1.殺人犯になりました。
部活帰りの夕方8時
俺はいつも通り通学路を帰宅していた。
住宅街はとても暗い。季節は冬だが、この時間は元々暗いので季節はあまり関係ない。
―――人が一人もいない、今日は空気がやけに冷たい。
「…早めに帰ろう。」
俺は曲がり角を曲がろうとした。するとその時、
「…っ!あぶなっ…」
俺の目の前に一人の少女が飛び出してきたのだ。美しい黒髪に今では考えられないコスプレのようなゴシックドレス、そして綺麗な紫苑色の瞳。
少女が何かささやくいたように見えたがその声は全く俺には届かない。
少女と目が合う
その瞬間、少女の目に吸い込まれていくような感覚がして…―――
……はっと意識が浮上した。気がつくと俺の手にはナイフが握られていた。手にはベッタリと―――赤黒い血がついている。下には知らない人が腹のあたりから血を流して倒れていた。顔に触るもともとついていたのであろう返り血がさらに俺の手を汚す。多分俺が、…俺が?
「俺が人をっ…」
「殺してしまったのぅ。」
いつの間にか目の前にさっき飛び出してきた少女が高価そうな傘をさして立っている。美しい黒髪のゴシックドレスの綺麗な闇色の瞳の少女…闇色だったかな?
…傘には返り血が飛んでいた。少女は返り血を払って傘を畳んだ。俺が飛ばしてしまった血だ。高そうなのに申しわけ…!?
「俺は殺してない!」
―そうだ、何自覚しようとしているんだ!俺は殺してなどない、何故俺が見ず知らずの人を殺さなくてはならないのだ!!わからない。理解が追いつかない。今、自分がどんな状況なのかわからなくなっていく。
「でも見てしまったからのぅ。」
少女は見た目にそぐわない口調で続ける。
「どうして殺していないと言い張る?その自分の状況からして自分がやってしまったとわかるだろう?わしも見ておったというのに。」
確かにこの状況からして俺が犯人だと思ってしまうだろう。自分で罪を認めてしまいそうになったくらいだ。だがこれは何か違うと自分の感が訴えている。
「…それでも俺は殺してない。これは何かの間違いだと俺は信じたい。」
少女はクククと笑った。
「おぬしの更生力への抵抗力は侮れないのぅ…うむ、やはりおぬしは…力が…。」
少女は何か言っているがうまく聞き取れない。俺の存在を無視して考えに浸る少女に恐る恐る声を掛けた。
「…あのー、お嬢さん?」
「…ん?ああ!そうじゃったそうじゃった。うむ、おぬしは合格じゃ。今元に戻そう!」
少女はにっこりと嬉しそうに笑ってⅤサインする。
「はぁーー!?この状況をどうやって元通りにするっていうんだ!?これじゃごまかしても時間の問題だよ!?それに今、君の何かに合格しても嬉しくないからね!下に腹から血出して倒れている人がいるのに何かに合格しても嬉しくないからね!!」
おおっと、思わず心の声が漏れてしまった。この状況でこの少女は何を言っているんだか。少女はⅤサインをおろし、困った顔をした。
「まぁまぁ、落ち着くのだ。むむむぅ…、わしは説明が下手であるからのぅ、こんなことなら千子の奴を連れてくるべきだったわい。そうゆうことで説明はせぬ。うむ!おぬし、…とにかく目を閉じよ!」
―――目を、閉じる、だとぉう?
思わず俺は土下座しながら言ってしまう。
「…俺をからかっているなら、早く警察に連れていって下さい。目を閉じて開けると、はいっ、解決っ!なんてあるはずないんです。まず電話した方がいいですか?俺、自首しますから、証言お願いしますね。なにせ殺した時の記憶なくってですね、本当に迷惑掛けるんですけど…」
「おぬし!!さっきのシリアスムードはどうした!?おぬしは殺していないのだろぅ!!とにかく、すべこべ言わず目を閉じて力を抜けい!ほら、はよぅせい!」
…仕方なく目を閉じてみる。すると下に落ちる感覚がして―――
「はっ!」
気がつくと俺は曲がり角に一人佇んでいた。…え?
通り過ぎていく人が佇む俺を不審なものを見るように俺から遠ざかって行く。
「…今の何だったんだ?」
ハートの形をした紫色の花びらが突然目の前を舞った。その時どこからか声が聞こえる。
「また近いうちに使いを出すぞい」
…やめて。
とりあえず書いてみました。誤字、脱字は注意しているつもりですがあったらすみません。
忙しいので更新は1ヵ月に一度とかになるかもしれません。時間があったら多分更新してます。よろしくお願いします。