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7.7クリスとして生きる

 もうすぐ秋だ。やっと領都から神官が来て洗礼式をやってくれるそうだ。

 前日に、両親に僕の名前がどうなるのか聞いてみた。なんと幼名から洗礼名になる時に名前が長くなるのは高位貴族だけらしい。子爵家はたまに。男爵家以下は幼名のまま。あるいは母上のように、育つ家が変ると洗礼で名前を大きく変えるそうだ。


 つまり、僕はクリスのままと言う事だ。


 翌日、洗礼式は馬車の中で行うらしい。

 馬車の中に入ると簡易の祭壇ができていた。足元にはいつもの魔法陣がある。どうやら洗礼式はこの魔法陣が重要らしい。


「では、そなたをクリスと命名する。ウルカヌス神よ、信者クリスに魔法を授けよ。そして健やかな成長をお祈りください」

 あ、(かぎ)が開いた。

 …

 あれ、だけど変だ。アクアの時に感じた最後の力が体の中で暴れている感じがする。それがまったく制御ができない。もしかして、信者の洗礼ではダメなのか。

「神官様、まずいです。魔法の力が制御できない。洗礼をやり直して、信徒じゃなくて神徒の方で。早く」

「え」

「早く、急いで魔力が暴走する。これを制御するには神徒の洗礼が必要なんです」

「わかりました。ウルカヌス神よ、神徒クリスに魔法を授けよ。そして健やかな成長をお祈りください」

 すっと体の中を何かが駆け抜けた。そして力が落ち着いていく。魔力が静かに体にしみこむように暴走が鎮まる。

「クリス、大丈夫か」

 外から父上の大きな声が聞こえる。

「大丈夫です。魔力が急に解放されたので魔力暴走のような状況に陥りましたが、私が押さえました。もうしばらくすれば落ち着きます。

今は、中に入らないでください。魔力の制御中です。集中できなくなるのは困ります。お静かに」

 僕はその声を聞きながら魔力が落ち着くまで瞑想を続ける。体感的には数分たった気がするがもっと短かったかもしれない。

「神徒クリス様。大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫です。魔力は落ち着いたみたいです。

やはり神徒で洗礼を受けないとダメだったのか。

神官様、この事は秘密にしてください。僕はまだ幼い。前の神徒達のように生き急ぎたくないのです」

「ええ、解りました。もちろんですとも、我らはクリス様のおっしゃる通りに」

「それと、お願いがあります。この地に教会を作って頂けませんか。そして、神官にはこの地にいて頂きたい、教会には僕の近くに居て欲しいのです」

「ええ、もちろん構いません。ですが、私でよろしいのでしょうか。

もっと高位神官をお呼びした方が良いのでは」

「出会いもウルカヌス神の導きです。ぜひあなたにこの地で布教をお願いします。

そして、できれば教導師も呼んで頂ければ。この地には布教と共に文字や算術を教える者が必要なのです」

「わかりました。ですが、教会を作るにも教導師を雇うにも予算が必要になります。

最上位である教皇様には起きたことをお伝えしなければなりません。

それはご了承いただけないでしょうか」

「こっそりこの地に来るなどの馬鹿な事をしないなら、話しても構いません」

「ではそのように」

「今日はありがとう。疲れたと思いますが、今日の残りの子供達と、この先の街の子供達にも洗礼をお願いします。それと僕の頼みはそこまで急ぎではないので」

「ええ、お任せください」

 よし、どさくさに紛れて教会と教育の両方を手に入れたぞ。



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