14.3領都の宿屋
「クリス様は、明日は領都内の見学です。わたくしとコルネオが付きそいます」
「へえ、街の見学なんだ。じゃあ、私が案内しようか。良いお店を紹介するし値引きの交渉もするわよ」
プラント様の机の皿を下げに来ていたアリスが隣から声をかけて来た。会話に割り込んで来るのは礼儀がなっていないので、サーシャが少し不機嫌な顔をしている。アリスはお構いなしに話を続ける。
「領都は広いし親切な店だけじゃないのよ。案内料を貰えるなら良いお店を紹介するわ」
なるほど、お小遣い稼ぎか。
「わかった。時間のロスと損するお金を考えれば問題ない。良いよ」
そう答えて、隣にいるサーシャを見ると彼女は不機嫌そうな顔をしながら財布を取り出してくれた。
「じゃあ、これ」
小銀貨を1枚、彼女の渡した。すると驚いた顔でこちらを見た。あれ、足りなかったか?
「あの、多いんだけど」
あれ、そっちだったのか。
おおよその目安(ただし食料品は日本よりも安い)
半銭(5円)、小銅貨(10円)、中銅貨(50円)、丸銅貨(100円)、大銅貨(千円)、小銀貨(1万円)、銀貨(10万円)、金貨(100万円)
「ああ、大丈夫だよ。それだけ案内を期待してるってことで。
母上と、妹、それに、幼馴染二人が喜びそうな物を見繕って欲しいし」
「ええと、幼馴染の二人も女の子よね。やっぱり」
「ああ、同じ年のね。アリスさんなら年が近いし喜びそうな物を選べるでしょ。妹は5,6歳ぐらいの子供が喜びそうな物が良いのだけど」
「それは大役ね。うん、喜びそうな店を案内するわ、まかせて頂戴」
翌朝、朝食を食べて領都の見学に出発する。
ランバート家に行くのは夕方なのでほぼ一日、見学時間があるのだ。
「じゃあ、午前中に食料品の店を回りたいな。それから服飾関係。一通りお土産が変えた後は、武器や防具、魔法道具が置いてある店を回りたい」
「オッケー! 任せて頂戴、じゃあ着替えてくるから待っててね」
元気そうにアリスが答え、奥に走っていった。
あれ、今のアリスの言葉はなんか違和感があったぞ。オッケーって言ってなかったか?
まさかな。聞き間違いかな。
考え事をしていると、サーシャとコルネオが少しだけ裕福な感じに見える平民服を着て降りて来た。そして後ろにいるゴンもその辺の平民と同じ格好だ。普段の鎧を着た格好に比べても、妙に似合っている。ショートソードを脇に指しているが、まったく違和感がない。
今日は、サーシャとコルネオ夫婦が主人で、僕とゴンはその護衛と言う感じにしているのだ。アリスもすぐに着替えて出て来た。
「お待たせ!」
おお、アリスがなかなか可愛い服を着て来た。
「アリス、今日はサーシャとコルネオ夫婦が駆け出しの商人で、僕はサーシャの弟。ゴンが護衛役と言う設定だ。覚えておいて」
「へえ、なんでクリス様が主ではいけないの?」
「成人した人が代表者の方が交渉がしやすいだろう」
「ふーん、そうかな。じゃあ私はクリス様の恋人役でも良いのかしら」
そういって、僕の腕を取った。なんと積極的な。だが年齢から言うとゴンの方が相手としては良いのでは?
そう思って言ってみたら、筋肉質の男性は好みでは無いのと告白もしていないのにゴンはふられてしまった。かわいそうに。
とりえず、そういう設定で僕らは出発した。