15.1ランバート家の食事会
ランバート家への食事会に出かけた。僕の身内としてシスコ夫婦が同じ席について食事会に出席し、ゴンは後ろで護衛に付いている。
他の人は、別室で部下同士の懇親会をするそうだ。
領都での食事は、家とそれほど食文化に違いはなく伝統的な料理が多かった。それに肉だけでなく珍しく魚があった。
「シスコ君と、コリンナさんは結婚しているのだったね」
「ええ、この春にようやく」
「ラクス様、レイラ様、イクス様はもうご婚約されたのですか」
「いや、まだだな。うちはかつは伯爵家だったが今は準男爵。ラクスとイクスは騎士を目指すらしいから騎士養成学校に入れようかと思っている。おそらく成人間際までは決まらないよ。レイラは、知り合いに預けて社交界に出そうとは思っている。元は伯爵家なのだから血を望む家はあるからね。君の母上もそうだったし。結局は騎士爵だった君の父へ嫁ぐことになったが、あれは当時は人気だったのだよ。まあ、今の感じを見るに、昇格しそうで良かったが。それでクリス君はどうなんだい?」
「僕は、まだですよ」
「そうか、話は出ていないのかい。やっぱり血族で固めるのか?」
「さあ、父上も母上もそういった話は一切」
「そうか、なにか考えがあるのか。君が望むなら協力は惜しまないからね」
「ありがとうございます」
「前の魔物の発生から4年も経ちましたが、おじいさまはお元気そうですね」
「ああ、今でもオーガーぐらい倒せるぞ」
がっはっはと、お酒を飲みながら笑っている。オーガーとの戦いでも怪我をしていないようで、今も元気。良かった。
「クリス様は、魔法が得意なのですよね」
「え。ああそうですね。剣も習っていますが魔法の方が得意かもしれません」
「イクス兄さまも、ラクス兄さまも剣一筋なのですよ。私は、お母様から魔法を習い始めたのですが、まだまだで。どのようにすれば上手くなるのでしょうか」
「僕の教え方は特殊なのですよ。まあ単純で簡単と言えばそうですが。シスコもコリンナもその方法で学びましたし、興味があるならコツを教えましょう」
「よろしいのですか、ぜひお願いします」
「ええ、簡単な事ですよ。レイラ様は錬金魔法と土魔法どちらが出来ますか?」
「錬金魔法が使えます」
「なら、毎日、毎日、錬金魔法で何かを作ってください。同じ物で良いです。シスコもコリンナも冬の間ずっとリバーシの駒を延々と作り続けたのです」
「錬金魔法ですか?」
「そうですよ、魔法の熟練度を上げるには、錬金魔法や土魔法と言った結果が見える魔法を延長と続け熟練度を上げます。ついでに使い続ける事で魔力も上がります。錬金魔法がある一定のレベルまで上がれば他の魔法の熟練度も勝手にあがりますから」
レイラ様は不思議な顔をして、シスコとコリンナの方を見た。
「本当ですよ。冬の間、ずっと作り続け春になったら攻撃魔法の威力が上がっていました。おそらく錬金魔法や土魔法は魔力を操作するスキルが上昇しやすいのです。細かい作業や複雑な作業をすれば、それだけ魔力を操作するスキルが上がります。それは攻撃魔法や防御魔法を使うのにも役立つのです。
逆に、攻撃魔法や防御魔法で魔力を操作するスキルを上げるのは大変です。魔力の操作よりも威力の調整を意識しますから」
「へー、そうなのですか。お母様はどう思われますか。今の」
「そうね、今までも熟練度の上げ方は違うけど、理にかなっているかもしれませんね。クリス様は、幼い時にそれを発見されたのですか」
「まあ、小さいときは派手な魔法を使えませんし、することと言ったらそういう事しかないし」
「噂通り、クリス君は、アースアシュリー様と同じで特別なのですね」
「アースアシュリー兄さまは特別すごかった。僕も貴族社会では落ちこぼれでは無い。
ラクス、レイラ、イクス。君達もクリスと比べる必要は無い。彼も特別なのだ」
これは、もしかしたらコルネオ様は「優秀な兄の下に生まれた優秀ではない弟」とそういう風に言われて育ったのだろうか。それは悪い事をしたような。でも僕のせいではない。
「そうだぞ、レイラ。聞いてい解っただろう。あんな事を幼い時から発見するような者はいない。彼が特別なんだ。僕らは普通だ。近づくための努力はするが、同じようにできなくても良いんだ」
いやなんだろう、すごい言われ方をした。
「あの、僕は一体」
「ああ、気にする事ではない。まあいろいろあるのだ、この子達も」
「そうですか、何か迷惑をかけているような事があるなら、すいません」
「迷惑な事は無いのよ。自慢の従弟だと思ってますよ、僕は」
ラクス様が答えてくれた。まあ、アースアシュリー絡みを含めていろいろあるのだろう。とりあえずこの話題は終わった。
そして、食事会が終わり、僕らは宿屋へ戻った。




