10.3 魔法教育
こうして、秋の間は外で練習を続けたが、皆が急に伸びるような事は無かった。
そして、冬になる。
今年も、小さい子はいつも通り僕の家に用意されている部屋に集まる。10歳以上の子供は教会の講堂に通って教導師から勉強を教えて貰う。
魔法の指導を受けている10人は、講堂で授業を受けた後で、家に来る。子供部屋は使われているので、別の作業部屋に集まって、そして黙々とリバーシを作る。
土魔法が使える子が白の石と黒の石を粘土のように変形させそれぞれの長い棒を作る。錬金魔法が使える子が薄く棒から薄い駒を切り離し白と黒を合体させる。
物が小さいので錬金魔法で全てをやる事もできるが、全員が錬金魔法を使えるわけでは無い。
全員が土か錬金のどちらかは使える。大半が土魔法で、コルネオとサーシャ、エリンの3人だけが錬金魔法を使える。
そして、作業は分担制にしてできるだけ同じ作業を繰り返させた。同じ魔法の繰り返しの方が魔力操作のレベルを上げやすいからだ。もちろん魔力操作のレベルが低いうちの話だが。
細かい作業までできるようになると、次はいろいろな作業を行った方が良い段階になる。こうして冬の間は基礎を繰り返し魔力操作のレベル上げを行った。
そして、魔法は使えば使うほど魔力量が上がる。同じ作業の繰り返しは魔力損失を減らしより長い時間魔法を使えるようになる効果もある。
冬の作業を繰り返すことで魔力の操作レベルを上昇させ、魔力量も増える。
これで彼らは秋から冬で、魔力操作のレベルが上がった。
普通に攻撃魔法や防御魔法だけで練習するのに比べれば数年分に匹敵するはずだ。
もちろん、おもちゃが沢山出来たので、資金繰りも順調だ。
こうして、冬が終わり春になると行商人が物納品である鉄のインゴットを持って来た。
それらは剣や防具ではなく生活用品を作るのに使った。
剣や防具は父上が街の収益から揃える物だ。僕らの稼ぎは戦いではなく、平和。つまり生活向上の為に使わせてもらう。
料理をするために包丁、そして鍬や鎌といった農機具を優先して作った。
それらの鉄器ができる事で農業の生産効率が良くなった。
鉄器があれば、たとえ僕が物を作らなくなっても残る財産だ。これは民衆にとても喜ばれた。もちろん、魔法組も頑張った。鉄製品の加工は土魔法ではできないので、錬金魔法を使える子だけになるが、鉄製品の加工によってさらに魔力操作のレベルが上がった。
だが、せっかく作った物なのに、問題があった。
なんの功績もなく鉄器を配るわけにはいかないのだ。
作った物だけが倉庫に山積みになった。
父上や神父様が話し合い皆が揉めない言い訳を考えて貰い、それらの面倒なことはすべて大人に丸投げした。僕は気にせず作るだけにした。
魔法組の練習成果を見る為に、ため池と井戸作りを始めた。
詠唱し魔法のイメージを定着させる。そして教わった原理に従って攻撃魔法を行使させる。すると少しだけ地面が削れる。
単純に土魔法で穴を掘った方が効率が良いが、それはそれ。これはこれ。あくまでも鍛錬の一環。
たまには攻撃魔法をちゃんと使って自分の実力を知る必要もあるし、魔力操作のレベル上昇で攻撃魔法の威力が自然と上がるが攻撃魔法自体も練習しなければ、その効果が十全に活用できるわけでもないのだ。