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7.子犬の執事

次の日の放課後4時半頃。

俺は部活を休み、校門の前で彼らの迎えを待っていた。朝、郵便受けに、今日の放課後に迎えを出すと書いてある手紙が入っていたのだ。

…遅いなー。手紙に書いてあった約束の時間から、20分位過ぎてるよ。もしかしてあの人達、夜行性なのかな。だって、いつも襲われるの夜だし。夜が襲うには一番効率的だとはわかってるけどさ、夜しか動けないんですかー?って話だよね。―――歩いてればひょっこりどこかから出てくるかなー…?

よおーし、歩こうか!そしてあわよくば帰ってしまえぃ!

…そうして俺が帰路に着こうとしたその時だった。


「待ってくださーい!そこの人ー!そこのやたらとイケメンの人ーーー!遅れた僕も悪いですけど、まだ帰らないでくださいってばー!」

「…え、あの人誰…?お迎えはエリカさんのパシリ(せんじさん)じゃないの?」

「勇翔くんでしょう?そこで待っててくださいねーー!僕を置いて行かないでくださーい!」


俺が立ち止まって謎の人を見ていると、その人は走ってきて俺の前にやってきた。


「…はぁ、はぁ、走って、きたのにっ、遅れたっ…ふぅ。―――まさか仕事押し付けられるなんて思ってなかったから焦りましたー、…すみません。挨拶が遅れましたね!千子さんに言われてお迎えに上がりました、僕の名前はいぬいメオン。勇翔くんと同じで、任務の遂行がメインの活動部隊で働いています。…部隊なんて言っても、俺しか隊員いなかったんですけどねー。まぁ僕は所謂、職場の先輩ってやつですね。これからよろしくお願いします!」

「はい、あー、ええと…。」


その人は全体的に可愛らしい雰囲気をしていた。

彼の背丈は俺よりも15cmほど低く、一般的にも低い方だと思われた。髪は綺麗な縹色はなだいろで、肩の前にまとめられた長い髪が垂れ下がっている。目も髪と同じ縹色だ。服装は彼にとっては少し大きめの制服で、片手には学生鞄。腰には、少し長すぎるぐらいのステッキが太いベルトに引っ掛けてある。

あ、俺の身長は177cmです!参考にどうぞ。


「そんなに謙遜しないでくださいよー!呼び捨て、タメ口全然オッケーです!あ、僕は気にしないでください。誰にでも敬語使うのが癖なので。それに僕、勇翔くんよりも年一個下なんですから、ね?一応先輩ってことになりますけど、遠慮することないですよ。それに、同年代の仲間がやーっと出来て嬉しいんです!」

「…うん、俺も同年代がいるって知って少しは気が楽になり…なったよ。…これからよろしく。」


あれ、ということは彼らは同年代ということにはならないのか…?

じゃあ、千子さんは多分20代ってことになって、エリカさん…10代じゃないってこと!?えー…、まさかの8歳とか6歳とかそういうことですかー…。それにしてはデカすぎる気もするけど…俺めっちゃエリカさんに馬鹿にされてたじゃん。なんか情けないなー、幼女に馬鹿にされる男って。

メオンは子犬のようにキラキラと目を輝かせながら、俺の言葉を嚙み締めるように嬉しそうにしていた。…なんか尻尾が見えてきちゃうな、そんな子犬のような顔されると。


「じゃ、これからエリカと千子さんのところに行きましょうか!ついてきてくださいね。」


エリカさんのことは普通に呼び捨てにするのね。…それからメオンについていき、道中いろんなことを話しながらどんどんと進んでいく。


「勇翔くんはお金持ちなんですね!この学園に迎えに行けって言われた時はびっくりしたんですよ、僕みたいな学生が学園の前いたら怪しまれちゃうかなーって思ったりして。結局待たなかったんですけどねー!」

「でも、その制服の学校って使用人とか執事とかになりたい人専用の教育学科があった気がするけど。それなら多分、あまり怪しまれないはずだよ。お迎えの人なのかなーって思われるだけだし。」

