邸はいいものだと思います。
コーギーの膝枕でゆっくり休んだ俺は夜になる前に宿屋に帰っていた。
「そう言えば、俺昨日は疲れて寝たから朝入ろうと思ってたけど風呂はいってないじゃん。入ろ。」
にしても、俺が休んでいるときに魔物が来なかったのはどうしてなんだろ?コーギーと悪魔がとんでもない魔力を放っていて他の魔物が逃げたとかかな?
何はともあれ、無事、生き残れてよかったー。
一時はどうなるかと思ったよ、ほんと。
俺はそう考えながら、風呂に行った。
…夢を見ていたみたいです。またやってしまった。流石に連続で風呂に入っていないのは辛い。よし、今度こそ入ろう。
俺はそう決心して風呂に向かった。
「だっはァァァァァ!いい湯だな〜。」
ん?誰かと入っていたり、間違えて女湯だったり、そんなことはないよ?
俺はちゃんと健全にお風呂に入っているだけだからね?
そう言えば、死ぬ直前から入っていないと考えると5日ぶりくらいかな?いやー、風呂最高だよ。
俺は風呂に入って気分の良いまま、受付へと来ていた。
受付にはデスクとコーギーがいた。
「コーヘイ、お風呂に入っていたのか?」
俺の姿を見たコーギーが問いかけてきた。多分、俺の髪の毛が濡れているのを見てだろう。
「昨日入るつもりが疲れて寝ちゃったからね。さっぱりしたよ。」
俺たちは他愛もない話をして、ダラーっと過ごしていた。
そして、俺はふと思い出し、デスクに問いかけた。
「そう言えば俺、家を買いたいんですけど、どこに行けばいいですか?」
「あんちゃん、家を買うのかい?それなら、この街の住居担当貴族のところへ行くといい。貴族なのに民のことを1番に考えるってんで人気のある人だよ。名前はーーー」
俺はデスクにその人が住んでいる場所と名前を聞き、支度を整えて向かった。
何故かコーギーも着いてきたが、道がわからないのでありがたい。
「どんな家があるのか楽しみだな。」
「だねー。俺的にはちょっと大きめの家でまったり過ごしたいから、奮発はするつもりだよ。」
そんなことを話しながら、コーギーに案内されるがまま、着いていくとデスクが言っていた名前の大きな家があった。
俺は入口のドアをノックした。すると中から
「はーい。」
と少しだらけた声が聞こえてきた。
しばらくするとドアが開き、高そうな服を身にまとい、眼鏡をかけた黒髪の男が出迎えてくれた。
「はじめまして。私の名前はチョコ。この街の住居を担当しています、以後よろしくお願いします。君は?」
「コーヘイといいます。こちらの女性は知っておられるかもしれませんが、コーギーです。」
「よろしくね。コーギーちゃんは久しぶりだね!元気そうで良かったよ。それで、今日はどうしたんだい?」
「この街で家を持とうと思ったので、来ました。」
「なるほどなるほど。では、立ち話もなんだし、中の方へどうぞ。」
流石は貴族。流れるように話を進めてくれて非常にありがたい。俺はチョコに案内された部屋でコーギーと寛いでいた。うん、ふかふかのソファにシャンデリア、床には大理石かな?俺、全然高価なものを知らないからわからないけど、なんかそれっぽいもの。
いかにも豪邸って感じであった。負けていられない…と思わなくもないが手入れが大変そうだしここまで大きい家はいいや。
しばらくするとドアが開き、チョコが資料を持って入ってきた。チョコは俺が想像していた貴族とは全然違った。俺みたいな何処の馬の骨とも知れない人間に対しても丁寧に対応してくれる。
今後とも良い関係を築きたいものだ。
「それで、コーヘイ君はどういった家を探しているんだい?少し古いものなら100エメマンくらい、僕ら貴族のものに近い家なら1000エメマンくらいだけど?」
「それほど大きくなくていいので、ちょっと豪華目な家がいいですね。できれば丘の上の方にあれば理想です。だいたい予算は500エメマンほどで考えています。」
俺は自分の希望をしっかりと伝えた。するとチョコは少し考えながら資料を見ていた。
「ふむ。それだとこんなのはどうだろう?ちょっとばかり古びているが、趣がある家だよ。丘の上にあることと、ニホンテーエンと言う大きな庭がある。一階建てなんだけど、とても広く、本来ならば1億エメマンは降らないものなんだけどね。どうも人気がなくて、維持費を払うくらいならと値を下げたんだよ。このくらいで考えているんだけど、支払えるかな?」
チョコが薦めてきた家、日本庭園がある家。この家を作ったやつは絶対俺と同じ日本人だな。本来ならば確かに1億円くらいしそうだ。
しかし、チョコが提示してきたのは
860エメマン560ワンダ
これは破格じゃないか。いや、でも待てよ?絶対何かあるよね?これ怪しすぎない?
んー…。
俺はチョコに無言で860エメマン560ワンダをその場で支払った。
悩んだよ?めちゃくちゃ悩んだけどね?俺、元日本人じゃん?日本人なら1度は大きな和風の家に憧れるじゃん?
実際俺は50代くらいから憧れてたもん。
それがこんな安値で手に入るなら、多少のことは目を瞑るよ?住みたいもん。
チョコは俺がすぐにお金を支払ったことに驚きを隠せないでいた。
まあ、ですよね。
それから俺はチョコに言われるがまま、書類を書いた。
これで晴れて俺も家を手に入れたわけだ。うん、最高。
その日の夜は、デスクの宿屋に泊まった。本日2度目のお風呂に入り、夕食をコーギーと済ませ、部屋に戻って準備をしてから、明日必要なものをあげていた。
日本家屋だ、畳とかあるとありがたい。
お金とアイテムボックスがある以上、なかったときのためにテーブルや椅子、後は布と綿なんてあるといいな。座布団っぽいものも作れるし。
夢が広がる。ぐふふ。俺にとっては最高じゃないか。
俺はしっかりと買うものをリスト化し、メモに書いてから寝た。
異世界に来てから1番まともな生活をおくったんじゃないか?これ。
俺は充実感とともに眠りについた。
ー翌朝ー
俺は起きて朝食をとり、身支度を整えて宿を出た。
「ありがとうデスク。色々世話になったよ!残りのお金は貰っといてくれ。」
俺はお礼を告げて、外に出た。すると荷物をもったコーギーがいた。
「待っていたぞ!コーヘイ!では、我が家に行くとしよう!」
ん?我が家?あれ?コーギーも一緒に住むの?
んー…そう言えば、そう取られてもおかしくないことを言った気がする。
言ってしまったものは仕方ない。こんな美少女と住めるなら万々歳だ。
…別に変なことはしないからね?ここ、重要!!!
俺はコーギーの荷物を受け取り、アイテムボックスに収納してやった。
コーギーは驚いていたが、今はそれよりも家だ。早く見たい。
宿から歩くこと10数分、少し街から外れた丘の上にチョコが言っていた家があった。
立派だ。今日からこれが俺の邸だ。
うん、やっぱり邸はいいものだと思います。