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5.彼女たちの目的2

俺が、無意識に使っていた…?


「…っけど!そんな人俺以外にもたくさんいるじゃん!だったら、その人達も更生者ってことになるよな!?」

「実は更生力は急に出現することもあるが、大体が遺伝するものなんだ。その者たちは先祖に更生者がいたのかもしれないな。但し、純度は底辺。…純度というのは、更生力の強さを表したものだ。お前の父はお前と同じ更生力を持つ更生者だったのだが、純度がそこまでではなかった。だから勧誘まではしなかった。だが今回俺たちは、お前がとても高い純度の更生力を持っていると判断して、保護も兼ねてこうしてお前を勧誘しているんだ。」

「いつ、どうやって俺の純度ってやつを計ったんだ!?それに俺はこのままでも生活できる!だって今までもそうだったんだから!保護する意味がわからない!」


そうだ、俺が保護される必要なんてない!俺はこのまま、組み立てられた人生というぬるま湯に浸かっていたいのだ。

千子さんは気の毒そうに俺を見つめ、本当のことを言うことをためらっているように見えた。すると突然、エリカと呼ばれていた少女が俺に宣告するように告げた。


「―――勇翔や。おぬしはこのままだと、内側から更生力が爆発して抑えが利かなくなるのだ。まぁ、いずれはおぬしが崩壊すると言う訳だの。そして力に飲まれ、その有り余る力でまわりのものを傷つけはじめる。本人の意思に関係なくなぁ。」

「…エリカ!」


千子さんは突然しゃべりはじめた彼女に驚いて、これ以上本当のことを告げるのををなだめるように彼女の名を叫んだ。

…え、俺はそんなに大変な状態なのか。…というか、制御できないくらいって俺の純度どんだけ高いんだよ。


「考えてみよれ、千子。ごまかしてここで勧誘に失敗すれば、苦しむのは勇翔だぞい。本人のことを思うならここで言わずしてどうする。阿呆ぅ。」

「そっそうだが…。」


どうやら千子さんは、彼女の言葉が正論すぎてこれ以上突っ込めないらしい。千子さんの思いやりの心は大変嬉しいが、確かに俺も本当のことをストレートに言ってくれた方がスッキリする。

まだ内容を、全部信じたわけではないが。


「おぬしが崩壊しないように、誰か身近なやつが更生力を押さえ込んでいたようだが、いずれはそれも難しくなる。だがこれまで崩壊せずにやってこれたのはそいつのおかげじゃろう。―――なぁ、ドアの前に立っているそこの小僧。」


少女は部屋のドアを見た。するとドアが開き、入ってきたのは…


「剛志!…助けに来るのが遅い!」

「すみません、勇翔さん。救出の機会を企んでいたのですが、まさかあの女にばれていたとは思いませんでした。」


剛志はかばうように、椅子に括り付けられた俺の前に立つ。

―――いや、かばう前に俺の拘束を解けよ!順番どう考えても違うだろ!?考えればわかることなのにー!

…すると少女はクククと不気味に笑った。


「なめてもらってはこまるなぁ、小僧。ワシの迷宮に入ったのだ、その時点でおぬしは籠の中の鳥よぅ。―――感じていただろう?ここが現実ではないと。」


…はぁ、わけがわからない。じゃあ、ここ現実じゃないならどこなんだよ!夢ですかぁー?死後の世界ですかぁー?どう考えてもまだ生きてる感じしますけどねー!だってまだ俺の痛覚働いてるもん!ギッチギチに括り付けられて痛いもん!

…すると千子さんが少女と剛志の間に立ち、話を止めた。少女は今度は千子さんの言うことを聞いたようだ。


「勇翔。すまないがこのことは後で説明するから今はお前自身のことについての話を進めよう。…そこにいるお前のボディーガードの男は更正者だ。そして誰に頼まれたのか知らないがお前の更正力を抑えていた張本人。この男がこれからお前をどうするのか決めていたかは知らないがな、取りあえずこのままお前を放っておくのはよくない。そこで、俺たちがお前を保護し、使い方を教えることでお前のその高すぎる純度を持った更正力を自分で制御できるようになってもらう。…何、簡単なことだ、自分の意思で使えるようになりさえすればいいんだから。」

「…それだけでいいのか?それだけで俺の崩壊は止まると…?何でそんな簡単なことを剛志はやらせてくれなかったんだ?」


剛志は振り返ると、俺を見て申し訳なさそうに言った。


「…勇翔さん、ごめんなさい。それに関しては旦那様のご依頼内容に関与するので内容は詳しくお答えできないのです。貴方に隠し事はしたくないのですが…。すみません。」


剛志と契約したのは父だ。だから契約内容はたとえ俺のことであっても漏らしたりしてはいけない。わかっている、わかっているが―――少し寂しい。


「…わかってるよ、大丈夫。俺のことを守ってくれてたのは伝わってるから。な?本当に、感謝してる。」

「勇翔さん…!これだけは信じて欲しいのです。あなたのことは本当に子供のように大切に思っているのだと。」

「…主従関係が大変良好なのはとてもいいことなんだが、とりあえず今後どうするのか早急に決めてくれ。」


恥ずかしいことに二人だけの世界にいたようだ。剛志には聞きたいことも沢山あるし…特に更生者だったってこととか。後で帰ったら問いただしてみようと思う。

千子さん止めてくれてありがとう。


「ごほん、…俺はこれから、とりあえずあなた達の下でお世話になりたいと思ってる。あなた達のメリットは少ないと思うが、迷惑はできるだけ掛けないように頑張る。…よろしくお願いします。」


こうして俺は更生者としての道を選ぶことになったのだった。








次の話も説明回です。

次回はエリカのフルネームが出てきます。

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