11.1 おじいちゃんの来訪
あっと言う間に時が立ち、この夏で5歳になる。
母上は、冬になる前に出産し無事に女の子を生んだ。それもあり、父上と母上は元ランバート準男爵に出産の無事を伝える手紙を出していた。
春になり、元ランバート準男爵は部下を5人ほど連れて訪れて来た。爵位を継いだ準男爵は、子爵家に雇われているので来ていない。
「父上、よくいらっしゃいました」
「ああ、アンシェリー元気のようだな。それとバーディも。それでその子がクリスで、小さい子がイーファかい。アンシェリーに似てかわいい女の子だ」
イーファは生まれて半年、かわいい盛り。おじいちゃんは子育ての経験があるので難なくイーファを抱いてあやしている。貴族は自分で子育てをしないので、こうして幼子を抱ける人は少ないのだがおじいちゃんにとっては簡単な事のようだ。
「おじいさま、バーディ父上とアンシェリー母上の子、クリス・ラクサニアです。はじめまして」
「おお、クリスか、夏で5歳か。コルネオはわしに似たが、アンは母親似だったからかな。こうしてみるとクリスはアースに似ているな」
鏡が無いから知らなかった。実はアースアシュリーに似ていたのか。
「クリスはアース兄さまと一緒で魔法が得意なのですよ」
母上は、僕の魔法がどの程度か知らない。父上はこっそりと見ていたらしくかなり詳しく知っている。神官も父上には神徒である事を伝えているようだから父上に僕の事を隠す必要はない。
「クリスは男の子だろう、もう剣術は習い始めているのか、そなたの父は剣が上手いだろう」
「素振りはしますが、あまり教えて貰ってはいません。従弟のシスコとゴンは父上から指導を受けています」
「ああ、そなたには護衛役が付いているのだったな。ふむ、5歳児を鍛えるのは早いな。残念だがそなたの安全の為にもワシも周りを鍛えるのに留めておくか」
「お父様がそうして頂けると皆も喜ぶと思います」
「はは、だがワシ自身はあまり相手はできんがな、もう年じゃからな」
「お父様、言うほどの年齢ではないでしょう」
「そうですよ、まだお若いではないですか、私とも手合わせをして頂きたいぐらいです」
「それは、無理なんじゃ」
「どこかお体を悪くされたのですか」
「いや、そうでは無い。まあそうだな、言い方を変えると流派を変えたといえるじゃろ。説明しても解らんじゃろうから一度見せてやろう。それで納得するはずじゃ。クリスもおじいちゃんの剣を見るか?」
「うん」
魔法を思い切り放っても良いところへ案内するように言われ、皆で街から出てた。




