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 2人はトクハン本部へと戻った。

 寺崎から進捗状況を聞く。

 「目下、警視庁、神奈川県警が躍起になって捜査中だ」

 「そりゃ、そうだわな」

 「日本警察の威信ってやつ?」

 エリスの言葉に、大介が答える。

 「いや、それもあるがな。

  もし、イベント列車が攻撃されたり、篠乃木里菜が殺害されでもしたら、非難を受けるのは警視庁だ。

  なんせ、彼女に脅迫が来ていることを、誰も知らない。

  何かが起きて、“人命軽視する日本警察”だなんて言われたら、たまったもんじゃない。

  そういう考えだろう、お上は」

 「それで、明後日のイベントの概要は?」

 あやめが聞く。

 「大まかに言えば、ラッピング車両の出発式さ。

  列車は午前11時に東京駅を出発し、13時29分に伊豆急下田に到着するスーパービュー踊り子5号、列車識別番号3005Mのダイヤを使って行われる。

  途中停車駅は品川、横浜、熱海、伊東、伊豆高原、伊豆熱川、伊豆稲取、河津の8駅。

  いずれも、途中下車は行われない。

  熱海での乗務員交代を除いてな。

  まず午前10時45分より、東京駅10番線ホームにてテープカットを含めた出発式。

  そこから抽選で選ばれた乗客、乗員、主演声優4名が乗り込み、11時ジャストに出発。

  車内では、声優によるトークショー、アニメのPV上映などが予定されています。

  13時29分に伊豆急下田に到着。

  その後、伊豆急行、湯煙国際観光と合同のイベントを開催。

  ここで、湯煙国際観光のラッピングバスの出発式を行い、一通りの式典は終了。

  声優4名はここから個別に車で東京へ移動。

  東京から来た乗客は、伊豆急行のラッピング特急に乗り、戻ると」

 「乗客の中に、不審な人物は?」

 「警視庁がやっている。

  ラッシュが動いているという報告も、今のところ」

 「そうですか。

  篠乃木里菜に送られてきた荷物は?」

 「指紋はミニカー以外検出されず。

  やはり、死亡した小林リョウのモノだったよ。

  血痕もA型の血液」

 「死装束は?」

 「本物の死装束だよ。

  恐ろしい限りだ」

 「送り主と、その住所は?」

 「静岡県警から回答があった。

  荷物は熱海駅前の営業所が受け取ったことがわかった。

  名前は無論偽名。

  ただ、住所が・・・」

 「どうかしました?」

 「とあるホテルがあった場所になっていたんだ」

 「ホテル?」

 寺崎は言う。

 「グランホテル・ヤシャ」

 「3年前に起きた、熱海大火災の!?」

 小林リョウが死ぬ、つまり伊豆のバス転落事故が起きる4日前に熱海市で起きたホテル火災である。


 寛一とお宮の像などで有名な観光スポット、熱海サンビーチ沿いにあった豪華ホテルで午後9時頃、ボイラー室と電源室が相次いで爆発し出火、火は瞬く間にホテルを包み込み宿泊客と従業員合わせて9名が死亡、36名が負傷した。

 この日は海上花火大会が行われていて、宿泊客のほとんどが外出していたこと、

熱海市消防本部の迅速な対応が功を奏し、犠牲者を最小限にとどめられた。

 西暦1982年に東京で起きた、ホテルニュージャパン火災以降、日本の消防史上2回目となる第四出動―管轄内の全ての消防車を出動させる措置が取られたことから、“第二のニュージャパン火災”とも呼ばれる。 

 原因はボイラーの誤作動と、漏電。

 結局、ホテル側に過失があると裁判所が認定。

 莫大な賠償金を支払い、ホテル経営会社は、火災から半年後に経営破綻した。

 「そこの住所が書かれていた。

  里菜さんが反応したのは、そういうことか?」

 「でも大介。

  あのホテルと、彼女は無関係よ」 

 「ところが」

 寺崎刑事によると、このホテルは火災の直前に人手に渡ることが決まっていたのだ。

 当時熱海で最も美しいホテルと言われたグランホテル・ヤシャだが、経営会社の赤字が続いていたため、このホテルを売りにかけたのだ。

 熾烈な競争を勝ち抜いたのが

 「湯煙国際観光?」

 「そうなんだよ。 

  今回湯煙国際観光は、アニメへの協力と、ラッピングバスの走行を行おうとしている。

  そのアニメの主演声優が篠乃木里菜。

  合わせて、そこの会社社長の二男も、踊子高校の卒業生だ」

 「ややこしいところでつながりましたね」とエリス

 「もしかしたら、熱海火災の遺族や、経営会社の怨恨の線も出てくるかもしれないわね。

  でも、大介が指摘する、第1の事件との接点が見えてこない」

 「もしかしたら、広島の殺人は無関係なんじゃないか?

  調べたら、一部の週刊誌でも仏具の話は出てましたし」

 「寺崎さん。

  そうなると、仏具とミニカーという疑問が残るんです。

  仮に、その週刊誌を読んだ模倣犯だったと推測しても、報道されなかったトラックのミニカーをどうやって知り得たんでしょうか?」

 「あ、そうか・・・」

 大介は言う

 「とりあえず、今はありとあらゆる線から捜査をかけないと、時間がない」

 「そうね。

  私たちは、プロダクションの線から、篠乃木里菜を洗ってみるわ。

  何か見えてくるかもしれない」

 「分かった。

  東京へは神間と高垣が向かった。

  後2日だ」

 あやめと大介、エリスは頷いた。

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