ものすごく頼もしいコーギーの後ろに俺は控え、コーギーVS近衛兵の戦いを見守った。

結果はもうお察しの通りですわ。

コーギーは1人目の剣を受け止め、左手で殴り気絶させると、2人目、3人目は受け止めるのも煩わしくなったのか、思い切り剣を振り抜き、相手の剣諸共薙ぎ払った。

4人目以降はもうあんまり見えなかった。ただ、1分ほどしたあと、その場に立っていたのはコーギーだけであった。

「準備運動にもならなかったな。」

コーギーのかっこいい決めゼリフに俺はときめきそうになっていた。やばい、かっこよすぎる。


てか、コーギーって本当に強すぎないか?

まあ、今はどうでもいいか。

近衛兵を倒した俺たちは扉の中に入り、マタタビ3世の部屋を探していた。

ん?お前何もしてないじゃん!だって?いやいや、俺たち仲間だから。


邸の中を走り回っているとまたわらわらと近衛兵たちが湧いてくる。それをコーギーが一蹴する。

「どぉぉおけぇぇぇええええ!!!!」

貴族を守る近衛兵は強いはずなのに、コーギーはその貴族たちより圧倒的に強かった。

スキルも使ってないのにこれとか、絶対怒らせないようにしよう。俺は心の中で決意を固めた。


コーギーのお陰もあり、俺たちは瞬く間に最奥の部屋まで辿り着いた。

「さてと、簡単に行けばいいんだけどね。」

多分そうはいかないのはわかっていた。

「案ずるな。どんなに強い敵が現れても、私がなんとかしてやるさ。」

頼もしいな、本当に。コーギーが居てくれてよかったよ。俺一人じゃ、助けたいとは思っても行動できなかっただろうな。

コーギーと俺は互いに頷き合い、部屋の扉を勢いよく開けた。

「な、何者じゃ!?」

扉を開けた俺たちに高そうな服に身をまとい、いかにも貴族というような髪型をした小太りの小さい男が問いかけてきた。

うわー、見るからに小物貴族って感じだな。まあ、小物貴族を見たことはないんだけどね?雰囲気でもうなんかわかるよ。

2人の近衛兵を傍につけ、ふんぞり返って座っていたその男が自ら名を名乗ってくれた。

「吾輩はマタタビ3世であるぞ?なんの用があってここに来たのじゃ!?」

「ミケを取り返しに来ました。」

「な、何を言っておる!ミケは吾輩の奴隷じゃ!」

マタタビ3世はそういうと持っていた鎖をぐいっと手繰り寄せた。

鎖の先にはミケが繋がれており、手繰り寄せられるとともに、マタタビ3世の近くに現れた。

「ミケ!無事だったんだな!助けに来たぞ!」

俺の言葉にミケは少し躊躇いながら答える。

「わ、私はマタタビ3世の奴隷っス。助けに来てほしいなんて頼んでもないっス。帰ってくださいっス。」

弱々しい声で答えるミケ。2ヶ月も一緒に暮らしてきたんだ、それが本心でないことくらいすぐにわかる。

「ほ、ほれ!この奴隷もそう言っておる。平民風情が吾輩に楯突いたこと、今なら見過ごしてやっても良い。今すぐに立ち去るのじゃ!さもなければどうなるか、わかっておるな?」

マタタビ3世は自信満々に俺たちにそう告げてきた。

ふーん。平民風情が、ねー?なるほど?そう来るならこっちにも考えがあるよ?

俺は大きなため息をついた。そして大声で言った。

「貴族だろうが国王だろうが魔王だろうが関係あるか!俺にこの世界の常識は通じないんだよ!!!」

俺の言葉にミケは泣きそうになりながらこちらを見ていた。

そして、マタタビ3世は怒りを顕にしていた。

マタタビ3世の傍に控えていた近衛兵2人はおもむろに剣を抜き、戦闘態勢に入る。

「平民風情が吾輩を怒らせおって。もう許さぬ。奴隷になるために生まれたこの娘のために何故そこまでするのじゃ?貴族に使われ、慰みものにされ、この一族は途絶えることなく生きてきた。誰が父親かもわからぬこの娘も、誰の子かもわからぬ子を産み、ネッコーカ一族を繁栄させていく。貴様らにこんな都合の良い奴隷を渡してたまるか。」

マタタビ3世の言葉に俺は自分の感情がわからなくなった。考えることをやめたとかそんなんじゃない。ただ、怒りが込み上げ、口をついて出た言葉、恐らく本心だろう言葉が出た。

