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蝶よ、花よと。それはそれは大事に育てられた。
家族の仲は良好すぎて喧嘩をする姿なんて見たこともないし、二つ年上の兄にいじめられた記憶なんて一切ない。
中高大と女子校で過ごした日々も、毎日楽しかった。
この就職難の時代に大手企業に内定は貰ったし、人生は順風満帆。
楽しすぎたのだ。
言い訳をするようだが、女子だけでの生活でも楽しすぎたのだ。
「人生に絶望した…」
新川 真凜。22歳。
気付けば、彼氏どころか、浮わついた話1つさえない。
そんな人生を歩んでいたのだ。
私を不憫に思ってか、大学に入ってから仲良くしている友人たちが開催してくれた合コンを終えた夜。
私は布団にくるまりながら、初めて自分の人生を恨んだ。
自分で言うのもなんだが、顔は悪くない。
しかし、一緒に参加した友人たちの化粧の腕。服装のセンス。男子を楽しませる会話の選び方。
それはどれも、私には圧倒的に足りない女子力という合コンでの戦闘力の低さを思い知る結果となった。
「サラダの取り分けなんて自分が食べたい分だけ取ればいいじゃん…」
計10年に及ぶ女子校での生活。
そう言えば、誰しもがおしとやか――。お嬢様――。
なんて発想をするだろうが、実際は男がいない分たくましく育った雑草の群れである。
花園なんて言葉には程遠い。
「そもそも、女子校育ちの女子がお嬢様なんて二次元だけだっての!夢を持ちすぎだろ!」
そして問題が1つ。
彼女が知っている成人男性と言えば、家族以外では芸能人。もしくは乙女ゲームに出てくるようなイケメンだけなのである。
男に夢を持ってるところは、自分もなのだが気付いてない。まさに同族嫌悪としか言い様がない。
「はぁ…。明日学校行かなきゃいけないし寝るか…。」
この憂鬱な気分はどうすることも出来ない。
それに卒業間近に迫った二月であるが明日は大学に用がある。
ならば寝るしかないだろう。
ぬくぬくとした暖かい布団。
酒が入ってることもあり、私はすぐに眠りに落ちた。
そう。確かに自分は布団で寝たはずなのだ。
なのに、ここはどこだろうか。
見渡せば草原。遠くには森さえある。
高い建物なんてどこにもない。
見上げれば青空。
夢とは思えないほど、爽やかな祖父母がいる田舎に帰ったときのような土の匂い。
「ねぇ…ちょっと、待って…。」
唇が乾いていくのがわかる。
多少やけになり、飲み放題のもとをとってやると何杯かは呑んだが、酒のせいだけではない。
不安が体を蝕んでいく。
思考が追い付かない。
「ここは一体どこなのー!?」
ただただ、言葉が自然とこぼれた。
誰かに向けて言ったわけではない。
返事が返ってくるとも思ってない。
しかし。
「ここは、アマジオラスの森の近くです。」
ピコンという明らかに人工物の音と共に、男とも女とも捉えられる声が近くから聞こえてきたのであった。
初投稿になります。
お付き合いよろしくお願いします。