2[プレイゲーム]
二話どうぞ
四年の3月に三月と同じチーム富士見台SCに入った。このチームはあまり強いチームではない、むしろ弱いチームだ。そんなチームだからこそ俺は入った。始めは野球をやっていたということもあり、少しゴールキーパーの練習もしていた。
そして初めての試合。対不二FC。前半は、ゴールキーパーとして出た。うまくいかず1点を取られてしまった。
前半終了間際相手のシュートを止めた俺は、一か八かハーフライン越えにいる、三月目掛けてボールをぶん投げた。
ボールは空高く舞い上がり、三月の足元へ吸い込まれた。実は俺は野球をやっていた頃から、ボールを遠くまで投げることだけは得意だった。
「愛琉、ナイスボール!」
三月はドリブルでディフェンスラインを突破しキーパーと1対1。
「決めろ!三月!」
キーパーが前へ出てきたのを見計らった三月は、チップキックで相手頭上を超しゴールを決めた。そこで前半が終わった。
「愛琉凄いな。」
後半、俺はベンチに下がったが、こっちが優勢だった。
「朋樹、逆サイド!」
右サイドの星が左サイドの朋樹を呼んだ。
「星任せた!」
星は、ボールを受け取ると、右サイドを駆け上がった。
「中!」
フォワードの龍矢が呼んだ。」
「行くぞ、龍矢!」
龍矢はセンタリングに走り込み、シュートを決めた。
「ナイスシュート、龍矢!」
2ー1のままで試合が続いたが相手に中央を突破されてしまった。
「大地、頼む。」
三月が言った。
「え、そんな。」
大地は弱気なため、あまりボールに参加してこない。
「どけっ。」
相手が突っ込んできて、怯えながらも大地は足を出した。
「えいっ。」
大地の足にはボールが収まっていた。
「とれた。」
そこでホイッスルが鳴った。
帰りの電車。
「愛琉、キーパー凄いじゃん。」
三月が言った。
「でも俺、フィールドもやってみたいんだよね。」
「じゃあ体強いから、センターバックとかは?」
「センターバックかー、良いかもな。」
次の日俺は監督の佐々上にこう言った。
「俺センターバックやりたいです、教えてください。」
「分かった。」
「ありがとうございます。」
佐々上監督は小学校中学校の時センターバックをやっていたようだ。
「八人制のセンターバックで大事なのは、周りを見ること、常に周りを見るそして的確な指示を出す。」
「はい。」
「1対1になった時は、まず時間を使ってみんなが下がってくるのを待て、センターバックは1番後ろだから、抜かれるとキーパーしかいなくなる。」
1個1個確認してやった。
次の試合の日。
「この試合は30分1本だ気を引き締めてけ、キーパー神崎、ディフェンス真ん中愛琉、右大地、左泰樹、中盤真ん中三月、右相川、左朋樹、トップ龍矢、行け。」
「はい!」
初のセンターバック不安はあるけど、やるしかない。
「絶対勝つぞ!」
「おう!」
キックオフは相手か。
ピーッ
「龍矢前から!」
龍矢のアプローチで相手が後ろに下げた。
「ラインアップ。」
前線で三月がボールをカットした。
「三月左!」
朋樹が呼んだ。
「朋樹任せた!」
朋樹がパスを受け左サイドを駆け上がった。
「中に入れろ!」
中には龍矢と相川が待っていた。
朋樹が中に入れ、相川が右足を振りぬいた。
ピピー
「ナイスシュート!」
ピーッ
相手チームからのキックオフ。
敵が思いきりボールを蹴り上げた。
「くっ。」
ジャンプヘッドが届かず、裏を取られてしまった。
俺は着地と同時に、走り出していた。
「なんだ?この感じは、体が軽い。」
突き放されたはずの相手に、一瞬で追いついてしまった。
「行かせるかっ。」
ボールを外にクリアした。
「ナイスディフェンス!愛琉助かったぜ。」
神崎が言った。
相手ボールからリスタート。
「先触れ!」
相川のプレスが上手くかわされ、右サイドを突破され、ゴールが入ってしまった。
「くそっ。」
神崎が謝った。
「ドンマイ次有る!」
ピーッ
そこから試合は有利に進み、攻め込んだものの点が取れず、引き分けのまま試合が終わった。
「俺が止めていれば。」
試合後神崎が言った。神崎は人一倍正義感が強く、自分のせいにしてしまうタイプである。
「良いじゃん練習試合なんだし、もうすぐ大会が有るから、それまで練習すればいい。」
「そうだな。」
大会とは全国大会である。まずそれぞれの市区町村でトーナメントをし、次に都道府県、全国といった仕組みの大会である。
「みんな、全国大会がんばるぞ。」
「おー!」
続くよー