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「あのぅ、司様。冒険にはもう出ないのでしょうか…。」
不安げな顔をして、寝転ぶ俺の顔を覗くマリア。今日もかわいいな、俺のマリアたんっ!
「ふふふ、俺は待ってるんだよ。」
「待つ??もうゴールデンゴーレムを倒してから2週間が経ちますけど、朝は市場をぶらぶらして、昼は評判のお店でご飯を食べて、夜は遊技場で飽きるまでゲームをして、って遊び人のような生活をしてるだけに見えますけど。」
「ちちち、甘いな。大事な事をチェックしているのさ。」
言いながら顔の前で指を3回振ると、ちょっと頬がふくらんで上目遣いの彼女と目が合った。
怒った顔もかわいい!
「それで、なんでまた朝市に来てるんですか?」
「それはね、ここに伝説の武器があるからだよ。魔王を倒すのに必要な、ね。」
「ひぇ!?伝説の武器!?っていうか魔王を倒すんですかっ、私達!?」
「そだよ~。」
「そ、そうなんですか。軽く言いますね、っていうかそんな魔王を倒せるような武器がこのモロゾフ共和国にあるなんて話聞いたことがないですけど?」
「まぁ、ここは魔物の被害が少なく、初心者に優しい教会やギルドなんかの施設も整っている、”始まりの町”だしねぇ。」
「ですよ。ここで探すより大陸中央のキンググラスか魔大陸最前線のゾビエで探したほうが良いのではないでしょうか。」
「いや、ここじゃないとダメなんだ。ほら、アレだよ。アレはここでしかやってないしね。」
「蚤の市、ですか?」
いわゆるバザーだが、ゲーム中ではこの始まりの町でしか行われていない。
不定期で開催(実際には内部時間で24時間経過ごとに発生)していて、出品物はほぼゴミだ。大概はやくそうやひのきの棒みたいな初期装備・アイテムで、最初のレベル上げのために活用する程度である。ただ、15回に1回「木の枝」が出品される。10000000Gで。
「おやじ、その”木の枝”くれ!」
「え?司様何を言って・・・」
「あいよ、10000000Gな。」
「はいぃぃいいい!?」
「おらよ、10000000G。」
「えええぇぇええ!?」
マリアがアホの子みたいになってる。やばい楽しいコレ。
「え、何で、いや、え、とりあえず、どういう事ですか?」
「ふふっ、コレはね、こう!」
シュウィィィン
俺が手に持った木の枝に魔力を流すと、姿かたちを変化させ、宝玉きらめく豪奢な杖が現れた。
「・・・。」
理解が追いついてないようだ。
「これはガンバンテインという杖で、魔力を持つものが装備してその魔力を消費し続ける限り顕現し、相対する魔力を無効化する武器だよ。」
「・・・それは反則では?」
「そうだね。だけどMPが切れたら使えないからね、用がないときはただの木の枝だね。」
シュポッ
魔力を止めると、またそこら辺に落ちている木の枝のように姿が戻る。
「も、もう司様のやることはなんでもありですね。驚くのはやめにします。でも、お金はどうしたんですか?ゴールデンゴーレムの素材だけではあれだけのお金は用意できなかったと思うのですが…。」
「ああ、お金は全部賭博で儲けた。夜遊技場に通ってたのはそのため。ゴールデンゴーレムの素材を元手に増やしたのさ。今100000000000Gくらいあるかな。」
「へゃあ!?」
驚く彼女がかわいい。