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天使  作者: amakawa saiji
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誕生と監禁

場所はフランク王国(後のドイツ)、時はまだ魔女裁判が徹底的に行われ魔女を地球から消滅させようという時代。一人の天才科学者、名をゲシュペンストと言う。生命の神秘に取りつかれた彼は、死から生を作る研究を始めた。

 

 手始めに自分の身内を殺した。夕飯のスープに毒を混ぜて母親と父親を。次に眠っている妻と息子にナイフで心臓を一刺しして殺した。妻の家族達には殺し屋を雇い代わりに殺してもらった。そして生き返らせる研究を始めた。ゲシュペンストは信じていた。この研究が成功すればまた妻や息子は戻ってくるのだと。そして、一生涯、永遠に一緒に生きていけるのだと……。


 しかし、神はゲシュペンストを許さなかった。罰をお与えになった。

 その研究の過程で一匹の化け物を生み出してしまったのだ。

 その化け物は人の言葉を喋り、人と同じく二足歩行をしている。二メートルはあろうかという大きさではあったが、そんなことは驚くに値しないほどにただ一つ決定的に違う所があった。その容貌の醜さである。その醜さと言ったら、人がどんな苦痛を味わって死んだとしてもこの顔にはならないであろうというくらい醜かった。

 

 ゲシュペンストは人の理を破ってしまった自分に神がお怒りなのだと思った。それでも彼はもう後戻りできないところまで来てしまっていた為、その化け物を地下の牢屋に閉じ込めて勝手に死ぬのを待った。

 何日か昼夜問わず酒を飲みまくるとそんな化け物を作ったことすら忘れてゲシュペンストはまた研究に没頭した。

 しかし、ゲシュペンストは自身が死ぬまでに研究を成功させることは遂に出来ずに無念のままこの世を去って逝きました。

 ゲシュペンストは死ぬまでに思い出すことはなかったが研究室の地下の牢屋には、あの日からずっと忘れられたままだった一匹の化け物が息を潜めていまかいまかと外に出られるのを待っていた。

 

 場所はドイツ、時は現代、あの時から何世紀も経過し昔のような血気盛んな時代はとうに終わりを迎えていた。

 子供たちの遊び場は日に日に減っていく中、廃墟の中を探検する遊びが流行っていた。

 とある五人の少年少女たちは町のはずれにある随分と前から人が住んでいない屋敷に目を付けた。そう、それこそはゲシュペンストの研究室である。そんなことを知る由もない子供たちは好奇心に満ちた目をしている。一人の少年を除いて……。

 玄関の扉には鍵はかかっていなかった。入ってすぐ右側に燭台があった。一人の少年が、持ってきた蝋燭に火を灯して燭台に置くと通路の奥の方がぼんやりと照らされた。玄関から見て左側には上に通じる階段があった。子供たちはこの蝋燭が消えるくらいでまたここに集合しようと約束して各々が持ってきた懐中電灯のスイッチを入れて、思い思いの探検を始めた。女の子たちは二人で一緒に行動し、男の子たちは一人は階段を上って行き、一人は、すたすたと通路の奥に消えていき、一人は玄関の前で誰か人が来ないか見張りを任されました。


玄関に一人取り残されてしまった少年は皆が来るまで時間があったので玄関から一番近い部屋を探索することにしました。

 部屋に入ると大きな本棚がいくつもありたくさんの本が収納されていました。持っている懐中電灯で照らしながらどんな本があるのか見ていると一冊だけ周りの本とは違うずいぶんと年季のはいった本があったので男の子はそれを手に取ってみました。すると、ガタン、ガタガタガタガタという奇妙な音が聞こえました。その音にびっくりして持っていた本を床に落としました。なんかおかしいと思いその部屋を後にして玄関の前に戻りました。


 玄関の蝋燭が後三センチくらいになった頃、先に女の子二人が戻ってきました。蝋燭の火が完全に消えたくらいで、上の階に行った少年が戻ってきました。後一人だけなのですがいくら待っても戻ってこないので皆で探しに行こうという話をしていると奥の方から「わああぁぁ」と悲鳴が聞こえてきました。その声は紛れもなく一緒に屋敷に来た男の子の声でした。慌ててその悲鳴のした方へ行ってみると、男の子が廊下を進んだ先の部屋から出てくるところでした。男の子は何かにすごく怯えていました。持っていたはずの懐中電灯も今は持っていませんでした。

 青ざめた顔で「出よう。もうここには近寄らないほうがいい」そう言って足早に出口へと向かって行きました。みんな理由を知りたかったがりましたが聞ける様子でもなかったので、ひとまずその男の子に続いて外に出ることにしました。


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