お約束の転生
真面目に生きてきた俺、38歳の春。通勤途中の交差点にて高齢者の運転する軽自動車に轢かれて死亡した…咄嗟に子供を庇ったのが原因だが、幼い命を救えたのだから悔いは無い。
そして、現在は神様の前に立っている。
お約束の転生ってやつをやってくれるそうなのだが…
「せっかくですからチートってのを頂けませんか?」
「あまり無茶で無ければ可能ですよ。どんなのが希望ですか?」
「鑑定、アイテムボックス、全魔法適性、全武器適性、記憶もこのままでとか、ついでに好きな食べ物か調味料を出せるのはどうでしょうか?」
「定番ですね。しかし全部叶えるのは厳しいです。食べ物とか調味料は種類や量に制限は付きますが問題無いでしょう。他はヒューマンで無ければ何とかなるのですが…」
「と言いますと?」
「生体ランクを下げて亜人とかなら可能ですね。貴方の善行ポイントはその歳としては中々なのですが、御希望のチート全部となると足りません。亜人なら可能なのですが良いですか?」
この時、俺は勘違いしていた。亜人と聞いて、よく読むラノベの定番のエルフとかドワーフ、或いは獣人とかだろうと思ってしまったのだ。ちゃんと確認すべきだったのだが、チート持ち転生という憧れのイベントで浮かれてしまったのが間違いだった。
「分かりました。それで構いません。転生先の世界はどんな所ですか?チート有りなら亜人でも問題無いでしょう?」
「いわゆる剣と魔法の世界、中世的で身分制度も有りますが厳しい生存競争とかは無い穏やかで環境的には平和な世界ですよ。定番の魔王とか危険な存在は居ませんが、ドラゴンなどの強大な魔物は居ます。ですが、かなり奥地に住んでますから、わざわざ出向かない限り危険は有りません。亜人でも充分に暮らしていける世界ですね」
「分かりました。では、どうか宜しくお願いします。こういうの好きだったんですよ」
「では貴方の次世に祝福のあらんことを。いってらっしゃい」
こうして神様に見送られ、俺は転生した…亜人へと。