5.6子爵家の息子として生まれる
到着後、作業を班分けし建物が立ち始めた。既存住民は新しく作る僕らの棟の近くに作り、その周りに既存住民の家を作り直した。
また、近隣の農民達は夏の間は農地の近くにある今の家に住んでもらい、冬になると新しい建物に入居する。それまでは工夫達の住み家とした。
こうして、秋の頃になると予定数の建物が立ち並んだ。少なくとも今年の冬が乗り切れるだけの食料も確保できた。
借りた工夫達は、冬になる前に帰って行った。
「集落への通達は終わっています。食料も暖房用の炭も配られ、今年は餓死者なく過ごせる予定です」
「想定外の雪が降らなければ大丈夫だろう。ところで鉱山は冬もやるのか」
「鉱山内にこもる者達はその予定です。地下の方が温かいそうですから」
「では、僕らはここで石炭の研究だな」
「この石を本当に燃やす事ができるのですか?」
「ああ、炭よりもさらに効率よく温度を上げる事ができる。ただ、効率よく燃やすためには酸素を送り込む装置が必要になる。一番難しいのが煙の処理。環境汚染の対策をしてから使わせたい」
「環境汚染ですか?」
「ああ、変な燃やし方をすると、体に良くない物質がでるんだ。鉄鉱石を溶かすだけに使うならまだしも、一般家庭の暖房器具に使われ始めるとか大量に使われるようになると困るんだ」
「量次第ですか、ここで鉄を作るだけなら大丈夫と」
「ああ、その程度なら大丈夫だろう。鉄の採掘量を10倍に増やすとか、各家庭が使い始めると消費量が段違いだ。少なければ問題にならないが、多いと肺の病気になったりいろいろと影響がでる。もしかしたら、清浄の生活魔法を発生させる魔法道具を作って組み合わせても良いのか知らないが、無策であるのはダメだと思う」
「生活魔法の常時発動ですか、照明用の魔道具はありますが。
水を浄化する魔道具は聞いた事があります。役に立つかもしれませんので探しておきましょう」
「ああ、頼む。それでは、このフイゴと、最新の炉を使って鉄鉱石から鉄を分離してみるか。
炉から取り出すと、固まる温度の違いによってある程度分離されるはずだ」
「ある程度ですか」
「魔法、特に錬成魔法で分離もできるからね。細かい部分は魔法任せでも良いだろう。
魔力だけで鉄鉱石から鉄を作り出すより、はるかに効率が上がるはずだ。
ガラスもそうだったろ。
材料の分類から魔法に頼ると魔力が大量に必要になる。
材料を別けてあれば、それだけ魔力に頼る部分が減る。結果、生産量が上がるはずだ」
「冬の間に確立させ、春からは鉄器の増産、来年は自給率の向上と自力で食料確保ですね」
「ああ、仕組みさえできれば、数年先には侵略者の追い出しが可能となるだろう」
こうして、6歳の冬が過ぎて行った。




