表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

New Game

俺が確信を得ながらも、視界を暗くし痛みを忘れた頃、その声は聞こえた。


【あなたの名前は?】

「…西京司(さいきょうつかさ)。」

【性別は?】

「男。」

【髪の色…、輪郭…目…身長…。】


かぁ~、やっぱり。

野盗の強制負けイベントからの、キャラクリエイト。まんま「賢者の伝説」だコレ。よくわかんねぇが夢でもデバックやってんのか?俺は。さっきの痛みは現実っぽかったが…。

混乱はしつつも最近幾度となく繰り返している問答に、俺の頭はすっかり作業モードに移行していた。


【最後の質問です。心のままに答えてください】


やっと最後か。やっぱりクリエイトにこだわると間延びしちまうから、ここらは削った方がいいな。何度も消したり追加したりしていたが、削る方向で決心がついた。


【賢者とは、なんですか?】


ぱぱっとラスボスまでいくために、今回も最強モードにしとくか。


「西京。」


って恥ず~///、まぁデバック用のコードだからいいんだけどさ。

こういうの恥ずかしいけど、クリエイターとしての夢っちゃあ夢だし、残すのもプレイヤーとしてだったら裏技っぽくて嬉しいけど、でも…うわぁ~、どうしよう。

俺がそんなことで身悶えしている内に、辺りは明るみ出した。




神殿。巫女や神官、巡礼の冒険者達…!?頬をつねって「痛っ!」。

という事は本物…!?、現実なんだよな?これが。

…、…、やば、やったぜ、俺、ゲームの中で生きてるのか、ひゃあ、ひぃやっほぉぉおい!!怖ぇ、けど嬉しい!心臓がめっちゃバクバクしてる、でも、でも夢じゃないんだもんな!!

ゲームクリエイターを目指したのは、小さい頃のゲームへの、冒険への憧れだったが、まさかこんな形でそれが叶っちゃうなんてなぁ。

俺が周囲を見渡し、一人驚いたり笑ったりしている所に、ふとそばに居た巫女の女性から声を掛けられた。


「お目覚めになりましたか?旅のお方。」


おおっと!そうだ、ここでヒロインの聖女と出会うんだよな~。かわいく仕上げたぜ~ここは。興奮覚めやらぬ中でも、自身が作ったシナリオを反芻し、つい仕事モードに入ってしまう。


「は、はい。…っておお!やっぱり30時間もかけたかいがあったぜ!」


めっちゃくそかわええ、このヒロイン。金髪の天使だぜ。


「??ええと、旅の…あなたのお名前は?」

「ああ、いやすまない。気にしないでくれ、こっちの話だ。俺は西京司という。」

「西京様。ここはイースタヤ大陸南西にあるモロゾフ共和国。その中央にありますトリタヤスズ教会でございます。私は巫女のマリア。西京様は盗賊に襲われた後、冒険者の方によって救われ、この教会まで運ばれてきました。誠に申し上げにくい話なのですが…、」

「分かってる、分かってる!お金だろ。そして冒険者登録、行こうぜ!」

「え!?ええ。西京様はこの国の出身でいらしたのですね。見慣れない服装でしたので、旅のお方かと思ったのですが。…ご理解いただいている通り、持ち合わせがないようでしたら冒険者登録をして、クエストの報酬から教会への寄付金と冒険者ギルドへの謝礼を支払うことになります。」

「俺、何もお金もってないからさ、それでお願いします。」

「はい。では係の…」

「じゃあ行くぜー!」


マリアがまだ喋っている途中で俺は出口のほうへ駆け出した。


「あ、お待ちくださいー!」


つられて彼女も駆け出す。

よし、フラグ回収!ここで話を聞いちゃうと、マリアと離れてモブ巫女に案内されちゃうからな。マリアを仲間にするにはまず初っ端でアクションを起こさなければならない。ゲーム画面でも、話の最中で主人公が動かせる状態になるので、出来なくはない選択だが初見では厳しいだろう。だがそれに見合う程マリアの性能はずば抜けている。なにより可愛いヒロインだしな~。





「冒険者ギルドへようこそ、ご用件はなんでしょうか。」


笑顔のかわいい受付嬢を間近にして、思わず頬がにやけてしまう。


「こちらの、西京司様に冒険者登録をして頂きたいのですが。」

「はい、かしこまりました。初めての方には、魔法の水晶により職業(クラス)チェックとステータスチェックをして頂きます。そのあとランクの割り当てと簡単な初心者講習を受けて頂くことになります。」

「わかりました。あ、講習は大丈夫です。友人がギルド職員なのでよく話は聞いていますから。」


チュートリアルは作る側だしな。今更大丈夫だろ。


「承知しました。ではさっそくこちらへ、魔法の水晶のあるお部屋に案内します。」

「西京様、私はこちらでお暇しますか?ステータスは個人情報なので、極一部の親しい方やパーティー内でだけ知らせるものですから。」

()()()。大丈夫だよ、たいしたものじゃないし。初めてで心配だから一緒に来てよ!」

「そうですか…。では職業チェックのところまでご一緒させて頂きますね。」

「ああ、ありがと。」


ここでもマリアのフラグを回収し、一緒に別室へ移動する。

部屋につくと受付嬢が慣れた様子で説明を始めた。


「西京様、こちらが職業チェックの水晶です。手をかざして頂くと、その方の天性の職業が浮かび上がります。職業は一人一つのみで生涯変わりません。レベルが上がるにつれ、適したスキルが得られるでしょう。冒険者をされるのであれば、剣士や魔法使いなどの戦闘職であればベストですが、商人や僧侶などでもスキル次第では戦えますし、パーティーに誘われることもあるので諦めないでくださいね。ですが、農民などですと冒険者としてはご活躍できかねますので、登録は辞められた方がよろしいかと。あとは…まぁ伝説の職業の『賢者』なんかもありますが、誰も見たことがないものですし、関係ないですね~。」

「OK~。いっちょやりますか。」

「では御手をこちらに」


俺が手をかざすと、水晶の中が一瞬渦巻いた後、一つの文字を浮かべた。




『賢者』










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