17.4名誉男爵クリス・ボードナー
その日の夜のうちにアリスの父親と母親が僕の両親と話し合っていた。そう本人達は覗いて。結婚を最終的に決めるのは親なので、話し合いは任せるしかない。
何度も何度も転生し長い時間こちらの世界で過ごしたので最近は日本で生きていた時代の習慣などは記憶がかなり薄れずいぶんとこちらの世界に染まってしまったかもしれない。
そう言ってもこの世界では婚約も結婚もしたことは無いのだ。
やはり結果については緊張する。
僕とアリスは別室で結果を待っているわけだ。
「アリスさんは落ちついてるのに、お兄ちゃんはずいぶんと緊張した顔してるね」
妹のソフィーも同じ部屋にいるので、僕に話しかけて来た。
「まあね、自分の婚約が決まるかどうかなんだ緊張もするだろ」
「お兄ちゃん、まさかもしかして婚約が決まらないかもとか思ってるの」
「そりゃそうだろ。アリスとの事は僕の希望だ。やっぱり平民とまがい物でも貴族との結婚だ。アリスの親も本当に賛成してるか解らないし、家の両親も僕の意思を尊重すると言ってるけど、周りとの関係もあるし」
「ふーん、まあ偶には悩むと良いよ」
なんだ、ソフィーはまるで決まった事のように言うな。家の両親が反対するとは思えないけど、昨日もランバート家と話し合っていたしどうやら領主からの手紙も受け取っていたみたいだ。僕には見せなかったがきっと気苦労も多いのだ。
「アリスさんは、お兄ちゃんのどこが良いの?」
「え、クリスの? そうね、うーんなんだろ」
「じゃあ、いつから意識したの?」
「それは自信を持って言えるわ。最初に宿に入ってくる前。
誰かが来たって空気が騒いだの。その後に入って来たのがクリス様。
一目見て、なんとか声をかけて仲良くなりたいって思ったわ」
え、そうなの。最初って宿屋の娘と母親が居るなぐらにしか思ってなかったぞ。
「へー、運命って感じなんだ。じゃあお兄ちゃんは」
「えっと、話をした後ぐらいかな。たぶん」
なんとなく転生者かもしれないって感じたぐらいから気になっていたはずだけど。思考を鈍らせる何かがあったからな。はっきりとは覚えないな。
思考を鈍らせる何かが働いてもアリスを見つけたのだからすごいと思うのだけど。
「クリス、入ってらっしゃい」
話し合いが終わったらしい、母上から声がかかった。
「あら、ずいぶん緊張した顔をしているわねクリスは。めずらしい」
「まさかクリスは結婚を反対されるかもとか考えていたのか。
私達が話し合っていたのは今後の予定についてだぞ」
え?
どういうこと?
「領主様から、家の準備は母屋の主要な部屋は3か月で住めるようになると書いてあった。母屋は半年、他の建物を含めると1年ほどかかるそうだ。だからそなた達が住めるようになるのは春を少しすぎたぐらいだ。それを過ぎてから婚約式を行う予定だ。私が領にもどるのはそなた達の婚約式を終えてからになる。3か月で服を仕立てたりと準備がある。急がなければな」




