8.1シスコとゴン
洗礼式が終わり、秋の収穫が始まる。猫の手も借りたいほどの忙しさ。3歳のこの身でも手伝える事があれば手伝おうと走り回っていた。
街を回っていた時に、いじめられている子供を発見した。いじめられている子供はゴン。いじめているのはシスコのグループ。
「何をしている」
「シスコ様、長の子供です」
「なんだ、お前か。チビのくせに、少し口が達者になったからと俺様に口出しするとは。
そもそも、お前には関係ないだろう。これは、年長組の俺たちの問題だ」
「年上だろうと、皆で一人を相手にするのは見過ごせない」
「うるさいぞ、長の子供だからって、いい気になるな。
うちの父様は、前の長の弟だ。
長が亡くなった時にお前の父ちゃんが勝手に長になっただけだろう。
俺の父様を差し置いて長に収まったからって、お前までいい気になるなよ。
お前が偉そうにするんじゃない。うちの父親にはまだ長の権利が残されているんだ。
もちろん俺も後を継ぐ可能性がある。お前は年下なんだから、俺の言う事を聞いておけ。そうすれば、俺が長になった時に多少優遇してやる」
うーん、こんな考え良いのか? まあ確かに騎士爵の継承権は残されている。僕が成人になる前に父上が死ぬと、もしかしたらシスコの父親が引き継ぐ可能性もあるにはある。その後、シスコに継がれるかどうかは解らないと思うのだが。それを今の段階からそれを言うのはどうだろう。
「シスコ、お前の言い分はある程度理解した。
とりあえず僕と無関係なゴンに対して口を出して欲しくないと言うのも解った。
だから、こうする。
ゴン、お前を護衛をして雇う。今からお前は僕の護衛だ、解ったな」
「何言ってるんだ、お前。だいたい、俺の事をシスコと呼び捨てにするんじゃねえよ。
年下のくせに。お前は俺の事をシスコ様と呼べ」
「シスコ、ゴンは僕の護衛になった。つまり関係者になった。
お前が手を出すなら、長の身内に手を出したのと一緒だ。退け」
「だから言ってるだろ、シスコ様だ。この3歳のチビが偉そうに。
俺はもう、魔法も使えるんだぞ。今の長よりも僕の方が優秀なんだ」
「そうか、だが今の長は僕の父上だ。反抗するなら反逆罪に問われるのはお前だ、シスコ。
もう一度言う、手を退け」
「シスコ様、やばいですよ。こいつ口が達者だし、ディーン様に告げ口されますよ。退きましょう」
「お前たちまで。くだらねえ。こんなガキの言う事なんか聞けるか。
ふふふ、そうだ。こんなガキ、ちょっと脅せば大人しくなるさ。
俺様の魔法を見て、ビビれば良いんだよ。ちょっと怪我したぐらいならばれねぇって」
「シスコ様、やばいですよ。ダメですって」
いきなりシスコがブツブツと唱え始めた。初級の火魔法を気らしい。
「ゴン、仕事だ、シスコを抑えて口を塞げ。詠唱させるな」
今までボーと立っていたゴンは命令されるとすぐさま動いた。素早い動きでシスコを抑え、倒しこみ口を押えた。
同じ8歳にしても体格の大きいゴンに抑えられシスコは身動きができない。
才能がある8歳児と言えど、魔法を習い始めたばかり、無詠唱での魔法はできない。そして詠唱をするならば口を塞げば魔法を使えないのは解っている。
僕が魔法を使って反撃をすれば、大事故になる気がするので、ここで僕が魔法を使うのは自重した。
「お前、大人を呼んで来い」
「は、はい」




