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18.4最後の戦いに向けて

 現地に到着。

 もともと国内領地なので仕切りに使っている塀は国境を隔てていた物に比べるとずいぶんと簡素だ。乗り越えようと思えば簡単に乗り越えができる。

 そこを一般市民と思われる人達が乗り越えてこちら側に移動してくる。


 食料を分ける事はできないが、情報を入手した分程度の補助を行い僕らも塀を乗り越えて領地に入り込む。


 しばらく進むと、魔物がこちらに向かって来るのが解った。いまだ噂だけでその姿を見た物は居なかったのだ。

 目立つ身長から1体は魔物である事は解ったが、周りに居た者はこちらが斥候として放った者だった。

「どうした、なぜ魔物と一緒だ」

「この魔物は人の意識を残しています。急ぎ伝えたいことがあると。クラリス子爵とクリス様をお呼びください」

「魔物など危ない者を通せるわけがあるまい、他の者で聞き取りを行い上の者へ伝えれば良かろう」

「時間が無いのです。直接聞かれなければ後悔されますよ」


 そのやり取りが聞こえた。この斥候の判断も正しい気がする。魔物の気配から人であるように思えるが、魔物の魔力と人の魔力が揺れ動ているのも解る。

「お父様、話を聞きましょう。急いで」

「ああ、わかった」

 先日、間違えておじいさまの事をお父様と間違えて呼んで以降、お父様と呼ぶようになってしまった。


「我々が話を聞こう、皆も警戒しつつ少し下がれ。クラリス様には念のために後ろに控えるように言っておいてくれ」

「は」


「それで、君の伝えたいこととは」

「私はスヴァローグの神官でした。恐らくは信仰心ゆえにまだ人の心が残っているのだと思いますが、私に残されている時間は少ないのです。

駆け引きなしに、まずは伝えたいことを優先させてもらいます。

ご存知のように魔王が登場したのが魔物化の原因です。魔王となったのは、この地の領主となっていたイザラークです。

理由は解りませんが、イザラークが魔王となった折に、魔力持ちの者達が次々に魔物に変りました。最初は私のように理性を残している者達もいました。

その者達と魔物化しなかった兵士で皆を逃がしたのです。ですが、理性で止めていた魔物化はすぐに進行し完全な魔物へと変わっていきました。

おそらく今の段階で意識を残しているのは私だけです。

どうか、どうか魔物化した者達を殺してください。そしてイザラークを打ち倒してください。

我々は、頭を切り離しだけ、心臓を貫いただけでは死にません。

この数日の戦いでそれが解りました。

あれらは、人間と比較して圧倒的な戦闘力に生命力がありますが5人以上で向かえば何とか太刀打ちできました。5人以上で戦い、同時に突き刺すのです。

魔物達は、元の人で合った時の習性なのか人間の時に編成された部隊を維持してます。

上位の魔物に統率され4つの部隊に別れて行動しています。

上位の魔物はある程度の知性がありますが他の魔物はそうではありません。連携など全くしないのです。ですが上位の魔物はそういったことは解っていないのです。

あちらに合わせず各個撃破しなさい。そして城へ向かい魔王を倒してください」


 いくつかの貴重な情報が入手できた。

 敵が魔物なのに集団行動をしているのか。ただやはり人に戻すことはできないのか。神の力を使えば戻せる可能性があるかもしれないが、祈りで結果がでるには時間がかかる。その間おとなしくしているとは思えない。現実的はないな。

「良い情報ありがとう」

「ああ、良かった。申し訳ないがもう限界だ。私の首を落としてくれ、人の意識のあるうちに」

「解った、首は私が落とそう。クリスは胸を頼む。苦しまぬように一撃でやるぞ」

「はい、お任せください」

 目の前の魔物は、座り目を瞑った。

「急いで、ほんとにもう」

「クリス、やるぞ」

 剣を抜いて準備する。おじいさまも剣を抜いて首を切る体制になった。

「私は、極力力を抑えます。簡単に切れるでしょう。ですが他の者達も簡単に切れるとは思わないでください」

「わかった、他に言うことは、誰かに伝える事とか」

「スヴァローグ様、今身元に参ります。皆の事を頼みます」

「やるぞ」

「はい」

 おじいさまに合わせて心臓に向けて剣を突き刺した。同時におじいさまが首を落とした。

魔物の姿をした彼は亡くなったが、今のは魔物を倒した感覚では無かった。気持ち悪い。



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