3.5王子として生まれる
無事に7歳になった。毒を入れた直接の犯人は捕まり死刑となったが、本当に犯人だったのか怪しい。黒幕も、狙いも不明なままだった。陛下のスープに毒を入れてはいたが、食事の仕方を知っている者からすれば、僕と母だけを狙ったとも言える。ならば王位継承権争いだろう。僕が幼い時から優秀と言われ、第1王妃派から狙われている可能性があるからだ。だがあちらは第1王子。僕よりも5歳、兄よりも二つ上。年齢よりも優秀な成績で、誰もが王位を継承すると思っている。あえて、第2王子を飛ばし第3王子の僕を狙うとは考えにくかった。
「アースヴェルギウス王子、見つけましたよ」
アウロス先生が伝えて来た。
「何を見つけたのですか?」
「時期、状況を考えるに、殿下の言われていた地はここでは無いかと」
アウロス先生が示した地図上の場所は、カルーシア王国王都から西へ少し離れた辺境だ。
「グルースバルク男爵領、ここに相当数の農奴が存在し7年前に隣の領地アルハザード子爵の息子が訪れています。その時に歓待にあたった農奴の女がアルハザード子爵の息子にかみついたと言う反逆の罪で殺されています。翌日その夫と息子も死刑となっておりました」
日付を見てびっくりした。僕が生まれた前日の出来事だ。死んで生まれる直前で僕の魂が入ったのだろうか。
「行きたいですか?」
「いや、その貴族には会いたくもない。だが農奴を助けるすべはないのか?」
「殿下の研究された成果は出つつあります。これよりもっと大掛かりに試験を行う必要があるでしょう。
調べたところ男爵と子爵の両名は税のごまかしをしているようです。
それを報告し農奴の買い上げと農作物の試験を行いましょう。
それとくだんの該当者には何らかの罪を償ってもらわなければ」
「ああ、頼めるか」
「はい、お任せください。殿下。
わたくしは、貴方様に忠誠を誓いたいと思っております。
この件が無事に成功しましたら、殿下個人の部下として採用ください」
「え、君は優秀な人物だろう。
兄上に仕官するなら推薦状を書こうと思っていたが、僕のような将来王族から降位する者に使えてもしょうがないぞ」
「ふふ、何をおっしゃいます。
殿下はわたくしの主としてふさわしい方です。
外の誰よりも仕えたいと思う存在ですよ。
さて、では忠義を見て頂くために一仕事してまいります。
レオンヴァッカロー様、アロイスを借りますよ」
「ああ、わかった。
わしはこちらでの準備があるから頼むぞ」




