4.4伯爵家の息子として生まれる
「アース様、もっと早くお声をかけして頂いても良かったのに」
「そうきたか、アウロスならこちらから声をかけなくても探し出してくれると思っていたよ。アウロスは、手紙を受け取ったから僕だと解ったのかい、それとも可能性を考えていたからこの領地に来たの?」
「もちろん、神童の噂は拾っていました。ですが、噂だけでは確証には至りませんでしたので、調査を兼ねてこの国にきました」
「確証がないのか、それはどうして?」
「あなた様が、あまり外を調べている様子が無いと聞いていたからです。特にカルーシア王国の事です」
「ああ、そうだな。確かに調べていない。だけど別に調べる必要もないと思うけど」
「では、ご自分を害された者を既にご存じで」
「いや、知らない。興味が無いな。まあ、兄と妹がどうなったかぐらいは気になったけど、元気にしてると言う情報は労せずに手に入るからね」
「そうですか。あの場に居なかった私はやはり悔しくて。色々と手を尽くしたのですが残念ながら。第1王妃派の工作だとはわかっているのですが、あそこは闇が大きく証拠を見つけるのは無理でした」
「第1王妃か、別にあんな事をして僕を害さなくても第1王子が順当に王になっただろう。第1王子が新国王として立っても、あの国は大丈夫だろうと考えている者は多いだろう。兄上は賢い、それに民を思う心もある。
僕を殺そうとしたのは、神徒が力を付けるのを恐れた他国じゃないか。あの毒蛇の術者は国内にいないだろう。調べるところが違うから証拠が見つからないとも言える。それよりもアウロスが危険に飛び込んで死んでしまう方が問題だ。前の死因への係りを調べるのは危険だ。もう良い君が唯一の僕の使徒なんだ気を付けてくれ。」
「は、ありがたきお言葉。それで当面はどうされますか?」
「うーん、僕の運命を考えると次の転機はやっぱり10歳だと思う。それを無事に過ごす事が当面の目的。幸い、父上は剣術の最高位。今世では体を鍛える。蛇ぐらいは楽に対処できるようにね。そして前回覚えなかった攻撃魔法から覚えるつもりさ。自衛の手段を持たないとね。それと、母上が身重だ、父上を助けて時間を作ってあげたい。前回と違ってこの家族は家族愛にあふれている。とても過ごしやすいんだ。だから家族を大切にしたい」
「わかりました、当面は環境整備ですね」
「ああ、それとアウロスには神官の職位を得て欲しい。そもそもウルカヌス神の使徒なのだ。それなりの職位を持ち、洗礼、再洗礼の儀式が行えるようになっていて欲しい。あとは最終目標だけど侵略された北の地へ行く。あの地を奪還しなければならない」
「奪還と言う事は武力を手に入れるのですね」
「将来だぞ、僕が大きくなってからだよ、もちろん。最終目標だと言っただろう。その時が近づいてからで良いよ。君には貴族との調整、平民とのやり取り、それらが絡む流通などなどがお仕事。最後に地味な仕事だけど信心深い信者の獲得もだ」
「はい、神より遣わされた神徒であるアース様の望みとあれば、全力で答えます。わたくしが使徒として人々を導きましょう」
それから、僕は父上から剣術を、色々な種類の家庭教師から授業を受ける。それを受けながら感じたことをアウロスに伝え、改善が必要な所は提案した。アウロスはそれをどうやって展開するのか考えて色々な人に仕事を割り振ってくれる。その傍らで上位神官の資格を取ろうと頑張ってくれた。
母上は無事に女の子を出産した。これで弟と妹ができた。3人兄弟だ。母上はいつも優しく、父上も面倒見が良い。上位貴族では普通ではないが、とても暖かい家族だった。いつも家族で食事をし、仲良く暮らせていた。
今世はとても充実していた。
10歳を前に平穏な日常を崩す悲報が伝えられた。カウイル圏のサクラニア王国が攻めてくるとの一報だった。