「お前、殺すぞ?」

長らく教師をしてきた。だからこの言葉は絶対口にしないようにしていた。だけど、こいつだけは、絶対に許しちゃいけないと思った。

俺はただ、怒りに任せてスキルを放った。

「フレイム!!!」

俺が放ったフレイムは初期魔法とは到底思えない業火を作り出し、マタタビ3世目掛けて飛んでいった。

「ひぃぃ。おい、貴様ら、吾輩を守れ!」

マタタビ3世の号令で近衛兵たちが立ちはだかった。

なんて奴らだ。あんなクソ野郎を守るために命をかけるなんて、それほど貴族が偉いのか。

「コーヘイ、近衛兵の相手は私に任せてミケのところに行ってやれ。」

コーギーが俺にそう告げるとこれまで見たことないような表情をしていた。綺麗な顔が台無しになるくらい苛立ちを顕にしている。


俺がやるよりも早く終わるだろうし、大人しく任せよう。

「頼んだ!無駄な心配だろうけど、負けるなよ?」

「フフっ。安心しろ。油断など微塵もない。ミケを助けよう。」

コーギーの表情が少し緩み、いつもの綺麗な顔に戻ったいた。俺も人のこと言えないような顔をしていたのかな?

コーギーの表情を見て、俺は大きく深呼吸した。

大丈夫、家を手に入れてからの2ヶ月、何もずっとダラダラしていたわけじゃない。

新しいスキルも2つほど手に入れた。

「覚悟しろよ、マタタビ!」

俺はそう言うとクラウチングスタートの構えをした。

「うぉぉおおおおお!!!!!!」

程なく、俺はスタートを切り、全速力でマタタビ3世めがけて突っ込んだ。

近衛兵の1人が俺の前に立ちはだかったが関係ない。鎧を着用した近衛兵。これは電気がよく通ってくれそうだ。

「ボルト!!!」

俺は思い切りボルトを放ち、近衛兵を気絶させた。

今ので気絶程度か。鎧を着ていたからだろうけど、やっぱり俺って弱いのな。まあ、今は落ち込んでいても仕方ないな。

俺は勢いそのままマタタビ3世の目の前に飛び出し右手の拳を振りかぶった。

「ひぃいい。」

マタタビ3世は俺に殴られることを恐れ目を逸らす。

だが、思っていたより殴られないことに目をこちらに向けた。

かかった。俺の弱っちい力で殴ったところでそれほどのダメージにはならない。

だから、こうするために拳を振りかぶったんだよ。

「フラーッシュ!!!」

俺は自分の目元を左手で覆いながら、振りかぶっていた右手を前に突き出し、スキルを発動させた。

このスキルは俺が2ヶ月の間に何故かスキルポイントで取得できるようになっていたものだ。

まさか、魔法使い見習いはたくさん同じ魔法を見たら適性とかなくても取得できるのかな?

いやいや、まさかね。そうだったらいいね的なあれだからね。


俺のフラッシュをまともにくらったマタタビ3世はその場に転がった。

「うわぁぁあああ!!!目が見えぬ!!」

華麗な目潰しを決めた俺はミケに繋がっていた鎖ごと抱え、コーギーの近くに向かった。

コーギーはというと、近衛兵をすぐさま倒して俺の様子を見守っていた。

「やるではないか、コーヘイ。私も不意を付かれたぞ。」

褒めているのか貶しているのかわからない褒め言葉を俺に投げかけてくるコーギー。

今は気にしないことにしよう。うん、そうしよう。

「よし、目的も達成したし、このまま逃げるぞ!」

俺がそう2人に言う。ミケは泣きそうになりながら頷いた。しかし、コーギーは違った。

何かを警戒している様子であった。

「おのれぇ!おのれぇぇええ!!!許さぬぞ。ミノタウロース!!!!こいつらを殺せぇ!!報酬はいつもの倍払おう!」


マタタビ3世の言葉とともに、邪悪なオーラが現れ、そこからミノタウロスが飛び出してきた。

「今の言葉、忘れるなよ。」

ミノタウロス。巨大な棍棒を持った牛。と言っていいのかわからないけど、とりあえず牛みたいな化け物。

「なんちゅうもん呼んでんだよ!てか、どういう関係だよ!」

俺は思わず突っ込んでしまった。

「まさか、ミノタウロスがここにいるとは。」

「おい、コーギー!やっぱり相当やばいのか?」

「やばいなんてもんじゃない。ミノタウロスは魔王軍幹部だ。普段はこんなところにいるやつじゃないが、今の言葉からするに、マタタビ3世が金で雇っているのだろう。」


なんてはた迷惑なやつだよ、マタタビ3世は!


やっぱり、マタタビ3世は許せないと思います。

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