14.4領都の宿屋
最初に一通り市場を歩き回り砂糖などの希少品の値段を確認した。2週間後に帰る予定なので、その頃に買いに来ると伝えた。
そして、お昼時にアリスのお勧めの店で食事を取った。
「市場の値段を確認すると、私達の街にもあるような食料品はかなり割高ですね」
サーシャは主婦目線での比較だろうか。
「まあ、輸送費がかかるしね。でも他所から入ってくる希少品はこっちの方が安い。特に薬」
「そうですね。薬はこちらの方が5割は安いですね」
「薬は食料よりは期限が長いけど、行商人が売りに来ないからな。田舎は田舎で適当な薬草で治しちゃうから、売れないしな。そもそも医者が居ないから、元気な時に薬を準備しないしね」
「病気になってから買うから高いのでしょうね。足元を見られてますよね」
「まあ、回復魔法もあるしね、逆に領都の方が回復魔法を使える人が多いから薬が売れないような気がしたけど」
「領都の平民の中には回復魔法が使える人はいないよ。回復魔法が使える人は漏れなく教会勤めだもん」
アリスがそう説明してくれた。なるほど、神殿の管理下に置かれているのか。
「クリス様も街には教会はないのですか?」
「教会は、できたばかりなんだ。うちの街は今まで回復魔法の使える人が普通に治療活動していたから、教会も住民と衝突しないようにしているんだろう」
ふむ、領都では薬のニーズもあるということか。
その後で生活雑貨、宝飾品、服飾関係の店を回った。
「うちの街で作っている物も多かったね。石鹸とか外に出してなかったけど売れそうな物だったんだね。とりあえず匂い付きは作っていないからサンプルも含めて購入しておこう。あとは匂い袋をお土産にしようか」
「幼馴染の女の子のお土産に、この髪飾りはどう?」
なかなか綺麗な髪飾りだ。二人の髪が青と金髪と伝えるとアリスがそれに合わせた色の髪飾りを選んでくれた。
「ああ、お礼にアリスもどう。これとか」
そういって、黒髪にも似合いそうな銀細工の髪飾りを一つ手に取り髪につけてみた。
「あら、似合ってるわ。クリス様の見立ても良いですね」
サーシャがアリスでは無く、僕を誉めてくれた。その言い方だと弟ではないのがばれてしまうと思うけど。
「サーシャ姉さま、僕はクリスね。クリス」
「ああ、そうだった。クリス。良いんじゃない。クリスも女の子の物が選べるようになったなんて、お姉さん感動よ」
いや、だからそこで僕を誉めるのではなくてさ。
「ありがとう、クリス様。でも良いのですか。今日は案内料も貰っているのに」
「え、恋人役でしょアリスは」
そう小声で言ってみた。ちょっと嬉しそうな顔でこちらを見て頷く。
「アリスに似合ってるよ。主人、これは付けて帰りたいのだけど」
「小銀貨5枚です。飾りをしまう小箱をお持ちしますので少しお待ちください」
そして、立ち去り際に店員の子がアリスに小声でつぶやいた。
「アリスちゃん、ついに恋人ができたのね。良かったね」
そうか、どうやら知り合いだったらしい。後で誤解を解くのは大変かもしれない。
そうして、楽しい買い物が終わり、僕らはランバート家に向かった。




