コーギーさんが居てよかったと思います。
邸には、台所を含め大きな部屋が8つあった。1つを共通の荷物置きに、1つを居間に、そして1人に1部屋ずつ分配した。そして、買い出しや洗濯なども当番で行うことにした。
ちなみに、
洗濯当番
1、コーヘイ
2、コーギー
3、ミケ
買い出し当番
1、コーヘイ、コーギー
2、コーヘイ、ミケ
3、コーギー、ミケ
ということにした。ん?俺が1人で洗濯すれば女性陣のも洗うことになるって?いやいや、そこはほら、気にしちゃダメだよ?
こうして当番を決めた俺たちの新しい家での生活が始まった。美少女2人に囲まれて生活…最高かよっ!!!と、俺は心の中で思っていた。
昼間はコーギーに魔力制御を、ミケに生活向きの魔法をそれぞれ教わり、夕方に買い出し、夜はお酒を飲みながら談笑する。はずだったんだけどね?うん。夕方までは上手くいったよ?けどね?この家、明かりがない。
コーギーに聞いてみると、本来明かりは蝋燭に火を灯して確保するそうであった。
平安時代かよっ!!!
そう言えば、ボスもジョージアも蝋燭だったな。雰囲気が出るからとばかり思っていたけど、そういうことか。
やってしまった…どうしよ…誰か助けてくれ。
「フラッシュ!」
「え?これは…明かり?」
「そうっスよ!本来このスキルはちょっとした目くらましなんスけど、ある程度の魔力をこめて、形を維持するようにすればその場に留まってくれるっス!」
ミケが何事も無かったかのように魔法を唱え、灯りが辺りを照らしている。なるほど、ミケがこの家で夜どんなふうに過ごしていたのかがわかった気がする。
ん?待てよ?これってつまりあれだろ?魔力が多ければ多いほど消えないんだよな?
俺はすぐ様冒険者カードを取り出した。が、フラッシュはなかった。ふむ。やはり甘くない。
あー、くそー。いいアイデアだと思ったのに。人生やっぱり甘くない。
俺が肩を落としているとコーギーが横から俺の冒険者カードを覗いてきた。
「ふむ。ん?なんだ、ミラーがあるじゃないか。ミラーでミケのフラッシュを写し、その時にコーヘイ自身の魔力を少しばかり混ぜれば長時間持続するんじゃないか?」
コーギーの言葉にミケはなるほどと手を打つ。
あれ?このスキルの取得するつもりなかったけど、ひょっとしてかなり使えるスキルなのか?
俺は言われるがまま、ミラーを取得し、早速練習した。
ミケが作り出したフラッシュを俺は一心不乱に反射させまくった。最初は形がバラバラだったのだが、1度だけ制御を誤り全開に近い力で発動させてしまった。
え?どうせ痛みが伴うんだろ?だって?残念でした。ミラーは全然痛くありませんでしたー。
そう、悲しいことにミラーだけは全力で発動させても全然痛くなかった。むしろ制御していたときはバラバラだったフラッシュもミケの数倍の大きさで綺麗な形を保ったまま反射させることができた。とても嬉しい。
うん、嬉しい…んですけどね?何でこれなの?いや、めちゃくちゃ生活向きの魔法だよ?でもさ、やっぱり火とか氷とか雷のどれかがさ?痛くなかったらとか考えちゃうじゃん?
兎にも角にも、俺は無事ミケのフラッシュを反射させることに成功した。やっぱり明かりはいいよね。うん。
灯りを確保した俺たちは早速晩御飯の支度に取りかかった。
「…俺、料理できないんだけど?誰かできる?」
「私も料理は苦手っスね…。」
俺とミケがそう言うと、コーギーは呆れたようにため息をついた。
「はぁ。コーヘイ、料理もできないのにこんな丘の上の家を買ったのか?それに、ミケもよく1人で暮らせていたな。私がやるから2人は居間にでも行って寛いでいろ。」
コーギーさん、貴方様がいてくださってよかったでございます。
俺は心の中でコーギーに何度も何度もお礼を述べた。
コーギーに言われ、居間でゴロゴロとしていた俺はミケにある質問をした。
「ミケ、お前ここに住む前はどこにいたんだ??」
俺の問いかけに少しビクッとしたミケは少しだけ汗を滲ませながら答えてくれた。
「わ、私はこう見えてもすごい魔法使いっスからね!元々は貴族に雇われてたっスよ!」
貴族に雇われる。それはこの世界においては誇らしいことなのに、何故か動揺しているのが引っかかった。
が、コーギーの
「晩御飯、できだそー!ちょっと取りに来てくれー!」
という声に俺の心は奪われ、すぐ様料理を取りに向かった。
晩御飯を食べつつ、お酒を嗜み、俺たちはいい気分のなか片付けもほどほどにそれぞれの部屋で就寝した。
いやー、ほんとコーギーさんが居てよかったと思います。
俺はこの時、まさかあんなことになるなんて思いもしなかった。