8.2シスコとゴン
急いでやって来たのはシスコの母親と僕の母上だった。
「母上、シスコが魔法を使って僕に攻撃しようとしたのでゴンに抑えて貰っています。
証言はこの二人が。ゴン、もう良い。放してやれ」
ゴンがシスコの上から移動し、自由にした。
そこにシスコの母親が近づき体をペタペタと障っている。怪我が無いか確認しているのだろう。
「シスコ。なんて事をしたの。すぐにクリス様に謝るのです」
「ですが母様、クリスがわたしの事を馬鹿にしたのです」
「黙れ、シスコ。この場では、母上達はお前よりも上位だ。お前の母はなんと言った。言われた言葉をちゃんと聞いたのか」
「そうです、シスコ。まずはクリス様に謝りなさい」
「ですが母上」
「シスコ、そもそもどのような理由があろうとも、相手が何者だろうと、平時において魔法を人に向けようとするような危険な行為を見逃す事はできません。あなたには、魔法を教える時に何度も何度も言い聞かせたはずです。今なら子供も失敗で終わらせる事ができるの。謝りなさい」
シスコの母親は、親族がシスコの父親を抑えるために厳選して選んだだけあり、今の現状をきちんと理解しているようだ。
「さあ、シスコ」
「魔法を使おうとしてすいませんでした」
そう言ってシスコは下を向いた。
「お許しください、と、そう言いなさい」
「お許しください」
「子供のした事です。幸い、実際に魔法を発動させる事にはいたらなかった。
だから不問にしましょう。それで良いですねクリス」
「そうですね、魔法についてはそうしましょう。ですが、シスコは詳しい話をすると不敬罪になるような暴言を吐いた。子供の失敗としての処分については問題ないが、僕に対しての態度が臣下としてはふさわしくない。このまま育つようでは将来に禍根を残す、その対処について聞きたい」
「クリス様、そのような事を。わかりました。今後はいっそう厳しく躾をしましょう」
「春までに矯正し僕の護衛に就けるようにして欲しい。その後の働きや態度によって、今回の事を許そうと思う」
「さようで、解りました。
やり直しの機会を頂けるとの事、大変ありがたく。
今後は、わたくしが誠意をもって指導をいたします。
恩赦に感謝いたします」
「母様、そんな。なんで母様がこんな奴に膝をつくのですか」
「シスコ、よく聞きなさい。
この街で最も偉いのは騎士爵をお持ちのディーン様。
それに次いで、奥様であるアンシェリー様。ディーン様のお母様。
そして、クリス様と直系の後継者が続きます。
その後に、あなたのおばあさまその息子の貴方のお父様、妻であるわたくし、最後にあなたです。
本来は年齢が考慮されますがクリス様はきちんとお話になる。ならば身分順として、クリス様の方がわたし達よりも上位として扱います。
今は簡易の裁きの場になっています。”場”では順位を守らなければいけません。
クリス様は、順位を理解せず暴言を吐いたあなたに、処罰として死刑を言い渡すこともできます。ですが命を取らない、やり直しの機会を与え臣下としての働きを見せれば不問にすると。
クリス様は確かに3歳と幼い身。なのにあなたよりもしっかりとした考えをお持ちよ。あなたもしっかりとその両目で彼を見てお仕えなさい」
……
「はい」




