01 事の始まりは。
この作品はいわゆる異世界ファンタジー…の予定です。
初作品になります。
物書きのお約束すら知らない素人ですがよろしくお願いします。
東西に伸びる街道がある。
北側は木のまばらな草原が広がり、南側には大森林が広がる。その街道から森の奥1.5カミル(1.5km)程を南東に歩む青年男性がいた。
髪は黒に近い銀髪。
目は僅かに紫がかった黒。
年は20代半ばといったところで、背は180ソミル(180cm)位。
膝丈まである濃いこげ茶色のローブを緩く羽織った中肉中背。
筋肉質とまでは言えないのにローブの下、左肩の背中からは大剣の柄が見える。
ローブの内側にはハーフレザーアーマーに両腰にはナイフが見える。右背には丈夫そうな革製の荷袋を引っ掛け、邪魔な草や蔦を払いつつ進んでいた。
数刻程前まで彼は街道を東に向かっていた。
と、南の森から鳥だの羽つきモンスターだのが一斉にに飛び立つのを見、警戒しつつ進んでいたが、自分に目を向けるでもなく散り散りに飛んでいくのを見て一安心した所を…
晴天の空を切り裂くくっきり見える大音量の落雷
が森に見えた。というか音と衝撃で飛び上がった。
「お……おおぉ…!心臓に悪いな!寿命が10分は縮んだぞ!!」
……思ったより大した事なかったのか……。
まあ、彼の中で好奇心が勝ってしまい今に至るわけだ。
そしてしかめっ面のままブツブツ言いつつ歩みを進める。
「やっちまったかなぁ。面倒事の予感しかしない。中型の羽つきまで前もって逃げるなんて、間違いなく何かが起こした術式ではなく前兆ありきだ。古代遺跡…なんてこの辺じゃ欠片も情報聞いたことないし、やっぱり面倒事かなぁ。」
ため息をつきつつ、好奇心につられる彼の歩みは止まらない。
更に2時間程進み、落雷の辺りまでもう半時くらいかと考えてた時、
「クウォォォォォォォォォ……」
獣の遠吠えが進行方向奥から響き渡る。呼応するように彼方此方から似たような短めの遠吠えがする。
「こりゃ樹狼の遠吠えか…。風下の俺が気取られる可能性は少ないし、狙いは俺以外の獣か何かかな。声からして10〜16頭…あと少しなのに、出くわしたら厄介かなぁ。」
厄介という割には困った程度の顔な青年であった。後ろを振り返り、今更だよなとため息ひとつ。時々聞こえる遠吠えの風上にならぬよう、できるだけ静かに目的地に向かう。
(樹狼は2ミル弱の大柄の狼の一種で、焦げ茶と薄茶色の縦縞の姿で、基本的に頭を含む2〜4頭一組の4隊で連携して狩を行う狼で、森林でも機動性が高く低ランクの狩人や冒険者はチームを組んでも僅かな油断で壊滅することがある。)
大して進まぬうちに散発的に聞こえていた遠吠えの移動方向が変わる。こっちに向かって。
「ん?あぁ、やっちまったかなぁ?」
気取られたかとまたため息をつこうとしたとき、
「Прекрати! Не приходите! …лк!? …nde!?…-то! ta……te!……!」
何か聞こえる。
「人…子供の声か!?こりゃぁ…まずいぞ!!ああ、やっぱり面倒事じゃねーか!」
愚痴りつつ声の方へ駆け出す。近づく多数の獣の気配を感じつつ数百ミル駆け抜け少し開けた場所が見える。
と、前方の茂みの向こうからボロボロの状態の子供が転がり出てくる!すぐ後ろからは樹狼が4頭!
「最悪だなこりゃ。」
子供の倒れている開けた場所に飛び込むと、子供はよく分からない言葉を叫びながらこちらに来ようともがく。
「後だ!伏せてろ!!」
横を走り抜けざまに子供の頭を地面に押さえつける。
ボスッ!!
