12.1 魔物襲撃
父上が連れて行った50人の兵士とは別に、鍛えた孤児に魔法部隊、それにシスコの父親とその部隊が残っている。残存兵力でも現状の想定している魔物発生ならば対応ができる。それにこの街には魔物の侵入を防止する専用の塀もある。
それほど大事にはならないだろう。
皆を含め、僕らは割と楽観視していた。
「隣町に魔物が出たらしい、ものすごい被害が出たそうだ。急いで、怪我人をこっちに運び込むなければならんが、まずは薬を持って応援に行かねばならん」
父上の代理として僕と母上も大人の話し合いに参加している。やはりこの地方にも魔物が出現したようだ。
「兵士を出さねばならんな、だがあそこが襲われたとなると、ここも安心はしておれん。どうするべきか」
おじさんが困っている。
シスコの母親は隣町からの嫁だ。他にも親戚関係は多い。たぶんおじさんとおばさんは一番に救いに行きたいのだろう。だが、自分が決めると、贔屓目で決めたと言われる。その状態で後でこちらに被害が出るような事があるとなんと言われるか。
つまり、おじさんからは言い出せないのだ。だから僕が決める必要があるだろう。
「おじさん、おばさんは回復魔法が使えるよね」
「ああ、使えるぞ」
「では、おばさんを派遣しよう。兵士は、残っている10人のうち5人を連れて行って。後は、おじさんの役割だ。怪我人を運ぶための協力者、護衛として出てくれる人を募って人数を増やして。ああ、だけどシスコは残してよ」
「いや、それではここの護衛が足りぬぞ」
「近隣地区の伝令を出す。内容はこう。
魔法の発生を確認した、緊急事態宣言だ。
女子供、それに余剰の食料を塀のあるここに集める。防御態勢が整っていない地区に食料があればそこに魔物が集中する。既に襲われた町がある。
どこも兵が足りないはずだ、皆でこれを乗り切るために集まれと。
これを神官様の名前で伝える。
馬を扱えるものを4人募れ。
神官様は、伝令に渡す書面をすぐに作って。
皆も、他の集落から人を集める準備を話し合って進めてくれ。
母上、子供達の受け入れを任せますよ」
皆が僕の方をみているだけで、動こうとしない。しょうがないな。
「さっさと動け、時間はないぞ。
隣町に行くものから準備でき次第に行け、動ける者はすぐにここに連れてこい。
重傷者は動ける程度に治療してからの移動だ、神官様に書面を書く紙を持って来い、他も急げ」
その言葉を聞いて、皆が一斉に立ち上がり動き出した。




