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第27話 ヘイスター敗北

◇◇


 夜が明けて、朝日が地平線から完全に顔を出した。

 これが合図で戦争は始まる。

 その頃、私、リアーヌ・ブルジェは監獄塔の中で息をひそめていた。

 理由も分からない寒気が背筋を走ると、思わず身震いしてしまった。まるで誰かに変な噂をされたみたい……。

 

「どうしたんだよ。姉さん。怖くなったのか?」


「いや……。怖くはないわ」


 だってジェイが「リアーヌのことは俺が守る」って約束してくれたんだもの。

 ……なんて恥ずかしいことは言えず、私は口を結んだ。

 ジェイからは「声が外に漏れないように」と強く言いつけられている。

 ここにいる数十人の若い女性たちもまた、ひっそりとしていた。

 館で働いているマーガレットの姿もまたその一人だ。彼女は口に手を当てながら声を出さないようにしている。

 しかし一人だけ、ジェイの言いつけを守らない者がいたのだ。

 

「へんっ! なんだよ。どうせまたジェイが守ってくれるから、なんて甘いことでも考えてるんだろ?」


 ヘンリーだ……。


「しっ! もう静かにしなさい!」


 私が小声でたしなめても彼はへそを曲げたまま。

 

「なんで俺がこんなところにいなきゃなんねえんだよ!」


 と文句を垂れている。

 それも仕方ないかもしれない。

 ジェイの立てた作戦のために、マインラートさんをはじめとして、他の男たちは領主の館の近くで待機している。

 しかしヘンリーに対して、ジェイはこう言いつけたのだ。

 

――ヘンリー殿には監獄塔にて控えていただきます。御身に万が一のことがあってはなりません。それに若い女性たちを守るお役目は、町で最も人気のあるヘンリー殿がつとめるのが最適でしょうから。


 と……。

 血気盛んなヘンリーは猛烈に反対した。

 でもジェイが彼の要求を聞き入れるはずもなく、今日を迎えたというわけだ。

 

「へんっ! みんなして俺を馬鹿にしやがって……。今に見てろよ……」


 ぶつぶつと独り言を漏らすヘンリー。

 とうてい納得などしていないに違いない。

 

(はぁ……。変な気を起こさなきゃいいんだけど……)


 そうため息をついた直後だった。

 

「勝ったぞぉぉ!! 領主は死亡、ヘイスターは降伏! 我らの勝利だぁ!!」


「おおおおっ!!」


 町の入り口の方から、男たちの歓声が聞こえてきた。

 声をあげたのは言うまでもなくリーム王国の兵たちだ。

 つまりこの瞬間、ヘイスターの町はリーム王国の軍勢に敗北した。

 

 しかし監獄塔の中は悲観に包まれることはなかった。

 なぜならみんな、既にリーム王国の兵たちが『彗星の無双軍師』の術中にはまったことを理解していたからだ。

 もし作戦通りに進んでいたならば、彼らの中にすでにジェイが紛れこんでいるはずだ。

 そして館の周辺で息をひそめる男たちは、今か今かと待ちわびているのである。


 逆襲の時を――。



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