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6.思想迷宮

取りあえず、今日はいろいろあって疲れた。できればそろそろ拘束を解いて家に帰して欲しい。

…剛志も俺の前に立ってないで拘束解いてくれよ。


「さてさて、勇翔や。わしの自己紹介が蔑ろになっていたからの。しっかりとやらせて欲しい。」

「エリカさんですよね。今日は疲れたので、後日にしませんか?別に逃げませんから。俺の為にしてくれてることだし。」

「ククク…、さっきも言ったであろう?おぬしらは今、籠の中の鳥だと。ワシの自己紹介をさせてくれと言っているのじゃ。聞かなければ帰さぬぞ?」


なんて横暴な…!ゴスロリ少女のくせにっ!家に帰してくれよー!

少女が嬉しそうにニヤニヤとしながら俺の前にやってこようとした。剛志はそれを防ごうとさらに俺の前に行こうとするが…


「―――動くな、小僧。…そして前を開けるのじゃ。」

「…っく!何だこれは!?―…何をした!?」


少女が命令すると、剛志はそのまま動けなくなった。そして彼は俺の前を少女の為に開けてしまう。彼は俺を守るために必死に逆らおうとしているが、他から見ればただ顔を歪ませているだけに見えるだろう。

少女は開けられた道を堂々と通り俺の前へやって来た。


「言ったであろう?おぬしたちは籠の中の鳥だとなぁ。おぬしたちの行動はワシが制御できてしまうということだぞい。―――さて、ワシの名はエリカ・ツンべルギア。この何でも屋の指揮を担当している、所謂ここのボスじゃ。これから面白くなりそうじゃのう、よろしく頼むぞい。ククク…。」


まさかの外国人でしたか。…まぁ、何となく顔立ちが整ってて、鼻が高かったり外国人要素多かったからそうじゃないかと思ってたけどね。

エリカさんは続ける。


「ここで一つ教えておこうかの。更生力には能力名というのがついているのが一般的なのじゃ、ちなみにワシの更生力は、『思想迷宮』というのだぞい。ツンべルギア一族の伝統的な更生力でなぁ、もって生まれるのは兄弟の中でただ一人だけなのじゃ。だからこの更生力はむやみやたらに所持者が増えることはないのじゃぞ、言ってしまえばワシの更生力は数多にある中でも希少という訳だのぅ。…簡単にこの更生力がどんな能力か説明してしまうとな、ワシの思ったこと、考えたもの、見たもの、聞いたもので作った所謂空想の迷宮に、ワシの瞳を見てしまった者を閉じ込めるという能力なのだ。」

「…空想の迷宮に閉じ込める?じゃあ、昨日の出来事は…!」

「そうじゃぞ、ワシの瞳を見たおぬしは、ワシが空想の中で再現したあの道に迷い込んだというわけじゃ。だから、あの死体もワシが再現してみた物なのじゃ。…中々リアルじゃったろう?」


空想の中かー、そういうことだったのかー…いや、普通に暮らしてたらそんなファンタジーな考えに普通は行きつかないから!逆にその考えに至ったやつはおかしいからな!?

絶っっっっーーー対!!

―――…あれ?でも、今の話の流れだとここもエリカさんの空想の中ってことだよな?そうしたら、俺と剛志はいつ彼女の瞳なんて見たんだろう。剛志が入ってくるとき、彼女に気づかれてるって知らなかったって言ってたし。ンンン…?

俺たちが少し呑み込めない顔をしていると、千子さんが話の補足するために割り込んできた。


「エリカも言った通り、彼女の更生力は自らの瞳を見たものを空想の世界…思想迷宮に閉じ込めるものだ。…能力を一つ付け足すと、この更生力は現実では結界としても使うことができるんだ。張れる範囲が狭いのが難点だがな。そして、空想の世界や結界内は彼女の思いのまま、つまりは精神にも肉体にも直接干渉できる。言ってしまえば思想迷宮の中では彼女に逆らえる者はいないんだ。だってそれは彼女の中と言ってもいいのだからな。勇翔が昨日体験したことは、殺人を体験させるものと、相手の精神に干渉して自我の損失を促すものだったと聞いている。随分と酷なものを掛けられたようで申し訳なかったな。―――だが、更生力の純度が高いと思想迷宮内では彼女に少し抵抗することができる。更生力の純度は抵抗力の高さで測れるという訳だ。何で君のボディーガードは逆らえないのかって言うと、それはここが結界だから。結界は範囲も狭いし気づかれる確率が高いから、入ってしまった者はいくら純度の高い更生力を持っていても抵抗ができないんだ。…長かったが少しはスッキリできたか?」


うん、情報は多かったが何とか理解できる範囲だ。フムフム、なるほど。今思ってた疑問は多分消えた。ということは、ここは結界の中だから俺たちが逆らうことは不可能。エリカさんが出してくれるまではここから出れないってことかー。

―――…オイオイ待てよ!それってめっちゃピンチじゃん!俺たち、彼女の気が済むまで帰れない!?


「千子、長い説明ご苦労。…はぁ、そんなに不安そうな顔をしなくても帰してやるわい。言ったであろう?ちゃーんとワシのことについて聞いて知ってくれれば帰すとなぁ。」

「じゃあ、今すぐ家に帰せ!聞くことはもう聞いただろー!」


俺が椅子を必死にガタガタさせていると、千子さんはその状況を見てこれ以上はかわいそうだと思ったのか、ていうか誘拐したのは千子さんなんだが…エリカさんの横から言ってくれた。


「…今日はもう帰してやれ。これから教える時間なんてたくさんあるのだから、そう一度に詰め込みすぎてもかわいそうだ。」

「うむ…千子の言う通り、確かに詰め込みすぎるのはよくないことであったな。では、今日の所はお開きにしようかの。よし、結界を解除するぞい。また明日会おうぞ、勇翔や。―――ゆくぞい!解除!!!」


エリカさんが片手を上に挙げながらそう声を出すと、部屋が突然崩れ始めた。そして床も崩れていく。俺たちは慌てて這い上がろうとしたが、なすすべもなく、ってか俺は手も足も固定されてるからどうしようもなく、崩れた床の穴に飲まれて行ったのだった。


―――…気がつくと俺たちは家の前に倒れていた。床に飲まれ、意識を失っていたらしい。時刻はもう11時ごろではないかと思われる。どうやら彼らは結界を解いた後に俺たちをここに運んだらしい。男性二人を運ぶなんてよくできたな。

…そういえば俺、今日2回も気絶させられてたな。人生の中で一日に2回も気絶させられることなんてもうないだろうな。

…突然剛志が片膝をついて、頭を垂れ、俺に謝罪してきた。


「勇翔さん、今回はお役に立てず申し訳ございませんでした。」

「…それはもういい、だってお前も動けなくなってたし、しょうがない。だけど、お前が更生者だってこと、どういうことか説明しろ!…父さんとの契約に関係することはいいけどさ、能力名…だっけ?それぐらいは教えろよ!それなら契約には関係無さそうだし、な?」

「…はい。」


なんやかんやあったけど、明日は普通に学校に行けそうだし、家に帰ってこれてよかった。…ホントに。






千子さん説明回では滅茶苦茶喋ってましたね、本当にお疲れ様です。余談ですが、メインの二人である勇翔とエリカは花を名前の由来にしてます。勇翔は名字だけなのですが、エリカはどちらも花の名前です。花言葉を調べたら二人についておわかり頂けることもあると思います。

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