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面倒ごとが降ってきたと思います。


新しい家でコーギーとミケとの生活が始まってから2ヶ月が過ぎた頃、事件はいきなり起こった。

「門を開けろ!この家は完全に包囲されている!抵抗するなら容赦はしない!」

騒がしい音がしたあと、突然そんな声が響き渡った。

おいおい、俺たちは何にもしてないぞ?まったく、どこの誰と間違えてんだよ、こいつら。

俺は重たい足取りで家の外に出た。するとそこには多くの近衛兵が武装した状態で俺たちの家を囲っていた。

「あのー、私たちがなにかしましたでしょうか?まったく身に覚えがないんですが?」


俺の質問に近衛兵は何やら紙を取り出しながら告げてくる。

「この家に住んでいるミケ・ネッコーカという者への通達だ。彼女はこの街の貴族、マタタビ3世の奴隷であり、逃げ出したために探していたのだが、この家に出入りしているという噂を聞いたのだ。」


ミケ・ネッコーカて、確かに俺の住んでいた世界では三毛猫はネコ科だけど、安直な名前だな。久しぶりにびっくりしたよ、まったく。

それにマタタビ3世て、これは笑いを堪えるのが大変すぎだよ?なんとか耐えたけどね?俺、褒められてもいいくらいじゃね?


…ん?奴隷?って言ったか?ミケが?貴族の?

いやいや、まさかねー?有り得ないでしょ。

2ヶ月前に俺が家を買ったときにこの家に1人で勝手に暮らしていて、前はどこにいたのか聞いた時少しビクッとしていただけで他は別に怪しいこともなく…。

思いっきりあやしすぎるやんけーー!!!!

でも、奴隷と聞かされては流石に黙っちゃいられない。ここはビシッと言って追い返して…

やろうと思った矢先、家の中から騒ぎを聞いたコーギーとミケが出てきてしまった。

「ん?奴がいたぞ!」

1人の近衛兵の言葉にみながミケに注目する。

「おい!貴様ら、よってたかってどういうつもりだ?」

ミケに詰め寄った兵士たちの前に剣を構えたコーギーが立ちはだかりながら、問う。

コーギーを前にした近衛兵たちは少し怖気付いた様子であった。だが、1人の兵士がコーギーに言葉をかける。

「コーギーさん、貴女にはお世話になりました。しかし、それとこれとは話が別です。それに、貴女はもう兵士でもなんでもない。我々は法を盾にしてでもその女を捕らえるつもりです。」

「ほう?やれるものならやってみるがいい。元国衛騎士団団長、コーギーが貴様らを葬る者の名だ。覚えておけ。」

コーギーは捨て台詞を吐いた瞬間、1番近くに居た近衛兵に斬りかかった。

「待ってくださいっス!コーギー、その人達には手を出さないでくださいっス!自分のしたことでコーヘイやコーギーを罪人にしたくないっスよ。だから、お願いっス!」

1人の近衛兵の鼻先でコーギーの剣は止まった。

完全に殺す気だったな、あいつ。ミケが居てよかったよ。俺、死体とか見たくないもん。

いや、普通そうだよね?血とか俺、嫌いだし。

おっといかんいかん。そんなことを考えている場合ではない。


「コーヘイ、コーギー、黙っていてごめんなさいっス。私は先祖代々貴族様に仕える奴隷の1家の生まれっス。メイドに雑用、慰みもの、私たちネッコーカ一族はそれらをするためだけに生まれてくることを許された身っス。だから、元いた場所に戻るっスね。2人と生活した2ヶ月、短かったっスけど、すごく楽しかったっス。でも…。でもこれでさようならっス。」


優しい笑みを浮かべたミケは自ら近衛兵の方へと歩を進め、やがて連行された。

最後に少しこちらを振り向き、口パクでありがとう。と告げ、近衛兵と共に消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ミケが近衛兵に連行された後、俺たちは一言も言葉を交わすことなく、ただぼーっと考え込んでいた。

どうしたもんかねー。明らかに空気重いし。いや、俺だって助けたいよ?でも、貴族相手じゃどうにもならないじゃん?お金はあるけど、いくらって言われるかわかんないし、1度払っちゃうと何かする度にいちゃもんつけて要求されそうだし。

奴隷か…。俺にはまったく馴染みのない制度。そしてそのためだけに生まれてくるネッコーカ一族。

んー…。ダメだ、考えれば考えるほど変な方向に行ってしまいそうだ。よし、ここは1つコーギーに聞いてみよう。あれ以来会話がないし、ちょうどいいだろう。


「なあ、コーギー?俺がもし変なことを言ったら指摘してくれるか?」

「なんだ?ミケを助けるために貴族の家に乗り込むのか?」

俺はミケの言葉にギョッとした。

え?俺、まだ何も言ってないよな?なんでわかったんだ、こいつ?

狼狽えている俺を見たコーギーはクスッと笑いながら続けた。

「見ず知らずの私を救ってくれたコーヘイのことだ。2ヶ月も一緒に過ごした仲間を放っておくわけがないだろう?」

おっと、どうやらコーギーは俺のことをよく知っていた見たいだ。

そう、俺は偽善者だ。教師なんて大抵そんなもんだ。

でも、だからって文句を言いながらも生徒のために動かない教師はいない。

「コーギー、俺の好きな言葉にやらない善よりやる偽善って言葉があるんだけど。俺は偽善者だからさ、みんなに憧れられるようなことはできないかもしれない。けど、目の前で困っている人が居たら助ける。それが俺のやり方だ。それに、貴族のしきたりやこの世界の決まりなんて俺には関係ない。」

俺が真剣な眼差しでコーギーが見ながら話すと、コーギーもじっとこちらを見たまま頷いてくれた。

「ミケを助けたい。でも、俺一人じゃ近衛兵にも勝てない。だから、コーギー。俺と一緒に来てほしい。」

「もちろんだ。ミケのことは助けたい。それに、私たちは仲間だ。一緒に行かないわけがないではないか。」


俺とコーギーは立ち上がり、早速準備を整え街に向かった。

貴族の家じゃないのか?だって?いやいや、まずは情報を得ないと。


街で情報を集めていると面白いようにマタタビ3世の黒い噂がたくさん流れていた。

1番気になったのは、マタタビ3世と言い争ったことのある貴族がここ何ヶ月かで変死していることだ。

うーん…。これがマタタビ3世の仕業なんて虫のいい話なんてないよなー。

濡れ衣を着せるなんてできないし、どうしたものか。俺が悩んでいたら別行動していたコーギーが嬉しそうに走ってきた。

「コーヘイ!良い情報があったぞ。」

「マタタビ3世の悪事でも暴けたのか?ま、そんなわけないか。」

「確かに、悪事までは暴けてはいないが、変死した貴族が死ぬ直前にマタタビ3世とトラブルを起こしていたらしい。」

おっと、これはこれはなんとも都合のよろしいことで。

ていうかもうこれは完全に黒でしょ。これを罪状に乗り込むしかないな。

俺たちは嬉々としていた。

「でかした、コーギー!」

「これで乗り込めるな!」

「ああ。けど、その前に、チョコさんのところに行こう。何かあったときに貴族を味方に付けておくと心強い。」

俺の意見にコーギーも賛同してくれた。

あの人ならきっと大丈夫だろう。


本当に、面倒ごとが降ってきたと思います。

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