「おお、すごい。よくご存じで!僕は執事としての教育をしっかり受けるためにあの学校に通っているんです。小さい頃から執事としての心得を色々千子さんに教わってましたから。僕、使用人としてならもう現場で働いてるんですよ、ま、バイトなんですけどねー。」

「あの人達とは昔からの付き合いってことか、…ん?年齢あまり変わらないはずのに教えてもらってたのか…?…あ、そういえば、人によっては給料ちゃんとしてないところもあるから気をつけてね。」

「えええ!!そうなんですかぁ!?あぁー、お金持ちの人はそういうことしないと思ってましたー…ちゃんとしてるか後で確認しとこー。あ、着きましたー!ここです!―――ではでは、勇翔くん、何でも屋へようこそー!」


それは、目立たない路地の奥にひっそりと佇んでいた。まるで隠れ家のような感じで、白い美しい壁がとても印象的だ。逆に木の扉が白い壁のせいで浮いて見える。

俺は今日からここで働くのか…。


「案内ありがとな、メオン。よし行こう。…仕事しなくちゃ。」

「はいっ!勇翔くん、行きましょう!」


メオンがドアを開け、俺を中に入れてくれた。

―――中に入って驚いた。外観が白なのに対して、中は黒の壁紙にアンティーク調の黒い家具で統一されていたのだ。こ、これは、中と外のギャップがすごい…!

入ってすぐの部屋は応接室のようだった。


「連れて来ましたよー!エリカー!千子さーん!」

「お、来たか。お帰りメオン。それと、いらっしゃい勇翔。昨日はまた迷惑掛けてすまなかったな。…そういえばお前たち、来るのが少し遅かったな?」


千子さんの声がした方を見るとまた俺の中に衝撃が走った。

―――エプロン姿の彼が、焼き立てのクッキーが入ったお皿を持ってこちらにやってきたのだから。誰でも目を疑うだろう。…うん、千子さん、剛志と同じくママ属性だったんだね。


「僕が学校で先生に仕事押し付けられちゃいまして…断れずに仕事をしていましたら待ち合わせの時間を過ぎてしまったんです。勇翔くんは全然悪くないんですよ!」

「そうっだったのか。今、丁度これが焼けたところだったんだ。帰ってくるまでに焼けたから、まぁ、遅れてきてくれて丁度良かった。さ、勇翔は座ってくれ。メオンは自分の部屋に荷物を置いてからくるんだ。ついでに、部屋の机の上に置いておいた仕事内容の紙を確認しておけ。」

「了解です!」


メオンは元気よく返事をすると、すぐに部屋へと向かっていった

。…自分の部屋があるのか。もしかしてここに住んでるのかな?俺も住めとかそんなこと言われないよね?

その不安や疑問を感じ取ったのか、千子さんが安心させるように俺に言った。


「メオンは小さい頃からずっとここに住んでいるんだ。孤児だったあいつを俺たちが引き取ったからな。だから別にここに住むことは強制ではないぞ、安心してくれ。」

「え…?引き取ったって、そんなに年齢変わらないのにどうやって…」

「待たせたのう、勇翔や。少し仕事の内容について考えておったのでな、すぐに来れなかったのじゃ。…おや、クッキーの良い匂いがするのう。これはこれは、千子の手作りじゃな。」


会話の途中にエリカさんが割り込んできた。

―――さっきからメオンの話が謎を残す。何で俺とほとんど同じ年のメオンを20代の千子さんと10歳未満のエリカさんが引き取って、教育できるんだ?話が矛盾し過ぎていてわけわからない。そもそもこの人たちの正確な年齢は何歳なんだ?もしかして、エリカさんの更正力は年齢すら誤魔化すまた新しい使い方があるのか?…その本人は吞気に俺の隣にやってきてクッキーを美味しそうに食べ始めているし。

…もう本当に何なんだこの人達!?


メオンくんはとても純粋な心を持ってるんですよ。

裏とか全く無いです、多分。

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