16.7領都の生活
「ええ、クリス様名誉男爵。すごいですね、ほんとの貴族様になっちゃうんですね」
宿屋について、アリスと話をしている。
「実際には成人の時に授与で、それまでは名誉男爵相当の待遇をしてくれるだけらしい」
「じゃあ、あと4年後に」
「ああ、16歳になるね」
「じゃあ、領地に帰られるんじゃなくて、領都にお住まいになるんですよね」
「家は、少し改築しないと入れないって、たぶん冬になると聞いている。とりあえず家に一度帰って両親に伝えて、秋の内に戻って来るつもりだよ」
「じゃあ、その時はまた泊まってください」
「ああ、そうするつもり。空いてればだけどね」
名誉男爵は、土地持ちではないので、領主から給与を貰う立場だ。成人前に爵位を貰うことはないので、成人後に名誉男爵となり、軍を率いる予定だ。
軍を率いる為にも男爵の地位が必要らしい。
それに、警備が厳重な家を用意したり、武力を整える為に魔法剣を作るには素材が必要だ、それらを集めるにも男爵ぐらいの地位が必要だそうだ。
爵位自体は成人と共になのに、効力を早めに発揮させるために、僕はクリス・ラクサニアからクリス・ボードナーに変る事になった。
今後の事もあるので、明後日にはここを出発して領地に戻る。そして両親と話したからまた戻って来るのだ。新しい家は、成人した管理者も必要なので、おじいさまが一緒に住んでくださるそうだ。
領都に残る数日で、帰る為の準備を整えた。そして最終日。
なんだかんだでアリスとデートの約束をし、領都で行われる劇を見に行った。
そして、二人っきりで話ができる時に、神様からの話をした。
それによると、どうやら彼女がこの世界に流れ着いた時、前任者が居たが、転生に失敗し消失したと説明されたそうだ。
そして、彼女の役割は僕同様明確な物はなく、できる範囲で改革をして欲しいと言うお願いだったそうだ。
そして、温泉について。あれはお願いをしただけだと。
神様にお願いをすると、幾つかの事がかなったらしい。
温泉並みのお願いが、魔物の大量発生事件。せめて、強い魔物半分をどっかに行ってとお願いをしたそうだ。
そのお願いで僕の所に魔物が来たわけだが、そのおかげで戦力が分散され、僕は僕で。こちらの領都は領都で対処しきれた。偶然とはなかなかに恐ろしい物だ。
この考えが横切った時に、久しぶりにアリスが前世持ちだと考える思考を制限された時と同じ感覚があった。
「今、なんとなく思考が制限された。なんの話だった?」
以前の事も伝えてあったので、アリスは僕のこの変な問いをおかしいとは思わず丁寧に話を戻してくれた。そしてこういう所かななどと、詳細に話してくれた。
そして、何度目かの説明の時に、思考が晴れやかになった。