『あれぇ?今地面に食い込んだ感触が…やっちまったか?』
と一瞬考えつつも距離を取るため前に突っ込みつつ両手は腰へ。
「三方を塞ぎながら退路に罠を貼るつもりだろう…がっと!」
ひし形陣形で既に三呼吸分まで突っ込んでくる樹狼の両翼2頭の眉間に向け、微妙な時間差でナイフを投げ、命中の確認もせぬまま右足を僅かに下げる。それを軸に飛び込んでくる先頭の上顎辺りに斜めにすくい上げるような左回し蹴りを叩き込む!
「「「ガフアッ!」」」
3頭ほぼ同時に悲鳴をあげるのを聞きながら右手でローブの留め金を外しつつ、予想通り飛び込んできた残り1頭にローブを叩きつける!
が、早かったか!
広がったローブが鼻先をかすめて空を切る瞬間、樹狼は獰猛な笑みを浮かべ、次の瞬間には目を見開く!
ローブが視界を横切った先にあったのは、青年が駒のように回転しながら左手にした大剣を横薙ぎに振るう姿!
表情もそのままに声も無く首を飛ばされた樹狼の体をかわしつつ、最初の3頭に確実にとどめ刺す。左右の茂みの先の気配を警戒しつつ、
「何とか前を潰しちまえばその戦術は崩れて負けない時間が稼げるわけだ。」
気絶してるらしい
『気絶で済んでりゃいいが…』
子供の左右に倒れた樹狼からナイフを手早く回収し、大剣を来た方向の地面に付き立ててから、ブーツの仕込みナイフ各二本を近づいてきた左右の気配に向け打ち込む。
「「ギャィン!」」
右から悲鳴が2つ聞こえた。
「あ、当たったか。えーとあいつは…多分生きてるな。」
ひょいと子供を抱えて樹狼の死体の影に手早く押し込む。雑そのものだが迎撃してる間に殺られでもしたら寝覚めが悪い。
怯みが出て連携の乱れた挟撃が始まる僅かな時間の間には迎撃体制は整っていた。
その後、ナイフや体術を駆使しほんの数分でさらに5頭を屠り2頭に大怪我を負わせた辺で、後方から一回り大きな黒っぽい樹狼が2頭を引き連れ現れる。
やや遠巻きに牙をむき出し激しく威嚇してくる樹狼に向け青年は、
「お前が頭か。頭は総じて賢いらしいな。賢いお前なら勝目は薄いと分かってるはずだ。生きてる2頭を助けたけりゃ静まれ。」
そう言いながら彼は腰からゆっくり青い液体の瓶を取り出し、口のコルクを外して前にかざして軽く振る。
「これがわかるな?」
暫く唸り続けた樹狼の頭は鼻をヒクヒクさせ周りの樹狼に一声吠えた後、唸りはするものの徐々にむき出した牙を収め、やがて青年から顔を逸らす。こうなれば彼らは仲間を傷つけぬ限り手は出してこない。
亜人獣人を含む人族と牙を何度も交えた樹狼の頭は、直接或いは遠巻きに敵を観察し、回復薬の臭いとその『意味』を知っている。
「よし、取引成立だ。」
彼はゆっくり負傷した2頭に近づき、傷口に回復役を振り掛ける。
「「ギャゥッ!」」
2頭のこらえる様な悲鳴と共にその傷口から白い煙が上がる。
(回復薬は魔法の回復薬呪文と違い、再生力を爆発的に高める類のもので、通常治る間の痛みも圧縮される副作用がある。効き始めはぶっちゃけ物凄く痛い。質の良い薬は副作用や効果にプラスに働くが、質が悪ければ当然マイナスに働く。)
しばらくしてやがて煙が消える頃には傷は塞がっていた。
「理解できてるかわからないが……治せる程度の傷良かったな。まあ暫くは無理させない事だ。」
頭に向けてそう言うと、彼は一応片手にナイフを手にしたまま倒れたままの子供の脇にしゃがみ込む。次はこっちだ。
少年の言葉はロシア語混じり…です。ロシア語は色々確認はしてますが機械翻訳中心なので、精度に問題があるかもしれません。
ウェブ投稿に慣れてない為、投稿から一週間ほど修正をつづける可能性があります。
※5/9までの変更点
この世界の回復薬について説明が抜けていたので追記しました。
青年の説明がいくつか抜けていたので追記しました。
おかしな台詞や表現の修正を行いました。