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11.2 おじいちゃんの来訪

 見学者は父上の部下達と、僕と護衛の二人に魔法を使う者達だ。それに母上も付き添っている。


「では、見せる」

 おじい様は、自分の剣を抜いて、しばらく瞑想した。

 すると10秒後には、体から魔力が立ち上った。

 まだ瞑想は続く、正しく数えてはいないが、戦略級の魔法を使う時の詠唱と同じぐらいの時間が経った後に、振りかぶり剣を振り下ろした。

 おじいさまの姿は、ただそれだけの事だった。


 実際には剣から大量の魔力が放出され、目の前で大爆発が起きた。


 戦略級の魔法に相当する剣撃。

「これは、なんともすさまじい威力ですな。剣でどのようにすればこうなるのか」


「アースを失ってから1対1の剣を変えたのだ。アースが亡くなったあの状況を覆せる方法を考えた結果だ。ワシは魔法が苦手だった、ゆえに剣でたどり着こうとな。これを手に入れたのは5年ほど前だ。そして3年ほど前からようやく確実に繰り出せるようになった。その代わりに今までの剣術は失われた。体の作りがこちらへと切り替わったかのようにな」

「そうでしたか、しかし、すさまじい。戦略級の魔法と同じ威力を出せるとは」

「おじいちゃん、すごいね」


 おじいちゃんは、僕が誉めたことでご満悦のようだ。


 おじいちゃんは、アースアシュリーに母上、いやこのばあいはおばあちゃん? を失い、悩み、苦しみ、ここに到達したわけだ。

 普通では到達できない、常識を覆す結果がここにある。ただの魔力を剣撃として撃ち込み、これだけの破壊力を持たせるなんて。

 魔法に神髄がイメージする事だが、これはとても不思議な結果だ。

 もしかして、おじいちゃんは使徒か神徒になっているのだろうか。


 おじいちゃんが滞在している間、確かに直接剣を合わせる指導はないが、言葉や振りの訂正などは的確だ。街で防衛を担当する人達が交代で集まり、おじいちゃんの指導を受けた。


 僕は、朝晩おじいちゃんと一緒に素振りと走り込みをやっている。

「小さいうちに体を作りこみすぎると大きくなれないそうだ。だからクリスは基礎を大事にしなさい」

 ああ、それ僕が言った言葉だ。自分に返ってくるとは思わなかった。

「はい、基礎を大事にします」

「うむ、魔法を鍛えるのも良いが、体力は何よりも大事だからな」

 そう言って、頭を撫でてくれたおじいちゃんの手はとても大きかった。


 おじいちゃんは翌年の春になるまでの1年間、この街に居た。

 そろそろ息子が心配だと、領都へと戻っていった。


 それから2年後、僕が8歳になる年。事件が起きた。夏になり始めた頃だ。

 父上に声がかかり、この街の防衛に携わる大半となる50人の兵を連れて領都へと向かった。

 起きたのは戦争では無い。


 魔物の大量発生だ。それが領都に向かっているらしい。

 子爵領で大規模な討伐隊を組むことになり、近隣の領主へも助力の要請をしているらしい。もちろん、この周辺の街からも兵士を集めているそうだ。

 父上達が出発してからすぐの事だ。その影響がこの辺りの地域にも表れ始めた。

 例年よりも魔物が活発化しているのだ。



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